面倒ごとの気配ですか?よろしい、殲滅だ
ちなみにリリーナの一人称は
私=ワタクシ
です。
俺は今、冒険者としての初仕事を無事に終え、終え.....俺も仕事したって言っていいのだろうか?
まぁ、いいや。無事に終え、王都を目指して帰宅中である。マラソンで.....
街道から少し外れた場所を走っているのだが、これには理由がある。
俺が身体強化を使って普通に街道を走ると、踏み込みとかで少し地面が抉れて凸凹になるからである。
ちなみに俺以外のメンバーはスッと音も無く、地面が抉れるような事はない。
これは俺の身体強化の魔力の制御がまだまだ下手くそな証拠であるらしい。
普段、俺との模擬戦で相手をしてくれる人は、某格闘漫画並に派手だった気がするのだが.....
気になって聞いてみたら、俺が動きを察知して対処しやすいようにわざとだったらしい。
デスヨネー。
今みたいに動かれたら、何も出来ずにボコられて訓練にもならない自信がある。
俺のレベルに合わせた訓練、ありがとうございます。
(俺が弱いのは事実だしな.....嘆いて腐るよりも、少しでも追いつく努力をしないとな.....気持ちで負けるもんかよ!)
俺は少し悲しい現実に、負けるもんかと気合いを入れ直し、気持ちを切り替えると前を走るリロロとミラーカの背に視線を向けた。
俺達の隊列は、鼻の利くリロロを先頭にミラーカが続く。
その後ろに俺で左右にシャルミナとリリーナ、ピコが並ぶ。
俺の後ろにフローラが続き、最後尾はネルだ。
俺が中央なのは、前後で何かっても動けるから.....とかではなく、単に1番弱いからである。
ちくせぅ.....
しばらく走り続けると、リロロが急に大声を出す。
「止まってくださいっ!」
その言葉に、皆一斉にその場にピタッと制止する。
いや、俺1人だけはなんか、ズザザザザァーッ!って感じだったけどさ。
しかし、一体どうしたのであろうか?
皆がリロロを見て、次の言葉を待つ。
「血の匂いがします!後、誰かが戦っているような音もっ!」
そんなリロロの言葉にネルが先をジッと見つめる。
今は変装の魔道具で見えないが、きっとお耳をピコピコとしているのだろう。
「そうっすね。この感じだと.....盗賊とかっすかね?詳細は不明っすけど、誰かが大勢に襲われてるような音っすね」
俺はその言葉聞き、急いで走り出そうとするが、ネルから待ったがかかる。
「カズキ様!待つっす!行商人とかが襲われてるって状況にしては少し変っす。まず馬の気配がしないっす。これはまぁ、逃げたか殺されたかしたのかもしれないっすけどね。あと、戦ってる音に比べて、人の気配が多すぎるっす。このままシャル姐やリロロ達を先に行かせてもいいっすけど、ここは隊列を崩さずにこのまま向かうっす」
そう言われ、シャルミナが少しムッとする。
「むっ、何故妾が先に行ってはいかんのじゃ?賊など、妾1人でも十分じゃと思うがの?」
「シャル姐が強いっては十分知ってるっすよ。ウチも問題はないと思うっす。でも得体が知れない以上、油断するべきじゃないっす。それに相手の実力も分からないっすからね。用心はするに越したことはないっすよ」
「むう、たしかにネルの言う通りじゃな。油断して何かあれば、それはただの間抜けじゃからの。ちと気が急いた。すまんかった」
「いやいや、急いで助けに向かうってのはウチも賛成っす。とりあえずこの隊列のまま、急いで向かうっすよ」
そんなネルの言葉に皆は是と答え、俺達は先ほどより少し早くその現場へと向かっていく。
「見えてきましたっ!あそこですっ!」
リロロの声に、俺は目を凝らして先を見る。
(なんだ?盗賊?.....いや、どっかの兵士か?)
俺の視界にもその姿が映ってくる。
親子だろうか?男性が血まみれで横たわり、そのすぐそばに女性が蹲っている。
その女性は、背中はバッサリと切られており、かなりの出血のように見える。
そんな中でも必死で我が子を守るかのように、小さい、5歳ぐらいだろうか?の女の子を抱え込むようにしている。
その周りには護衛と思わしき、冒険者風の男女4人が必死に戦っていた。
襲っているのは、何処かの兵士らしく、揃いの鎧を着こみ、全員で30人ぐらいはいるだろう。
人数差のせいで、4人では明らかに対処しきれていない。
しかし、襲撃犯共は、相手を嬲って楽しんでいるのか、ニタニタと下卑た笑いを浮かべて半数以上は後ろで見ているだけだ。
俺達は更に距離を詰める。
「パパ~ッ!パパ~ッ!!」
あの少女の声だろうか?
そんな泣きじゃくる女の子の声と、それをあざ笑うかのような下品な笑い声が俺の耳に入ってくる。
(下種どもがっ.....)
俺はギリィッ!っと歯を食いしばると、心が急速に冷たくなっていくのを感じる。
「シャルミナッ!あの親子の治療をっ!リロロはその護衛に付け!フローラとネルは奥の冒険者の援護をっ!リリーナとピコは手前の冒険者を頼むっ!俺とミラーカはゴミ共の掃討だっ!1人も逃がすなよっ!」
俺は考えるよりも先に、皆に指示を出していた。
「「「「「「「ハッ!」」」」」」」
俺の指示に従い、皆がそれぞれの行動に移る。
俺は素早くマジックボックスから刀を取り出し、そのまま後ろで見ていた集団に突っ込んでそのまま一人の首を刎ねた。
「なっ、なんだ貴様らっ!我々がだっ――――」
「黙って死んどけ。ゴミがっ.....」
突然の襲撃に、慌てて何かを言おうとしていた兵士の首を、俺は刎ねる。
ミラーカも俺に続き、次々と周りの兵士を血に染めていく。
俺は仲間達の方に視線を向ける。
シャルミナは親子の治療が済んだみたいだ。俺と目が合うと合図を出してくれた。どうやら男性は間に合ったらしい。その周りではリロロが親子に近づこうとする兵士を大槌で消し飛ばしている。
剣士の男性と神官っぽい女性の冒険者の援護に向かったフローラとネルも問題なく回りの兵達を始末している。
弓使いの女性と魔法使いの男性の援護に向かったリリーナとピコも大丈夫そうだ。
俺が仲間達の安否に少しほっとしていると、突然後ろから兵士が切りかかってきた。
「死ねぇぇぇぇっ!!」
俺は軽くスッと横に避けると、そのまま相手の顎から脳を貫くように刀を差し、素早く抜いた。
そのまま切りかかってきた兵士は、糸の切れた人形のようにその場に崩れ落ちる。
俺はそのままミラーカと共に、その場の兵士達を始末していく。
最後に1人残った、1番後ろにいた少し豪華鎧の男。こいつがどうやらボスっぽいな。
俺は男に向かって歩を進める。
「貴様らっ、この俺が誰か分かっているのかっ!!」
「知るかよ馬鹿がっ。大人しく死んどけ」
馬鹿が何かを言っているが知った事ではない。俺は気にせずに歩を進める。
「まっ、待てっ!!俺はジーポーン帝国の兵士だぞっ!俺に手を出せば、我が国と戦争だぞ!いいのかっ!?」
「ジーポーン?」
馬鹿の言葉に反応したのはリリーナだった。
「なぜこのような場所にジーポーンの兵がいるのですか?戦争?戦争を仕掛けてきてるのはそちらではなくて?無断で国境を超える事に加え、民に手を出す愚行。そのような下種な国を恐れるラナードではありませんわ!攻めてきたくば攻めてきなさい!受けて立ちますわ!」
リリーナは相当ご立腹らしい。
「はいはい。リリーナ落ち着け。戦争とかならないから。コイツはここで死ぬのにどうやって国に伝えるんだよ?まぁ、戦争するにしても、おじさんに伝えてからちゃんとおじさんの指示を仰ぐ事。いいな?」
俺はリリーナを嗜めると、馬鹿の方を向く。
「待てっ!そうだっ!金だっ!金をやるっ!いくら欲しいっ!言ってみろっ!」
馬鹿は助かりたいのか、必死に叫ぶ。
「じゃあな!」
俺はそんな馬鹿の言葉に耳を貸す事もなく、その首を刎ねた。
(ふぅ~.....とりあえずは終わった.....初めて人を手にかけたが、案外何も感じないんだな.....相手がゴミみたいなやつらがったからか?それとも俺が思った以上に.....まぁいいか.....)
俺は頭を軽く振り、仲間達の方へと振り向く。
.....何故か全員、顔を真っ赤にさせてモジモジとしながら俺を潤んだ目で見つめていた。
「.....へ?どうしたんだ?」
なんでそんな事になっているのか訳が分からない。
「あ、あの.....先ほどのカズキ様の姿が.....」
リロロがモジモジと答える。
俺が戦っている姿に見惚れたとかか?まさかぁ~。
「う、うん!僕達にバシッと命令する姿が.....」
「う、うむ。その、突然で驚いたのもあるんじゃが、カッコよくての.....」
「そっすね。キュンときたっすね」
「.....少し濡れた.....」
「私も、男性からあんなにも力強く命令される事なんて初めてて、凄くゾクゾクしましたわ.....」
そっちかよっ!ってかアレはなんか気づいたら言っちゃってたんだよ.....
ってかリリーナはMっ気でもあるのか?お願いだからその扉は閉じたままにしておいてください.....
「あ~、ゴメン。本当ならシャルミナかネルの指示に従うのが正解なんだろうけど、気付いたら.....ごめんよ」
俺は素直に出しゃばってしまった事を謝る。
「そんな事はありませんっ!とてもカッコよかったです!」
「そうだよっ!全然謝る事なんてないよっ!」
「うむ、むしろもっと妾達に命令して欲しいぐらいじゃな!」
「そうっすね。普段からもっとこう、色々言ってくれてもいいぐらいっす!」
「.....むしろご褒美.....」
「カズキ様が私に命令.....色々な.....そ、そんな、はしたないですわ」
お、おう?
リリーナはなんか1人だけ空気が違うくね?
とりあえず、俺はスルーして誤魔化す事に決めた。
「あぁ~、とりあえず怪我人も無事みたいだし、色々事情も聞かないとなぁ~」
「そっすね。そういえば、襲ってた側も1人は残さなくても良かったんすか?」
「別にいいと思うぞ?確かに情報は大事かもしれんし、あっちが正しいって事もあったのかもしれんが、ジワジワと楽しむように相手を嬲り殺すような連中と仲良くする気はしないしな」
もし本当に親子の方が悪いって場合でも、あんな連中には慈悲は無い。
「さて.....死んでないんだよな?気を失ってるだけか?」
「うむ、父親の方はちと危なかったがなんとか間に合った。母親の方は出血は酷かったが命に別状はないから心配はいらぬ。ちと血を流し過ぎじゃがの。子供は特に怪我も無かったの。2人は血の失い過ぎで気を失っておるが、子供の方はただの泣き疲れじゃな。安心したのか、眠るように気を失いおったぞ」
「そっか、無事ならそれでいい。そっちの冒険者の人達は?」
「こっちも結構ギリギリっすね。周りを片づけて治療したら、すぐに気を失ったっす」
「.....あの人数でよく頑張ってた.....偉い.....」
「私の方も同じ感じですわね。安心したのか、すぐに気を失いましたわ」
「ええ、姫様の仰る通りかと。見た感じランク4ってところですかね?あの人数を相手によく持った方かと」
さて、どうすっかね。
.....あっ!ここだっ!ここでこそ俺の転移魔法の出番ではないか!
「じゃあ、どうする?俺としてはこのまま俺の転移魔法で連れて帰ろうかと思うんだけど?」
まぁ、流石に人数が多すぎるから、下手したら明日1日寝込みそうなんだが。
「それはダメですっ!」
「ダメだよっ!」
「.....却下.....」
「ダメじゃ」
「ダメっすよ」
「?転移魔法で連れて帰れるのならその方がよいのではなくて?」
拒否する嫁さんズに対して、事情を知らないリリーナは俺の味方をしてくれる。
いいぞ!リリーナさん!もっと言ってやってくだせぇ!
「それはダメじゃ!え~っと、そうじゃ!血を失っておるからな、しばらく安静にさせる必要がある」
「そっすね。幸いタカシ陛下に車を授かってるっすからそっちに寝かせてから戻るのがいいっすね」
『そうじゃ!』じゃね~よっ!完全に思い付きじゃねぇ~かっ!!
「そうです!それにこの人数だとカズキ様が危険です!」
「そうだよっ!きっとこの人数だと転移魔法を使ったらカズキ様は動けなくなるよっ!」
「.....無理はさせられない.....とても危険.....」
いや、キミ達の危険って、夜が無くなる事に対してだよね?
「まぁ!?そのような危険が!?でしたら仕方ないですわね。お車に寝かせて戻るのが良さそうですわね」
「えっ!?いや、俺は全然大丈夫だと思うけど?」
「ダメですわ!そのような危険な事を私も認める訳には参りませんわっ!お車でも問題はないのでしょう?ならば出来るだけ危険は回避しないといけませんわ」
「いや、俺が危険と言うよりかは.....その~.....」
「?どうしたんですの?」
言えるかっ!
夜の相手が出来なくなるから嫁さん達は反対してるんですよ~、HAHAHA
なんて事をお姫様に面と向かって言える訳あるかっ!!
「いえ、なんでもないです.....」
こうして俺は諦めて、スゴスゴとマジックボックスから車を取り出したのであった。
俺の転移魔法ェ.....




