パンデモニムウと王城
「申し訳ありません。流石に車が通れるような作りにはなってないので街の入り口で降りて頂けますでしょうか?入口には馬車をご用意させておりますので、窮屈かとは思いますがそちらにお乗りください」
俺達はミシャミにそう言われ、パンデモニムウの入り口で車から降りた。
街と言っても、見た感じ自然がとても多い。
少し大きな岩山を切り崩し、その中に街があるような感じだ。
街の中には大きな木等も沢山あり、少し遠くには湖まで見えるので、圧迫感や息苦しさなどは全く感じない。
街の入り口には、少し大きな馬車が2台用意されており、俺達はそれぞれ馬車へと乗り込んだ。
「いつの間に連絡とかしてたんだろうな?もしかしてこの世界って遠くの人と話せる魔道具とか普及してるのか?」
俺は少し気になかったので聞いてみる。
「いや、この国はラナードと同盟を組んだ時に友好の証として数台譲り受けたそうじゃがラナード以外ではそのような魔道具は存在せぬな」
シャルミナがそう言って俺に教えてくれる。
なるほど、その時に譲ってもらった魔道具を使って俺達が着く前に連絡してくれてたのか。
「お父様は当初、誰でも手軽に連絡取れるようにと思って魔道具を作ったそうですわ」
「はい。しかし陛下はそのお考えを撤回し、信用の置ける責任者に絞ってお渡しになられました。旦那様にはこの理由が思いつくかと.....」
リリーナがそう言うと、ピコさんが続く。
「あぁ~.....アレか?軍事利用されない為か?」
「その通りでございます」
「お父様はジーポーン帝国がこの力を手にするのを良しとしませんでしたの。ですのでジーポーン帝国が何とかなるまでは、一般に広めるのを控えておりますのよ」
なるほどね.....確かにあの国にこの技術が広まれば迷惑するのは周りの国か.....
「でも、何とかって言っても何か手は打ってるのか?滅ぼすのはよろしくないんだろう?」
「ジーポーンは大国じゃからな。あの国では下級平民と呼ばれる者達が1番多い。上を屠るのは簡単じゃが、それで困るのはその者達じゃ。なんやかんや言うても上からの仕事も少なくないのでの。上を屠ればその者達の仕事を奪う事にも繋がり兼ねんのじゃ」
「全員我が国で保護出来ればよろしいのでしょうが、そう簡単ではありません」
「全員を賄いきれないのもですが、故郷を離れたくないとおっしゃる方も少なくありませんわ」
なるほどね.....助けてやるって無理やり連れてくるのも違うわな。
「ですが、お父様も何もしてない訳ではありませんわ」
「はい。繋がりのある各国の王達と日夜知恵を振り絞っておいでです」
「そっか.....まぁおじさんが何もせずに見てるだけってのはないか」
「当然ですわ!」
リリーナが誇らしげに胸を張ると、その大きなお胸がプルンッと揺れる。
「国の事は王達に任せておけば良い」
「そうだな.....俺はただの一般人だしな。心配するだけ無駄か」
シャルミナの言葉に俺は頷く。
「.....ただの一般人?どこかじゃ?」
「.....流石にソレは無理がありますわね.....」
「.....笑いどころが分かりませんが、ジョークというやつでしょうか?」
.....いや、俺は普通に一般人だぞ?そんな事言うと泣いちゃうぞ?いいのか?
こうして他愛のない会話をしながら馬車はパンデモニムウの街中を進む。
「それにしても.....シャルミナの人気は凄いな」
俺達の場所の横からは
『シャルミナ様~っ!お帰りなさいませ~っ!』
『シャルミナ様、万歳っ!』
『シャルミナ様がお戻りになられたぞっ!この国はもう安泰だっ!』
等と次々と人々の声が聞こえてくる。
「流石に妾もちと恥ずかしいんじゃが.....」
そう言って照れるシャルミナの顔は、どこか嬉しそうでもあった。
しばらくガタゴトと馬車で揺れるていると、大きなお城が見えてきた。
(あそこが魔王城か.....見た感じは少し黒っぽいけど普通の城だな。)
俺の視界には黒をベースとした石らしき物で建てられた大きなお城が映る。
ゲームなどの魔王城と違い、おどろおどろした感じは無く、逆に爽やかな印象さえ感じる。
俺達が城門近くまで進むと馬車は停まり、門番兵らしき魔族の兵士さん達がこちらへと近づいてくる。
「お待ちしておりました。皆様のご到着を魔王様も首を長くして待っておいでです。そしてシャルミナ様。此度のご帰還心待ちにしておりました!」
隊長らしき兵士さんがそう言うと、他の兵士さん達は綺麗な敬礼を披露してくれる。
「久しいの、ズール。今はお主が門兵の隊長か?出世したもんじゃな」
シャルミナは懐かしそうにズールと呼ばれた隊長さんに声を描けると、嬉しそうに笑う。
「まだまだ未熟者であります!ですがここまで成れたのもシャルミナ様のご指導あっての事ですので!」
「お主は相変わらずじゃな.....少しぐらいは自分を褒めてやらぬか!それでは部下達に困るじゃろうが」
真面目な発言のズールさんにシャルミナが苦笑いでそう言うと、周りの兵士さん達はウンウンと頷く。
「まぁ良い。昔話はまた今度じゃ。カズキ様を待たせる訳にはいかぬからの。ホレッ!突っ立っとらんでサッサとポポイの元へ案内せぬか!」
シャルミナの言葉に兵士さん達が一斉に動き出す。
「ハッ!失礼致しました!ではどうぞ、こちらです!」
俺達はズールさんに案内されるがまま、その後を追って城内を歩く。
俺達とすれ違う兵士さんやメイドの方々は、綺麗な敬礼や礼をして俺達を出迎えてくれる。
「物語だとここで訳分からん変な権力者とかに絡まれるんだよな.....」
「そのような阿呆が城で仕事出来る訳なかろうが.....」
俺の呟きが聞こえたのか、シャルミナが呆れながらそう言ってくる。
「そりゃそうだな.....」
「ああいった阿呆は物語の演出として出てくるだけで、実際に客人に無礼を働くような阿呆はそもそも王の傍で仕事なぞ出来ぬからな」
御尤もで.....
まぁ、普通に考えてもあり得ないよな。
日本でも、普段社長の近くで仕事をする人が、客人に横柄な態度をとったり失礼な事をすれば直にその役職から外されるだろうしね。
「こちらで御座います」
ズールさんがそう言って案内してくれたのは少し豪華な装飾の施された豪華なトビラの前だった。
「んっ?なんじゃ?玉座ではないのか?ここはポポイの私室だったはずじゃが.....」
「えぇ、魔王様が『姉さん相手にそんな堅苦しい事したら僕が怒られるよ!』っと仰れまして.....」
「よう分かっとるではないか!」
カカッとシャルミナが笑う。
「魔王様!シャルミナ様とお客人を連れて参りました!」
ズールさんはコンコンっとトビラをノックして声を上げる。
『どうぞ~。入ってもらって~』
その直後、少しのんびりした返事が返ってくる。
「失礼します!」
ズールさんがガチャっとトビラを開くとそこには、シャルミナにそっくりな短髪の少年がソファーに座っており、アリアによく似た眼鏡を掛けた天使族の女性がその後ろに立っていた。
「やぁ!いらっしゃい!姉さんも久しぶり!元気だった?」
そう言って少年は気軽に片手を上げならそう言ってきたのであった。
.....あの人がシャルミナの弟、ポポイさんか.....




