さらばパンデモニムウ、旅立ちの日
「お世話になりました」
俺は今、頭を下げながらポポイさん達に分かれの挨拶をしている。
「またいつでも遊びに来るといい。歓迎するよ」
「カズキ様、いつでもいらしてください。そして何かございましたらいつでも何なりとご命令を」
ポポイさんははそう言って俺とガシッと握手を交わす。
ユリエルは目元を布で抑えながら俺にそう言ってくるのだが、少し大げさじゃないですかね?
このユリエル、最初は母さんの眷属だというので凄く警戒をしていたのだが.....めっちゃ普通だったよ!
見た目は真面目でクールそうに見えるのだが
『お主は相変わらず固いのぉ』
『そうですか?柔らかいと思うのですが?』
っと自分の胸をむにゅんと持ち上げて首を傾げる等といったお茶目な一面もあり驚いたよ。
いや、決してアリアが悪いって訳じゃないんだが.....
アリアも優秀で、厳しいけど優しいとても素晴らしい女傑だ。
.....俺の前以外では。
何で俺の前だとあんなに残念な感じ満載なんだよっ!
もっとユリのように普通に接してくれよっ!!
俺はアリアの事を思い浮かべると、思わず頭を抱えたくなった。
そんな俺の心の中など知る術のないポポイさんは、言葉を続ける。
「はいコレ。一応紹介状を書いておいたよ。まぁ、フローラ君もいるし必要ないとは思うけど、一応ね」
そう言って手紙を俺に差し出してくる。
「何から何まで本当にありがとうございます」
俺はお礼を言いながらその手紙を受け取った。
「宝樹祭は4年に1度、12の月の頭から年明けまで1月の間行われる大きなお祭りだ。楽しんでくるといい」
「へぇ~、それは楽しみです」
「.....所で1ついいかい?」
「何でしょう?」
「いや.....君達は今から出発なんだよね?それにしては馬車も車も見当たらないんだが.....」
.....あぁ、その事ですか。
「えっと.....何かカズキ君の目が突然死んだんだけど?.....姉さん?」
「んっ?まぁ、いつもの事じゃから放っておけば直に復活するわい。それに移動は走って行くぞ?その方が早いからの」
カッカッカッ!とシャルミナが豪快に笑う。
「走っ.....えぇ?.....旅なんだよね?鍛錬じゃなく?.....カズキ君.....君も苦労してるんだね.....何かあったら僕でよければいつでも相談にのるよ」
おぉ.....ポポイさん.....分かってくれますか。
「.....カズキ様.....早く行こう.....」
「そうっすよ。早くいかないとお祭りに間に合わないっすよ」
「楽しみだねっ!僕はもう楽しみで待ちきれないよっ!」
「大きなお祭りは私も初めてなので楽しみです!」
「ラナード以外のお祭りは私も初めてですわ。どう違うのかとても興味がありますわね」
「ホレッ!いつまでも黄昏ておらんでさっさと行くのじゃ」
もうちょっと俺の気持ちを理解してくれる人がいた喜びに浸らせてくれてもいいんじゃない?
俺はそんな事を思いつつも気持ちを切り替えると、改めてポポイさん達に向かって別れの挨拶を言う。
「じゃあそろそろ行きます。本当にお世話になりました。また絶対に遊びにきますんで、その時はお願いしますね?」
「ポポイ、ユリ、世話になったのじゃ」
「お世話になりましたっ!」
「お世話になりましたっす」
「ありがとうございました!」
「感謝致しますわ。また必ず出会えると信じておりますわ」
「アハハッ!楽しみに待っておくよ。気を付けて行っておいで」
「カズキ様、皆様、どうかお気をつけて。お元気でお過ごしください」
「「「「「「「行ってきます(のじゃ)(っす)(ますわ)」」」」」」」
こうして俺達はライクニフの王都パンデモニムウを後にして、樹海国家ユグドレフィアを目指して旅立って行くのであった。
.....マラソンで。
☆☆☆
パンデモニムウを出発し、しばらく走り続ける事数時間。
「......ユグドレフィアは.....街が無い.....だから今日は野宿.....」
「えっ?そうなの?」
俺は走りながら、フローラにユグドレフィアについて教えてもらっていた。
「ユグドレフィアは広大な森が広がっており、森の中にいくつかの里が存在するだけで街などは存在せぬ。その広大な森や里をひっくるめて、『樹海国家ユグドレフィア』と呼ばれておるのじゃ」
「.....シャルミナの言う通り.....だから宿とか存在しない.....そもそも.....普通の旅人は近づけないから.....」
「うむ、普通の人は森に入っても気が付けば元の場所まで戻されておる」
「.....宝樹様の結界のおかげ.....」
「って事はエルフ族とか、森に関係の深い人がいないと無理って事か?」
「その通りじゃな。まぁ妾達にはフローラがおるし、何よりカズキ様がおるからの」
「えっ?俺?.....特に思い当たる理由がな.....あぁ、母さんね」
いつものパターンか。
「フローラが宝樹様と言った世界樹じゃがな、ちゃんと精霊がおる。その精霊は言わば、ミリア様の臣下みたいな存在じゃからの。じゃからカズキ様が森に入れば向こうから迎えを寄越してくるんじゃないかの?」
「何か、どこでも母さんが出てくるな.....」
「いや、ミリア様は元が付くがこの世界の管理者でもある女神様じゃぞ?世界中に影響があって当然じゃろ?」
そう言われればそうか。
そういや、母さんの後を引き継いでる神様がいるんだっけ?
聞いたことないけど、どんな人なんだろうか?
「今この世界の神様ってどんな人なんだ?」
「んっ?ポルトの妹のニーナが信仰しておる『ルナシェナ』様じゃな」
「.....ミリア様の妹.....って聞いた.....」
えっ?それってつまり.....
「俺の叔母って事かっ!?」
「カズキ様.....その呼び名は止めた方がええと思うぞ?」
「.....女性の気持ちが.....分かってない.....」
「アッハイッ、スイマセンデシタ」
ってか母さんに家族っていたのか。
.....いや、そりゃいて当然なんだが、今まで聞いた事なかったからな。
(一度ぐらいは会ってみたいな。いや、待てよ.....母さんの妹で同じ神って事はだな.....お願いすれば母さんの暴走を止められるんじゃないか!?)
俺は素晴らしい事を思いついたと早速そのルナシェナ様に祈ってみる.....走ったまま。
(どうか.....どうかあの暴走する2人に天罰を!キッツイのをお見舞いしてやってください!どうか、どうか.....)
俺は必至に祈りを捧げる。
『いや、ムリに決まってるでしょ!』
.....んっ?何か聞こえたか?
俺は周りをキョロキョロと見渡す。
「.....どうしたの.....?」
「.....いや、何でもない」
.....気のせいか。
こうして祈りを捧げ終わった俺は、今晩の野営できそうな場所を探しながらユグドレフィアを目指して走り続けるのであった。




