ポポイのお礼と男のプライド
俺は今、ポポイさんと2人で城の修練場に来ていた。
「さぁ、どこらかでもどうぞ」
俺の目の前のポポイさんが両腕を広げながら俺にそう言ってくる。
『カズキ君にお礼をしようと思うから、僕に付き合ってくれないか?』
俺はポポイさんにそう言われ、ノコノコと後を付いて来た訳なんだが.....
これってお礼なんですよね?何でポポイさんと戦う事になってるんですかね?
「あの.....何でポポイさんと戦う必要があるんですか?これってお礼なんじゃ.....」
「んっ?勿論お礼だよ?」
えぇ~.....ポポイさんの意図が全く分からない。
俺が怪訝な顔をポポイさんに向けていると、ポポイさんは落ち着いた声で語りだした。
「守りたい者に守られているだけの自分.....悔しかったろう?歯痒かったろう?.....そして何より、自分自身が許せなかったろう?君の目を見て一目で分かったよ」
.....ッ!
ポポイさんの言葉に俺は思わず言葉が詰まる。
そんな俺の様子を眺めながら、ポポイさんの言葉は続く。
「いつかきっと.....そう決心しても実力差は中々縮まらない。君は自身の力の無さを恨み、それでも何とか必死で頑張ろうとするけど現実は非常だ。君は今、焦っているはずだ」
「なッ.....」
「何で僕にそんな事が分かるのかって?.....それは僕も同じ経験をしてきた者だからだよ」
「.....えっ?」
「僕と姉さんは親を知らない。それ所か、何故?どのように?どうして生まれてきたのかも分からない。でも、僕と姉さんはずっと一緒に生きてきたんだ。悲しい事に僕に戦闘の才は姉さん程無くてね.....姉さんはずっと僕を守って戦ってくれてたよ.....僕はそんな姉さんを誇らしく思いながら同時に、自分の力の無さを恨んだ。僕にとって姉さんはたった1人の家族だ。そんな姉さんを僕も守りたいと思うのは当然だろう?だから必死で自分を追い込んださ。姉さんに少しでも近づけるように.....そして今度は僕が姉さんを守るんだ!.....ってね」
ポポイさん言葉は俺の心にズッシリと重く響く。
.....今の俺と同じだ.....
俺は皆を守りたい。しかし、現状はただ皆から守られているだけのお荷物だ。
分かってるんだよ.....皆は俺なんかよりもよっぽど強く、俺が守る必要なんか無いって事は.....
それでも俺は男だ。愛する人達を自分の手で守りたい、そんなちっぽけな男の意地が、プライドがあるんだ。
「っと、まぁ.....言ったけど、今でも姉さんには届いてないんだけどね」
カラカラとポポイさんが笑う。
「カズキ君の目を見て、昔の僕を見ているようだったよ。だからおせっかいかもしれないが、君へのお礼に君を鍛えてあげようと思ってね」
.....ハハッ!ありがてぇ!.....今の俺にとっちゃ最高のお礼じゃねぇか!
「そうそう、先に言っておくけど姉さんより弱いと言っても、君達の中では姉さん以外には負けないからね?後、僕は姉さんみたいに優しくないから、せいぜい死なないように頑張ってね?」
.....上等ッ!
「さぁ、始めようか!.....フフッ、魔王の僕が直々に稽古なんて贅沢だね」
あぁ.....最高に贅沢だよっ!
俺はそんなポポイさんに最大限の感謝を込めながら、そのままポポイさんに向かって突っ込んで行くのであった。
☆☆☆
~シャルミナ目線~
「.....っという訳じゃ.....」
私は今、カズキ様のお嫁さん仲間でもある皆に説明をしている。
「.....それでシャル姐はカズキ様としばらく離れるのを我慢するって決めた訳なんすね.....」
「そんなっ.....カズキ様がそのような事で悩んでいたんて.....」
「.....わたし達は気にしてない.....そんな事で悩む必要は.....無いと思う.....」
ネルは納得し、リロロは今まで気付いていなかった事がショックなのか、少しションボリしている。
しかし、フローラはダメダメだね!男の子の気持ちを全然理解してない。
ここは皆のお姉さんである私がビシッと教えてあげないとね!
「フローラよ。男の子にはな.....譲れぬ意地という物があるのじゃ。カズキ様だけではない。妾の弟のポポイの奴も同じような事で悩んでおった時期がある。男とはそういう不器用な生き物なのじゃ」
「.....カズキ様は.....ちゃんとわたし達を.....今も守ってくれてると思う.....」
「そうじゃな。フローラの言う通りじゃな。じゃがそれは妾達の心を.....じゃな」
「.....どういう事.....?」
「簡単じゃよ。カズキ様は妾達を実力でも守りたいのじゃよ。じゃが、今のカズキ様は妾達に模擬戦で勝てた事はなかろう?カズキ様はそこを1番気にしておるのじゃ」
好きな人に負けてカッコ悪い所は見せたくない。
好きな人は自分の手で守りたい。
前の世界の考えなのか、そんな気持ちがカズキ様は強いんだよね~。
フフッ、そんな所もたまらなく可愛いんだけどね!
「じゃあ、私たちがワザと負けてカズキ様は強いって教えてあげればいいんじゃっ?」
リロロが名案とばかりにそんな事を言い始める。
「リロロよ、絶対にソレだけはしては駄目じゃぞ?」
「何でですか?」
も~ッ!リロロはカズキ様に尽くしたい欲が強すぎだよ!
それにそんな事してもカズキ様は喜ばないからね?逆に悲しませるだけだから!
「そんな事してもカズキ様にはワザとってバレるし、カズキ様が凄く傷ついちゃうからねっ?だから絶対にしちゃ駄目!分かった?」
「カズキ様がっ!?分かりましたっ!絶対にしませんっ!」
普段は察しの良い娘なんじゃが.....どうもリロロはカズキ様が関わると少しポンコツになるのぉ。
.....リロロが泣くから絶対に口には出せぬがな.....
「シャル姐シャル姐。口調が戻ってるっすよ?」
おっと!イケない。つい心の声と逆になっちゃった。
それにしてポポイの奴.....カズキ様の前で余計な事言わないでよねっ!
危うくカズキ様に口調を作ってるのがバレちゃうかと思ったじゃない!
いや.....別にバレてもいいとは思うんだけど、なんか恥ずかしいじゃない.....
「しかし.....一月の間会えないのは寂しいですわ.....」
リリーナの言葉に、皆は表情を暗くしながら俯く。
「いや、別に会えぬのは鍛錬しておる昼間だけじゃろ?一月の間、飲まず食わずの不眠不休で鍛錬なぞ出来るもんか。食事の時間や夜には会えるのじゃから、そこまで落ち込む必要はなかろう?」
流石にそんな所業は私も許さない。
もしそんな事を考えているなら、ポポイにお説教をしなくちゃ!
「じゃあ昼だけの我慢って事っすか?」
「それなら何とか我慢出来そうです」
「.....わたしも.....寂しいけど頑張る.....」
「私も夜にカズキ様と過ごせるのなら我慢しますわ」
「.....夜に致す元気が残っておればの.....」
私の言葉に皆はハッとした顔になり、徐々に理解したのかその顔は暗くなっていく。
そりゃ、私だってカズキ様としたいけど.....きっと体力が残ってないよね.....
無理やり襲ってもいいけど、そうすれば次の日にカズキ様動けなくなっちゃうだろうし.....
でも流石に1月もお預けは私たちが我慢出来そうにないし.....
後でポポイに相談して何とか休養日を作ってもらおう。
私たちがそんな会話をしていると、部屋のドアがガチャっと開けられユリエルが入ってくる。
.....ミラーカの首根っこを捕まえたまま。
「お届け物です。コッソリとカズキ様達の様子を隠れて覗こうとしていたので連れてきました」
「ミラーカ.....お主トイレの割にはやけに長いと思ったら.....霧化してトイレの窓から脱出して覗こうとしておったな?」
「うぅ~.....だって気になるんだもん.....」
「気持ちは分かるが我慢せよ。カズキ様は妾達に勝つ為に訓練しておるんじゃぞ?それを妾達に見られたらカズキ様がどう思うか.....」
きっと凄く恥ずかしがるんじゃないかな?
「は~い.....分かったよぉ~.....」
ミラーカは好奇心旺盛で明るい子だけど、たまに暴走するから私がちゃんと見てないとね!
.....でも、これで少しはカズキ様に自信が付くといいな。
こういった事は本人の気の持ちようだからね。
それまで私たちはそっと見守るぐらいが丁度いいよね。
それに今はそれよりも.....
「ところでユリよ。お主.....ポポイの事はどう思っておる?」
「どう?ですか?」
私の言葉にユリは首を傾げる。
う~ん、コレはまだまだポポイは苦労しそうね。
仕方ない。ここはお姉ちゃんとして、今頑張ってくれている弟の恋を応援してあげようじゃないの!
こうしてポポイとカズキが頑張っている裏で、嫁さんズとユリエルはワイワイと姦しく話が盛り上がっていくのであった。




