33 蜘蛛人族の女性
昼頃、福幸は一人の女性とあっていた。
「え、あ、あの……」
「私を奴隷にしてください!!」
(ちょっと待てよ、急展開すぎるぞおい。)
さて、詳しく状況説明をしようか。
オークとの戦いで福幸はレイプされかけていた女性を助けたのを覚えているだろうか?
今、話しているのはその女性だ。
レイプされかけていたときとは違いきちんと服を着て体も水で洗ったのか綺麗とまでは行かないものの見るに堪えない状態からは脱却している。
で、なぜ奴隷にしてほしいなどと言っているのかというとこの世界の社会構図に関係する話である。
基本的に魔物、すなわちモンスターに襲われ行方不明になった人物は基本的に死亡扱いとなる。
それが、たとえ生還したとしても貴族でも滅多に人として扱われることはない。
人として扱われないということは即ち、所有物と変わらない奴隷になるということを意味する。
よくある話で、基本的には奴隷市に流されるか自死するかの二択のようなものだったりする。
例外として、奴隷になる前。
即ち奴隸紋が刻まれる前であれば奴隷となる対象を決めれたりする。
今回はそのパターンである。
オークどの戦いを見て惚れたというのが正解なのだろうか?
それと、身元もわからぬ人物に引き取られるより救ってくれた優しい人に守ってもらうほうがいいのだろう。
まあ、こんなことはどうでもいい。
問題は、福幸那人の価値観は未だに日本にいた頃と変わらないということだ。
人間、環境変われどそう簡単には価値観まで変わりはしない。
日本において奴隷制度というのは悪として扱われており福幸もまた、奴隷制度を快く思わない人物の一人である。
剣姫の教育により倫理観がややぶっ壊れているが価値観までは壊れていない。
それにより、女性を奴隷として手に入れれるという思春期真盛りのお花畑思考を刺激する状況でありながらも現実味が薄くたちの悪い嫌がらせと認識していたりする。
女子の嫌がらせやイタズラで嘘の告白をされそれで舞い上がっているところをネットに拡散され心に深い傷を負ったりしたこともあり、人間不信とまでは行かないものの女性嫌いとなった過去も相まり、また異世界での価値観なども知らないこともありかなり戸惑っていたりする。
ついでに、補足だが今回レイプされかけていた女性は蜘蛛人族であり亜人種としては珍しい部類に入る。
髪の色は黒色で長く、レイプされかけていたときははっきり言って異世界版貞子と言われてもおかしくない風貌をしている。
あと、蜘蛛人族の種族的特徴として体の一部から糸を生成することが可能だったり亜人種の割には体に蜘蛛の特徴が殆どないと亜人種にしても珍しい特徴を兼ね備えている。
間違えてはいけないが、アラクネとは決定的に違う。
下手に、そこを言うと殺されかねないというのでも有名だったりする。
「奴隷としてもらってください!! お願いします!! ここで見放されたら私のような珍しい種族は簡単に変態貴族に見つかり犯されてしまいます!!」
「え、いや、でも……」
「坊主……、据え膳食わぬは男の恥と言うだろ……、貰ってやれよ。別嬪さんなんだしな。」
呆れたように冒険者の男が言う。
まあ当然だろう。
アジア系美人という顔立ちもさることながらスレンダーな割には出るとこは出ていたりする体付き。
そして、その体についているのはよく鍛え上げられた筋肉!!
そして、見た目年齢は福幸のやや上。
高校3年生といったところだろう。
もし、現実にクラスにいたならば毎日のように告白され下駄箱には溢れんばかりにラブレターが届きファンクラブまで作られてもおかしくないのだ。
「お願いしますっ!! 何でもしますから!! 変態貴族に買われるのはどうしても嫌なんです……!!」
「………………………………………………はぁ。わかった!! わかったよ!! わかりましたって!! 貰うから!! もう、なんかここまで言われると俺のほうが悪い人物に思えてきたよ……はァ。」
女性が懇願し始め約3時間にも及んだ話し合いは福幸が折れる形で決着がつくこととなった。
最も福幸は納得しておらず、できれば奴隷から開放させてあげたいと思っていたりもするが意外なことに女性はそんなことを望んでいなかったりする。
詳しいことは、ややこしい話となりかなり面倒臭くなるので省略するが虫系の亜人種は基本的に愛情深く嫉妬しやすい性格の人物が多い。
その割には、簡単に一目惚れしたりもする。
今回もそこにはまったというわけだ。
元々、蜘蛛系の亜人種の見た目と近かったこともあったのだろう。
そのため、本人は内心彼のような美少年の奴隷となり大切に扱ってくれそうなご主人さまにあえて非常に幸運だと思っていたりすることは秘密だったりする。
メインヒロイン(予定)です




