11)攻略対象者??
今日の投稿は一つだけになります。短いですが・・。m(_ _)m
――カイトお兄様が、こーりゃくたいしょうしゃ、ってどういう意味・・?
こーりゃく、とは、攻略のことでしょうか?
なんでしょう、それは・・。あまり良い意味の言葉じゃないと思います。
カイトお兄様も、不可解そうな目で、彼女を見ました。
彼女は、「なんで、カイト様がこんなところにいるのよ」とか、ぶつぶつ言いながら、会場係に連れて行かれました。
変なひとです。
ちょっと背筋がぞわぞわしました。
でも、変なひとのために、審査結果を待つ緊張のひとときを紛らすことが出来ましたので、まぁ、良しとしましょう。
お父様は、「カリンは、とても上手に弾けたから、賞をもらえるかもしれないよ」などと、のんびりと言っています。
「他の皆さんも上手に弾いてましたわ・・お父様」
私は、恥ずかしくなりました。
たしかに、間違いはしませんでしたけれど。
コンクールで賞をもらうには、それだけでは足りません。
「とても魅力的に弾けてたよ」
と、ソラ様も褒めてくださいました。
「ありがとうございます。
私は、ソラ様のピアノに、心が揺れました」
「そう・・?」
「上手く言えませんが、胸の奥の方が切なくなって、涙がこぼれました」
「カリン・・。
ありがとう。
実は、僕は、舞台に出るまえに、すごく緊張してたんだけど、カリンが、僕以上に緊張しているのに頑張っている様子をみて、緊張がほどけたんだ」
「え・・そうなんですか?」
「うん。
控えのところで、カリンが、かわいそうなくらい、震えてて。
家族のみんなが、励ましてただろう?
その様子を見たり、話を聞いているうちに、とても落ち着いてね。
だから、うまく弾けたのは、君のおかげなんだ」
「そ、それは、良かったです。
お力になれて。
嬉しいです」
私の知らないうちにソラ様をお力付けすることができで、そのおかげで、ソラ様の素晴らしいピアノを聞けたのかと思うと、緊張して良かったです・・あ。いえ、やっぱり緊張はつらいですけど。
そんな風に、おしゃべりをしているうちに、審査結果が発表されました。
金賞、銀賞、銅賞と奨励賞にふさわしい奏者が、それぞれ選ばれていきます。
私は、コンクールは初めてで知らなかったのですが、ユイナ妃音楽コンクールでは、各賞がひとりとは限らないのですね。今回のコンクールでは、金賞が2人、銀賞が3人、銅賞が3人。それに、奨励賞が5人、選ばれました。
光栄なことに、私は、銀賞のひとりに選んでいただきました。
そして、ソラ様は、おひとりだけ、特別優秀賞に選ばれたのです。
さすがです。
当然です。
納得の結果です。
ソラ様は、会場から、割れんばかりの拍手で祝福され、誇らしげに頬笑んでおられました。
また明日の午後7時に続きを投稿いたします。