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突然!異世界ライフ~とりあえずのんびり生きていこうと思います~  作者: おる・かん
第2章・ラナード王国
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冒険者ギルドへようこそ

その建物の中へ入ると、複数のカウンターが並び、その前に列を成す人々が目に入ってきた。

並んでる人達は皆、冒険者といった風貌の装備を身に着けている。

建物の中にはテーブルや椅子なども複数置かれており、そこに腰掛けてなにやら相談しているパーティーらしき組もチラホラと見える。

が、どうやら酒場みたいな感じになっており、お酒や食事をするって場所も兼ねているって事などは無いみたいだ。

元々冒険者として活動していたネルに聞いてみると


「いや、これから仕事するって場所で、お酒なんて出す訳ないじゃないっすか」


と、正論を返されてしまった。ごもっともである.....

食事などは、この近隣にはいくらでもそんな場所があるらしく、このギルドは冒険者の仕事の受注や完了報告、依頼人からの依頼の受注、新規登録やホーム変更手続きなどが主らしい。


俺は登録をしてもらう為に、カウンターの列の最後尾に並ぶ。

ネルは『じゃあ、ギルド長に話を通しにいくっす。少しだけ待っててくださいっす』と言って今は居ない。

リリーナとお付きのメイドさんも、一緒に挨拶へ付いていっている。

なので待ってる間に登録だけでも済まそうって事で並んでいるのだ。


俺達が並んでいると、突然1人の男が近づいてくる。

身体がデカく、色黒のスキンヘッドの厳つい男で背には大剣を背負っている。

(これはもしやアレか?アレなのか?お約束の展開がきちゃうのか?)

俺は内心、少しワクワクする。

俺の横のシャルミナも顔に期待を浮かべ、瞳をキラッキラさせている。

うん、シャルミナも漫画とかの影響で、そういうの好きだもんね.....

男は近づいてくると声を出した。


「おいっ!坊主に嬢ちゃん達!見ねぇ顔だな?新人か?それとも、どっかよそから流れてきやがったのか?」


その男の言葉に、俺とシャルミナ以外の3人は少しムッとした表情になるが、俺とシャルミナの期待は膨れ上がる。


「ええ、新規登録しようと思ってるんですが、何か問題でも?」

「そうじゃ。妾達がここにいるのに何か不都合でもあるのかや?」


ふふふ、ここでお約束なら、お前のような奴が~的な展開になって、色々あるんだろうな。

俺とシャルミナの言葉を聞いて、その男は言う。


「問題?問題はあるっちゃあるな」


男はそう言うと、腕を上に上げる。

.....っと、そのまま奥を指指した。


へっ?


「坊主達、新人の受付はあっちだ。ここは登録済みの冒険者用のカウンターだ。まぁ、奥にあるから分かり難いかもしれんが、ちゃんと上に案内の表示はあるぞ?」


上?


俺とシャルミナを揃って上を見上げると、そこには天井から小さく吊るされた案内板があった。

どうやらこの人は、見ない顔だから新人かと思い、わざわざ親切に教えてくれただけだったようだ。


うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!


めっちゃ恥ずかしいやつーっ!

勝手にお約束だと期待していた俺とシャルミナの顔は、きっと今、物凄く赤いだろう。顔がカァァァッと熱くなっていくのを感じる。

(ってかおっちゃんごめんよ!勝手に絡んでくるヒャッハーな奴だと思ってたよ!でも実際は物凄く親切で優しい人だったよ!)


「わ、わざわざ親切にありがとうございます!き、気付きませんでしたよっ!あ、ありがとうございます!アハハハ....」

「う、うむ!わざわざ教えてくれるとは、と、とても出来た御仁じゃの!れ、礼を言う!」


俺とシャルミナはキョドりながら必死で答える。

今すぐに穴を掘って自らそこへ飛び込みたい気分だ。

その時.....


「.....何やってるんすか?」


ネルが戻ってきて、俺とシャルミナにジト目を向ける。

ネルも漫画は読むからな、大体の事は察したのであろう。

リリーナとメイドさんは戻って来ていない所をみると、俺達を呼びに来たのだろうか?

まぁ、今はそれよりも.....だ。


「い、いや!なんでもないぞ!この人が親切に教えてくれてただけだっ!」

「う、うむっ!妾達が間違って並んでいたと指摘してくれてただけじゃっ!」


もう手遅れだろうが、俺とシャルミナはなんとか誤魔化そうと必死だ。

尚も誤魔化そうとする俺達を他所に、突然そのおっちゃんが声を上げる。


「ネルの姐さん!?ネルの姐さんじゃないですかっ!どうしてここに?.....もしかして復帰されるんですかっ!?」


どうやら彼はネルの知り合いらしい。


「久しぶりっすね。タイラーも元気そうで何よりっす。今日はそこのカズキ様の登録の付き添いっす。まぁ、復帰って事になると思うっすよ。あっ、ちなみにカズキ様はウチの旦那様っす。周りの4人もカズキ様の妻っすよ」

「この坊主.....いえ、このお方がネルの姐さんの旦那様?兄貴っ!知らぬとは言え、失礼しましたっ!俺はタイラーといってランク7の冒険者をしておりやす!なにかあれば遠慮なく言ってきてくだせぇ!」


ネルに言われ、何故か突然俺を兄貴と呼んでくるタイラー。


「あ、どうも、カズキです。ネルとここにいる4人の旦那やってます。と言うか、さっきまでの感じで普通に喋ってもらえます?あと、兄貴はやめてください」


色黒の大男に兄貴と呼ばれるのはなんか嫌だ。


「とんでもない!ネルの姐さんの旦那でもある兄貴にそんな事出来る訳ないですよ!俺の事はタイラーって呼んでくだせぇ!口調とかももっと砕けた感じで全然構わないんで!舎弟のように思ってくだせぇ」

「分かった。けど、とりあえず兄貴は止めろっ!普通にカズキって呼んでくれていいから!あと舎弟はいらん!」

「分かりやした!カズキの兄貴っ!」


ねぇ.....なんでこの世界は人の話を聞いてくれない人が多いの?


「まぁ、そんな事はどうでもいいっす。カズキ様。ギルド長が挨拶したいって言ってるっす。だから呼びに来たっす。さぁ、行くっすよ」


(待ってネルさん!どうでもよくないから!結構、今後に関わる大事な事だから!今修正しとかないと、きっと面倒な事になるからっ!)


そんな俺の願いも虚しく、俺はネルに腕を掴まれズルズルと引きずられていく。

悲しい事に、俺よりもネルの方が圧倒的に強いので、俺はネルの拘束からは逃れられない。

なんか後ろで、『新人なのにギルド長が挨拶!?流石はカズキの兄貴だぜっ!』って声が聞こえるんですけど.....

何か手遅れになった予感を感じ、俺はそのままギルド長の元まで引きずられていくのであった。




ネルに連れてこられた部屋に入ると、ソファーに腰掛けるリリーナとその後ろに立っているメイドのピコ、その対面の腰掛けた髭もじゃの小柄なおじいさんが目に入ってきた。


「ギルド長、連れてきたっすよ」


ネルがそう言うと、その髭もじゃのおじいさんは立ち上がり、俺の前まで歩いてくると、突然跪いた。


.....何故に?


俺が困惑していると、髭もじゃのおじいさんは跪いたまま喋り出した。


「お初お目に掛かります。偉大なるジン様とミリア様のご子息であられるカズキ様との謁見、大変光栄に存じます。ワシの名はガツインと申しまして、見ての通りのドワーフ族でございます。この王都ランドープのギルドの長を仰せつかっております」

「あ、初めまして、カズキです。あの.....出来ればもっと普通にしてもらえますか?あと立ってください」


この感じ、多分親父と母さんの事を崇めてる感じなんだけど.....物凄くやりにくいわっ!

それに謁見てなんだよ、謁見って!


「ギルド長、カズキ様が困るから普通に接してくれって話したっすよね?ついさっき話したばかりっすよね?ボケてるんすか?ってかいい加減にしないとぶっ飛ばすっすよ?」


そんな俺を見かねたのか、ネルがこめかみに青筋を立てて言う。

おお、ネルはそんな事を言っててくれたのか!

流石ネルだ!細かい所の気配りも完璧だぜ!そこに痺れる、憧れるぅぅ!!

しかし、そんなネルの気配りを、この目の前のガツインは秒でダメにした訳か.....

俺は目の前のダメなガツインに目を向ける。


「いや、ネル、しかしじゃな.....ワシはカズキ様に失礼があってはいけないと――」

「そんな態度でカズキ様を困らせる方が、よっぽど失礼っすよ!さぁ、さっさと立つっす!あと普通に接するように心がけるっす!」


いいぞネルさん!頑張れっ!もっと言ってやれっ!


「いや、それでもじゃな.....」


尚も渋るガツイン。


「いい加減にしないと、ぶっ飛ばすっすよ?それか、ギルド長が大事にしてる斧、粉々にするっすよ?」

「わ、分かった!分かったからそれだけは止めるんじゃ!全く、おっかないのぉ~.....」


ネルの説得(脅し)の甲斐もあって、渋々ながらガツインは立ち上がる。


「いやいや、失礼しました。お2人のご子息が来ると聞いてつい.....申し訳ありませぬ」

「ああ、いえいえ、これからは普通に接してくれるなら全然平気ですよ。というより、何故あんな態度に?」

「ああ、ワシも昔にジン様に救われて上で生活しておりましたが、地上に戻ってきましてな。所謂、復帰組というやつですじゃ。しかしその御恩は今も忘れてはおりませんのでな。それでつい.....」


ああ、それであんな事になった訳ね。

ちなみに後から聞いたのだが、上から地上に戻る人は珍しくないらしい。

そういった人達の事を復帰組と呼んでいるらしいのだ。


「それで、今日は冒険者への登録とお聞きしておりますが?」


おっと、そうだった。目的を忘れるところだった。


「ええ、そうです。この世界を色々と旅して見てみたいと思いましてね。それで冒険者の登録をしとくと、色々と便利かなぁって思いまして」

「ふむ、そうですな。確かにこの世界を周るのであれば、冒険者登録をしとけば色々と役に立つでしょうな。冒険者ギルドはほとんどの国に存在しておりますからな。しかし、残念ながらどの国でもという訳には参りません。当然、冒険者としての肩書が通用しない国もありますので、その辺りはご注意を」

「ありがとうございます。その辺りは十分理解してますんで大丈夫ですよ」


まぁ、当然だろうな。この世界で幅広く根を張っている冒険者ギルドでも、流石に全世界にっ!って訳にはいかない。

そういった組織を拒否する国も当然あるだろう。


「では、登録をさせていただきますが、規則などの説明はいりますかな?」


当然必要である。

ここはゲームや漫画ではなく現実だ。

多分こうだろうって推測で動く事は出来ない。

なので俺は迷わずに説明をお願いする。


「まぁ、規則と言ってもそう難しい事ではありません。まずはですな、――――」


そう言ってガツインは説明を始めた。






なるほどね.....

俺はガツインの説明を聞き終わり、簡単に考えをまとめる。


・全冒険者は、1~10のランクで区別されている。

1~3は新人~駆け出し

3~6は一人前から中堅

7~9はベテランから上級

10は別次元の超越者

って事か。

なんか10だけ違うくね?

って思っていると、10は親父専用のランクらしく、実質9が最上位らしい。

.....何やってんの親父。

ちなみにネルのランクは9らしく、ネル曰く『上の情報収集班は皆、8か9っすよ』との事だ。


・依頼はランクによって別けられている

これはまぁ、想像通りだな。

自分の実力に見合った仕事を受けなさいって事だろう。


・横暴な態度は厳禁!礼儀正しく挨拶もしっかり!身だしなみも清潔に!

これも当然だろう。

依頼人や、人に会う事が多いのだ。横暴な態度や不潔な者は、冒険者ギルドという組織のイメージダウンになる。

幸い、この国にはお風呂の文化もあり、根付いている。

きっとおじさんの成果だろう。

一般的には、個人でお風呂のある家というのはそこまで多くはない。

ただ、街のあちこちに、国が運営する公衆浴場があるらしく、値段も子供のお小遣い以下の値段らしい。


・仕事よりも命を優先する事、準備は怠るな。

これはまぁ、組織としてはそう言うのは当然だが、個々の判断に任せている事のが多いらしい。

仕事は失敗しても挽回出来るが、命は落としたら終わりだしな。

準備も怠ったら自分の生死に直結する訳だからな。

当然だが、準備に手を抜くような奴は上には上がれないのだそうだ。


・報酬は均等とする

これはパーティーや人と組んで仕事を受けた時に揉めないようにする為らしい。

能力などには関係なく、その仕事に取り組んだ者で均等に別けるらしい。

中には寄生みたいな奴もいるらしいのだが、そんな奴はすぐに噂が広まり、誰も組んでくれなくなるそうだ。

パーティーだとサボったり仕事を全然しない奴は、そのパーティーから追い出される事もあるらしい。


細かい所はまだまだあるが、ざっとこんな感じか?


「以上ですが、何か分からない事や質問などはありますかな?」


ガツインが俺に聞いてくる。


「いや、今のところは大丈夫かな?実際に行動してみて分からなければまた聞くよ。まぁ、ネルがいるからその辺は心配してないかな?」

「そうでしたな。ネルがおれば問題ないでしょう。では早速登録させて頂きますので、少々お待ちを」


そう言ってガツインは席を外す。

冒険者になるとランクを示す身分証みたいな物が渡されるらしい。

まぁ、新人だからランク1だろうけども。


しばらくするとガツインが戻ってきて俺達にランク書かれた首飾りみたいな物を渡してくる。

リロロ、ミラーカ、フローラ、シャルミナもそれを受け取る。

何故かリリーナまで受け取っていたが。

もしかして、付いてくる気じゃないよね?


「どうぞ。これがランク3の冒険者証です。本当はもっと上のを渡したいのですが、規則ですのでこれが限界なんです。申し訳ない」


そんな事を言い、申し訳なさそうに渡してくる。


「ランク3?ランク1じゃないんですか?」

「ええ、元々技能試験として模擬戦を行いまして、それで1~3までならその結果で渡せるようになっております。カズキ様はお2人の息子ですからね。模擬戦をする必要はないかと思い、排除いたしました」


そういって期待の籠った眼差しを向けてくるガツイン。

俺、この中で1番弱いんですけど.....

キラキラと期待した顔で見られたら、とてもそんな事は言えない.....


「大丈夫っすよ。カズキ様の実力なら全然問題ないっす。もっと上でも普通っすからね」


と、ネルが優しく俺のフォローしてくれた。

ちなみに俺以外も全員ランク3らしい。


「ええ、本来はもっと上でお渡ししたかったのですが、ランク4に上がる条件に、盗賊退治がありますので、そこは規則を曲げる訳には.....本当に申し訳ありません」

「いえいえいえ!規則は守るのは当然かと!それにそんな特別扱いをしても軋轢を生むだけですしね。ガツインさんの判断は正しいかと」


ふむ、アレか?人を殺める事が出来るかどうかって事だよな?

別に殺人を自ら勇んでしに行く趣味はないが、盗賊とかなら問題なく殺れる気がするな。

そういった連中なぞ、生かしておくだけで害だしな。

まぁ、害虫駆除みたいなもんだ。


「これで登録は終わりっすけど、どうするっす?今から仕事を受けるっすか?」

「いや、流石に今からは無理じゃない?また明日、改めて来ようと思ってるよ」


そう言って俺は、今日は大人しく帰る事を決めた。

無事に登録も終わり、明日からいよいよ冒険者としての活動が始まる。

俺は明日の事を、ワクワクしながら考え、来た時の車に乗り込み城へと帰っていった。


さぁ、頑張るぞっ!


俺は心の中で、静か気合いを込めて呟いた。

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