12、はっぴぃ・ばーすでー <Side 愛良>(後編)
今日はあたしの誕生日。
みんなを呼んでパーティーをするその日に、怪盗夜叉が予告を出した!!
しかも、いつもはバイトで忙しい和馬お兄ちゃんも、今夜は一緒に怪盗夜叉の中継を見てくれることになって!!
予告時間まで残り30分。
あたしは和馬お兄ちゃんと一緒にソファーに座りながら、わくわくとテレビの前で、そのときがくるのを待っていた。
12、はっぴぃ・ばーすでーvv <Side 愛良>(後編)
「やっぱり、里奈お姉さんたちは間に合わないかなぁ?」
ぼんやりとあたしがつぶやくと、なぜか隣に座っていた和馬お兄ちゃんがぴくり、と肩を揺らした。
「ま、まぁ、いいんじゃないか?これだけみんなで見れるわけだし」
「でもどうせなら、ルナールやトリックも一緒がよかったのよね、プリンシア?」
ロゼがにやにやとご機嫌にあたしに話し掛けてくる。ロゼと実お兄さんはソファーに座ることができずに、背もたれに肘をついて立っている。
ソファーは3人掛けだから、あたしと和馬お兄ちゃん、しずちゃんが座ったら満員なんだよね。
それにしても、今夜のロゼはやたらとご機嫌。
特に、宗次お兄さんと里奈お姉さんが買い出しに出ちゃってから、余計ににやにやとよく笑ってる。
「ロゼは少し黙ってテレビでもみてたらどうだ?」
「あら?ずいぶんとご機嫌斜めね、ドクター?」
「そう思うなら、おとなしくしててほしいけどね」
「甘いものが足りないんじゃないかしら?ケーキを持ってきましょうか?」
「・・・いや、いい・・・」
にこにことめげないロゼに、実お兄さんががっくりとうなだれてめげた。そんなふたりの様子を見ていたあたしとしずちゃんは、思わず顔を見合わせた。
「ねぇ、愛良ちゃん。実さんとロゼさんって・・・仲悪いの?」
「う~ん、そんなことはないけど…。だって、これくらいのやりとり、和馬お兄ちゃんもよくロゼとやってるよね?」
「え?あぁ・・・そうだな」
お兄ちゃんは曖昧に頷く。
すると、しずちゃんもあまり気にするやりとりではないと判断したらしく、あたしとふたりで学校の話や塾の話を思い出しては笑いあった。
その合間にあたしたちの会話にロゼや実お兄さんが加わったりして盛り上がっていたら、いつのまにか夜叉の予告時間になった。
「・・・いよいよだね!!」
あたしとしずちゃんは拳を握り締めて、真剣に画面に食い入るように見つめる。ふと、視線を周りに向けてみると、実お兄さんと和馬お兄ちゃんもあたしたちみたいに真剣にテレビに視線を送っていた。
対して、ロゼだけはひとり、にやにやと傍観しているようだった。
今夜の夜叉の舞台は、美術館。
期間限定で公開されている宝石の最終日が今日。
テレビ中継は、美術館の周りを取り囲むようにしている野次馬たちを映し出し、今か今かと怪盗の登場を待つ。
夜叉は予告時間ぴったりにいつも現われる。
だから、予告時間より前に現われることはないってわかってるけど、ついついそわそわと見入ってしまう。
予告時間が近くなり、美術館の周りを取り囲んでいた警察がサーチライトを照らす。
どこから夜叉が現われても、ちゃんと確認できるように。
「・・・予告時間になりました」
緊張した様子でレポーターのお姉さんが言い、それを見守るあたしたちもはっと息を詰める。だけど、いつものように夜叉がカメラの前に現われない。
あの漆黒のマントをなびかせて、いつもは予告時間に現われるのに。
「夜叉・・・」
つぶやいたあたしの隣で和馬お兄ちゃんが小さくため息をついた。
「どうしたんだろうな、夜叉は」
あたしに話し掛けるようにお兄ちゃんは言うけど、あたしの方を見ているわけじゃなくて。
視線はずっとテレビにある。
「・・・和馬お兄ちゃんって・・・」
ふと、あたしはこの前お兄ちゃんに尋ねて誤魔化された質問を掘り返すチャンスが今な気がして、しずちゃんには聞かれないように、こっそりとお兄ちゃんに問い掛けた。
「ねぇ、結局、お兄ちゃんって、怪盗夜叉の友達なの?」
「・・・え?」
あたしの質問に、ずっとテレビ画面を睨み付けていたお兄ちゃんが驚いたようにこちらを見た。
なぜか、和馬お兄ちゃんは初めてその質問をされたかのように、驚いてあたしを見る。
・・・前に同じ質問したのに。
でもそのときは、なんだかうやむやに誤魔化されたから、今度こそちゃんと答えをもらうんだから!!
真剣にお兄ちゃんを見上げるあたしを見返すこともできず、お兄ちゃんの視線が宙を彷徨う。
「あ~・・・それは・・・」
「本当のことを言っていいよ?あたし、知ってるんだから」
「知ってる・・・って・・・」
動揺したお兄ちゃんが、助けを求めるように実お兄さんを見る。
こんなにお兄ちゃんが動揺するなんて思わなかったなぁ・・・。
しずちゃんにだって聞こえないようにこっそりと尋ねた問い掛けは、もちろん実お兄さんには聞こえていなかったようで、和馬お兄ちゃんに見られた実お兄さんは、首を傾げる。
「・・・どうした?」
「・・・それが・・・」
心底困ったように口を開いた和馬お兄ちゃんの斜め後ろで、ロゼが突然くすくす笑いはじめた。
「ロゼ?」
あたしが問い掛けても、ロゼはくすくすと笑っているだけ。
まさか実お兄さんよりも離れたところに立っていたロゼがあたしの問い掛けが聞こえたわけないし、なにがそんなにおもしろいんだろう。
お兄ちゃんの戸惑ったような反応と、ロゼの意味不明な笑いに頭を悩ませ始めた頃、ずっとテレビ画面を見ていたしずちゃんが声をあげた。
「愛良ちゃん、なにか光ってる!!」
しずちゃんの叫びに、あたしも和馬お兄ちゃんたちもはっとテレビ画面に視線を戻す。すると、しずちゃんが言うように、美術館のあちこちの窓の向こうから、ちかちかと光っているのが見える。
まるで、美術館内で小さな爆発が起きてるみたいに。
「・・・また派手なことやってるな・・・」
実お兄さんが呆れたようにつぶやく。
「あら、楽しそうじゃない?」
相変わらずにこにこと笑いながら、ロゼがそんなことを言う。
テレビカメラはズームをして美術館内を映そうと試みているけど、ちかちかとした爆発が見えるだけで中の様子はわからない。やがて、その小さな爆発すらなくなり、再び静寂が訪れた。
「ど、どうしたのかな・・・?」
「なんだかいつもの夜叉らしくないよね」
しずちゃんが冷静にテレビを見ながらつぶやく。
「いつもの夜叉だったら、予告時間にはテレビカメラの前に姿を現わして、盗んだものをカメラに映して逃走するじゃない?」
「しずちゃんは、今夜の夜叉はどうやって逃げると思う?」
いつものように、あたしはしずちゃんに夜叉の逃走経路の予想をしようと尋ねてみる。しずちゃんはテレビをもう一度見てから、あたしに言った。
「そうね、この美術館の前方にはビルが、後方には公園がある。だから、いつかの日みたいに、美術館の屋根に現われて、さっと後方の公園に逃げて闇にまぎれちゃったほうがいいんじゃない?」
「・・・へぇ、よく考えてるね」
実お兄さんが関心したように言う。それにしずちゃんは、照れたように笑った。
「夜叉の逃走経路を考えたりするのが好きなんです。いつか、夜叉を捕まえる警官になりたいし!!」
「婦人警官か。静子ちゃんなら似合いそうだな」
和馬お兄ちゃんがあたしの隣でそう言う。すると、ロゼが小さくため息をついた。
「ラビットは警官になりたいのね。残念だわ」
「残念?」
「・・・ロゼ」
「はいはい、何も言わないわ、ドクター?」
あたしとしずちゃんが不思議そうに問い掛けると、実お兄さんが厳しい声でロゼを呼んだ。
「愛良、テレビに動きがあったぞ?」
さらにロゼに尋ねようとしたけど、和馬お兄ちゃんの言葉に、あたしとしずちゃんは再び視線をテレビに戻した。
すると、テレビの向こうの美術館の入口から、堂々と夜叉が歩いて出てきたのだ。
いつもの漆黒のマントと衣裳を纏ってテレビカメラの前に現われた夜叉は、仮面がいつもと違った。口元だけが見えるようになってる。
「ねぇねぇ、夜叉の仮面、変わったね?」
「本当だね?!しかも、まさか堂々と正面から現われるなんて・・・どうやって逃げるんだろ?」
たしかに。
美術館前に集まるマスコミ前に、悠々とした足取りで現われた夜叉は、まるで逃げ場がどこにもないように見えた。
だってあそこは平面。
警官たちが飛び付いてきたら、夜叉に逃げ場がないんじゃ・・・。
まさか夜叉があんなところに姿を現わすとは警官も思っていなかったのか、呆気にとられてすぐに行動をうつさない。
それを嘲笑うかのように、夜叉が今夜の獲物だった王冠を掲げた。
「それでは、今夜もこちらを怪盗夜叉がいただいていきますね」
優雅に腰を折った夜叉の姿にやっと警官から声があがる。
「や、夜叉を捕まえろ~!!」
その号令を合図に、わっと警官が夜叉に飛び掛かる。だけど、夜叉はそれを口端をあげてにやり、と笑って見守ると、王冠を抱えていない腕を思い切り振り下ろした。
同時に辺り一体が、雷が落ちたようにぴかっと光る。
ざわざわと現場が騒然とする中、光が止むと、そこには怪盗夜叉の姿はなかった。
「すご~い!!消えちゃった!!」
「閃光弾ね。堂々と使ったものね」
ロゼがおもしろそうに笑っているけど、さっきまでのような明るい笑い方じゃない。
なんだかすごく、冷たくて・・・こんな笑い方をする人を、あたしはどこかで会ったような・・・。
「みんなで怪盗夜叉の活躍が見れてよかったわね、プリンシア」
ロゼの冷たい笑いをどこで見たことあるのか思い出そうとしていたら、そのロゼがあたしに笑いかけてきた。
いつもの明るいやさしい笑顔。やっぱり、いつものロゼだ。
さっきのは見間違えかな。
「うん!!みんなで見れて、楽しかった~!!しかも、なんだか夜叉もいつもと違う趣向だったし!!」
「・・・そうだな。いつもとは違ったな」
苦笑まじりに和馬お兄ちゃんが言う。
夜叉の中継も見終わって満足したしずちゃんが、ソファーから立ち上がった。
「私、そろそろお迎えが来ちゃうので、お片付けのお手伝いしていきましょうか?」
「あぁ、いいんだ、静子ちゃん。まだしばらく宴は続くと思うし」
宴?パーティーじゃなくて?
和馬お兄ちゃんの発言に、あたしが首をひねっていると、ロゼがにこにこと笑いながらしずちゃんに話し掛けてた。
「ラビットにケーキのお土産を用意しているのよ。持って行って」
「・・・ロゼ、それは・・・」
「ご心配なく。ただのおいしいケーキだけよ」
和馬お兄ちゃんがなにか言いたげにロゼに呼び掛けたら、その前に彼女がそれを阻んだ。
ロゼにケーキの入った箱を手渡されたしずちゃんは、ちょうどいいタイミングでお迎えに来たしずちゃんのお兄ちゃんと一緒に帰っちゃった。
そんなことをしている間も、まだ帰ってこない宗次お兄さんと里奈お姉さんが心配になってくる。
「里奈お姉さんたち、遅いね?」
夜叉の犯行も終わって、そろそろ1時間が過ぎる。里奈お姉さんたちが買い出しに出てからを数えると、もうすぐ2時間経つ。いったいどこまで買い出しに行っちゃったんだろう?
「ま、あのふたりだから、寄り道しがてらぶらぶらしてるんだろ」
「もしかしたら、怪盗夜叉の現場に野次馬に行ってるかもしれないな」
実お兄さんと和馬お兄ちゃんはあまり心配していない様子でそんなことを言ってる。
でもたしかに、怪盗夜叉の現場に野次馬してるかもしれない。
すると、和馬お兄ちゃんの携帯電話が鳴った。
お兄ちゃんは、なぜか携帯を取り出すと実お兄さんとなにかアイコンタクトをしてから電話に出た。
「もしもし?あぁ、宗次か。終わったのか?」
どうやら宗次お兄さんからの電話みたい。そのままお兄ちゃんは話しながら、リビングを出て行っちゃった。
「・・・ふぅん、お見事、ね」
「ロゼ、なにか言った?」
「なんでもないわ」
なにやらロゼがつぶやいたから聞き返したら、彼女はそのままにっこりと笑って返してきただけだった。
それと同時に聞こえてきた、玄関の扉が開く音。
「つっかれた~・・・!!つぅか、酒、重い!!」
「はいはい、お疲れ様。どうせそのお酒、宗次が一番飲むんだからいいでしょ」
「あ、功労者に冷たいぞ、里奈」
「・・・おまえたち、痴話喧嘩するなら、外でやれよ?」
宗次お兄さんと里奈お姉さん、それと和馬お兄ちゃんの会話が聞こえてくる。
やっとふたりとも帰って来たんだ!!
なにやら玄関でごそごそやっている音が聞こえるから、リビングから出て迎えに行こうかなと立ち上がったところで、ロゼに話しかけられた。
「プリンシア。トリックとルナールのためにケーキを切り分けましょう?」
「あ、そうだね。まだ他のケーキあるもんね」
いったい何種類のケーキが用意されてるかわからないけど。
でも、買い出しに行ってくれた宗次お兄さんたちのためにケーキとお茶くらい用意した方がいいよね。
いそいそとキッチンに向かおうとすると、後ろでロゼと実お兄さんがなにか会話しているのが聞こえた。
「・・・どういう風の吹きまわしだ?」
「あら、何のことかしら?」
「・・・ま、いいけど」
「今日はサービスよ。プリンシアのバースデーですもの」
いったいどんな意味のある会話なのかわからないけど、ふたりを残して、あたしはお茶の用意をする。
ロゼがケーキを切り分けてくれている間にお茶を用意して、それをリビングに持っていくころには、宗次お兄さんと里奈お姉さんがソファーで談笑してた。そばで立っていた和馬お兄ちゃんがちらっとあたしを見ると、なんだか曖昧な笑顔を向けてきた。
「どうしたの、お兄ちゃん?お茶、いる?」
「・・・ん、サンキュ。・・・そういえば、愛良は今夜の夜叉の中継はおもしろかったか?」
今更なにを聞いてくるんだろう?
一緒に見てたのに今更お兄ちゃんがそんなことを尋ねてくるのが不思議に思いながらも、あたしは素直にうなずいた。
「うん、いつもみたいに、夜叉はかっこよかった!!今日は閃光弾?っていうのを使ってたみたいで、警察はどたばたしてたよね」
「・・・そ、そうだな・・・・・・。・・・ずっと俺と一緒に見たいって言ってて、それが叶って満足だろ?!」
「うん、大満足!!お兄ちゃんと怪盗夜叉の中継見たかったんだもん!!・・・でも、里奈お姉さんと宗次お兄さんがいなかったのは、残念」
ちらっと、ソファーに座る里奈お姉さんと宗次お兄さんを見ながらつぶやくと、ふたりとも苦笑してきた。
「ごめんね、愛良ちゃん。次回はぜひ一緒に見ましょうね」
「和馬と見れたんだからそれでよしとするんだぞ、愛良。実もロゼもいたから、充分だろ?」
「うん、まぁ、そうだけどぉ・・・・・・」
どうせなら、みんなで見たかったんだもん。
ふてくされるあたしとは対照的に、なぜか和馬お兄ちゃんたち4人は、ほっとしたような表情を浮かべてる。
なんでそんな表情を浮かべているのかわからなくて、なんとなく4人を眺めてたら、ロゼがケーキを運んできた。
「お疲れ様。どうぞ召し上がれ?」
「・・・サンキュ、ロゼ」
「あら、ナイトがお礼を言ってくれるなんて珍しいわね」
「今回に関しては、沈黙を守ってくれたことに感謝しないと呪い殺されそうだからな」
「ふふ、なんのことかしら。・・・・・・そういえば、私のプレゼント、気に入ってくれたみたいね?」
「・・・・・・っていうか、あれしかないんだよ」
「和馬お兄ちゃん、ロゼになんかもらったの?」
おとなしくロゼと和馬お兄ちゃんの会話を聞いていたら、ロゼがなにかをお兄ちゃんにあげたみたいな発言が出てきて、思わずあたしは口をはさんだ。
すると、ふたりとも同時に肩をすくめた。
「うぅん・・・もらった、っていうのかな」
「ファッションアドバイスね」
「・・・ふぅん?・・・・・・そういえば、怪盗夜叉の仮面はなんで変わったのかなぁ・・・?」
「さ、さぁ・・・な・・・」
引き攣った笑いで答えるお兄ちゃん。ま、お兄ちゃんだってわかんないよね。
あ、そういえば。
「そういえば、和馬お兄ちゃん。さっきの質問の答え、聞いてないよ?」
「質問?」
「怪盗夜叉が現れる前にさぁ・・・・・・」
「あ、愛良ちゃん、それは・・・・・・」
首を傾げて怪訝な顔をする和馬お兄ちゃんに、さっきの「怪盗夜叉と友達なの?」っていう質問の答えをもらってないことを思い出させようとしたら、なぜか里奈お姉さんが焦ったようにあたしに話しかけてきた。
「・・・どうしたの、里奈お姉さん?」
「えっと・・・・・・あぁ、そうだ!!和馬、愛良ちゃんに渡すものがあるんじゃない?」
「え?」
「な、なんで里奈が知ってるんだよ!!」
里奈お姉さんの発言に、なぜか和馬お兄ちゃんが顔を赤くして抗議してる。
あたしに渡すもの?なんだろう?
「・・・ほら」
つっけんどんに、お兄ちゃんが小さな箱をあたしに渡してくれる。
「これは?」
「・・・誕生日プレゼントに決まってるだろ?」
「和馬お兄ちゃんが?!あたしに?!DSの他に?!」
「あのDSは、私たち3人からのプレゼントよ。和馬個人からのプレゼントはそれってことね」
里奈お姉さんがにっこりと笑って教えてくれる。
わぁ・・・!!うれしいな、まさか和馬お兄ちゃんから個別にプレゼントもらえるなんて!!
「このプレゼントと一緒に、愛の告白もあれば、なおうれしいんだけど?」
「調子に乗るなよ~愛良」
「えへへ~。開けてもいい?」
がさがざとその小さな小包を開ける。
そして出てきたものは・・・・・・。
「・・・和馬・・・・・・」
「おまえ、そのセンスはどうよ・・・・・・」
「・・・仮にも誕生日プレゼントだっていうのに」
「ナイトは本当にナイトなのね・・・」
里奈お姉さん、宗次お兄さん、実お兄さん、ロゼの順番で次々と脱力したコメントが飛び出してくる。
「い、いいんだもん!!あたしはうれしいもん!!だって、和馬お兄ちゃん、心配してくれてるってことでしょ?」
「そ、そうだ!!夜道は危ないし、だからこれでもどうかと思って・・・・・・」
「・・・愛良ちゃん、なにも和馬を庇わなくていいわよ」
力説しようとした和馬お兄ちゃんを呆れた様子で里奈お姉さんがばっさりと切る。
「でも、うれしいな」
物はなんでも。
和馬お兄ちゃんが初めてあたしにくれたものだから。
指輪とかもらえたら、うれしかったけどな~!!
でもそれは、もっと大人な関係になってからでもいいもんね!!
あたしは和馬お兄ちゃんからもらったものをぎゅっと握りしめて、里奈お姉さんたちにいじめられてる和馬お兄ちゃんをくすくす笑ってた。
そのあと、ロゼがまるでお姫様みたいなドレスをプレゼントしてくれて、試着したりダンス踊ったりしているうちに眠くなって、あたしは眠りについてしまった。
主役であるあたしが寝てしまったあとの『パーティー』がどんな『宴』に変わったのかは、次の日の朝、リビングに降りて来た時の光景を目の当たりにして、一目瞭然だった。
そんな風にして、あたしの12歳の誕生日は過ぎて行った!!
そんなわけで、愛良は12歳になりました。
なぜか可能になった、和馬と一緒に夜叉の中継を見る愛良の構図。
傍らでにやにやしてるロゼと、ピリピリしてる実がポイントです(笑)
ネタばらしは、和馬サイドで。
・・・そして、和馬が愛良になにをプレゼントしたかもそちらで(笑)
ま、和馬らしいといえば和馬らしいプレゼントだと思うけど、この子は本当に乙女心を理解しようとは思わないらしい(笑)
そういうのは宗次のほうが得意そうだな。