10)もう一つのコンクール
本日、二つ目の投稿になります。
一つ目は午後7時に投稿済みです。
今回、私たちが出場したユイナ妃音楽コンクールは歴史あるコンクールです。50年前、当時のユイナ王妃が音楽の振興のために始めたもので、課題曲はクラシックなものが選ばれます。
そして、3週間後には、国際的なコンクールが王都で開かれます。
ソウタ・トラウ音楽コンクールです。
ソウタ・トラウ氏は、30年前に亡くなった、著名な作曲家です。
ソウタ氏は、前衛的な曲を多く作り、アノス王国よりも、外国で名を成し、活躍した方でした。
ソウタ氏の功績をたたえ、アノスでコンクールが開かれるようになったのは、20年前からです。
実は、アノス王国では、楽器といえば竪琴で、鍵盤楽器を弾けるひとはとても少ないのです。そのため、ピアノ・コンクール出場者のレベルも、あまり高くない・・という情けない国際的な評判をいただいています。
そういう国際的に不名誉な評判を覆そうと、王都で行われるソウタ・トラウ音楽コンクールに出場するピアニストは厳しい予選を通過した方のみです。
たとえ、出場者が少なくなってしまっても、国際コンクールにふさわしい方が出場します。
私などは、はなからソウタ・トラウ音楽コンクールの出場は諦めていましたので、出ません、出ませんとも! 大切なことなので、二回言いました。
私の師匠は、「出たらいいのに」などと言ってくださいますが、さすがに騙されません。ムリですから!
ソラ様は、観客席の私の家族が待っているところまで、連れて行ってくださいました。
出場者の家族の席は固まってありましたので、私とソラ様は、それぞれの家族のそばで、お互いの家族にご挨拶をしてから隣同士に座ることができました。
ソラ様のご家族は、ソラ様の叔父様が、おひとりだけいらっしゃってました。
きっと、公爵家の方々は、お忙しいのでしょう。
すると、先ほどのご令嬢が、私の前に立ち、
「あなた、席を代わってくれない?」
と言いました。
私は、彼女に言われて、周りを見回しました。
どうやら、私が話しかけられたようです。
でも、私の周りには、空いている席はありません。
右隣にはソラ様がお座りになっていますし、左隣にはカイトお兄様が座っています。
近くに空いている席はありませんので、彼女に席をゆずると、私は、家族からずいぶん離れたところに座るはめになります。
そもそも、なぜ、見ず知らずの彼女と席を代わらなければならないのか、理由がわかりません。
「私は、家族のそばに座りたいので、席を譲ることはできませんわ。
他の席を探していただけません?」
と、私は彼女に答えました。
「私、ソラ様に、大切な用事がありますの。
代わってちょうだい」
「用事・・ですか」
用事があるのなら、代わるべきなのかしら・・と、私が迷っていますと、ソラ様が、
「僕は、君に用事など無いよ。
それに、このあたりの席はコンクールの主催が、出場者と出場者の家族のために確保してあるスペースなんだよ。
君は、出場者じゃないよね。
だから、この席には座れないよ」
と、彼女にはっきりと言いました。
「え~~。でも・・」
さらに彼女が言いつのろうとすると、カイトお兄様が、すぐそばで会場の見回りをしている腕に腕章をまいた会場関係者に声をかけました。
「君、このお嬢さんが空いている席を探しているよ、案内してあげてくれ」と。
すると、彼女は、カイトお兄様を見て、
「え・・ウソ・・カイト・ハノウ? 攻略対象者の?」
と言いました。
また明日、続きを投稿いたします。午後7時の予定です。(^^)




