白金 凛香の日常
埋没した作品の供養の為に投稿したのですが、ありがたいことにブックマークしてくださった方がいるようでしたので気分転換がてらネタが思い浮かべば投稿したいと考えております。
ただし、見切り発車で始める為に駄文になることをご容赦ください。
凛香は基本的に毎朝7時に起床する。
凛香の通う高校の始業時間は8時半であり、高校までの道のりは30分程度だ。つまり1時間程度で朝の支度を行っている。
1時間というと余裕があるように見えるかもしれないがそうはいかない。まずうねりにうねった寝癖との格闘である。
寝癖直しを吹き付け徹底的にブラッシングする。それでも直らない時にはお湯をかけてドライヤーで乾かす。寝癖ができない姿勢などを調べてはいるものの未だ改善されていないのである。
寝癖を治しヘアセットを終えた頃には10分程度経過している。
その次に朝食の準備だ。我が家では予め朝食のおかずを昨日のうちに用意し、各自が食べたいタイミングで温めて食べるという方式だ。我が家は各自が家を出る時間が違うことが多いためこの方式になったのである。
凛香はトースターでパンを焼きつつ電子レンジでおかずを温める。その間に制服にささっと着替えてしまう。
チンという軽快な音が鳴ったら朝食を食卓に並べて手早く食べる。
朝食を終え、洗い物を済ませると時刻は7時半。まだ時間に余裕がある。
凛香は鞄の中身を整理、忘れ物がないことを確認すると家を出る。といっても学校に向かうわけではなく、行き先は向かいの健斗の家だ。小学校の頃から部活や日直の仕事がないときはほぼ毎日2人で登校しているのである。傍から見ればバカップルに見えるであろう状況にもかかわらず、未だに彼氏彼女の関係になっていないのは何故なのか自問自答するのが最近のルーティンと化している。
「おーす、おはよーりんちゃん」
向かいの家の前で健斗が手をぶんぶんと振っている。普段は凛香がインターホンを鳴らすまでは出てこないのでどういう心境の変化なのかと疑問に思っていると健斗はニカっと無邪気な笑みを見せた。
「おはよう。わざわざ家の前で待ってるなんて珍しいじゃん」
「いやさ、今日は俺から迎えに行ってびっくりさせようと思って出てきたんだけど丁度りんちゃんが出てきたんだよねぇ」
「なんでまた急に」
(なんだこいつ可愛いかよ)
努めて笑顔を作るがにやけていないか非常に不安になったが、はにかむ健斗を見るに表情には表れていないようだ。
その後2、3度言葉を交わし凛香達は学校へと向かった。
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学校へ辿り着くと各自の下駄箱へと向かう。凛香がまず下駄箱の中身を確認する。本来、上履き以外が入っていることは無いはずなのだが週に数通は手紙が入っている。いわゆるラブレターというやつである。
(今日は3通も入ってる…)
凛香はその場で手紙を確認しその内の名前が書いていない2通を捨てることを即決する。
最初こそせめてもの礼儀と律儀に全員振っていたのだが、キリがないうえに同じ人が何度も告白しにくることすらあったのだ。とりあえず昼休みに1人振る予定ができた。せめて放課後にしてほしかったと恨み言を呟きつつ手紙を鞄にしまう。
「また手紙?」
「うん、ほんっと面倒くさい」
「りんちゃん便りになるからなぁ」
健斗には変に気遣われそうなので凛香の連絡先を知らない人達が頼み事をしたい時に下駄箱に手紙を入れていると言ってある。
下駄箱で上履きに履き替え教室へと向かう。凛香と健斗は同じクラスである為行き先も同じである。何の因果かある種の縁か、2人は小中と違うクラスになったことが一度もなかった。
にもかかわらず仲が進展しないのはおかしいと常々考えているが明確な答えは導き出せないでいる。
教室に到着した時間は8時10分。ホームルームまでの20分で一限目の授業の教科書をパラパラと読んだり、友人達と話をしたり。いわば自由時間である。
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ホームルームと1、2限目が終了し、昼休みになった。
健斗や友人達とお昼を囲みたい所ではあったがそうはいかない。下駄箱に届いた校舎裏への招待状の返事を送らなければならない。
もういっそフリーのメールアドレスを公開してそこに告白してもらう仕組みの方が良いのではないかとも考えたが、自分がモテることをひけらかすようで気が引けるうえに絶対に嫌がらせやスパムメールで埋め尽くされるであろうことが容易に想像できる。
結局、地道に振って数を減らしていくほかないようだ。
「りんりん、けんけん。ご飯食べよー」
凛香の友人である北原 黒美が声をかけてくる。『りんりん』は凛香。『けんけん』は健斗のことである。2人のことをこう呼ぶのは黒美だけである。正直、呼ばれる方は気恥ずかしさを感じる。
「ごめん、ちょっと仕事片付けてくるから待ってて」
「それってさっきの手紙?」
「あぁ…ご苦労様です…」
何も気付いていない健斗と何かを察した黒美に見送られながら凛香は校舎裏に向かった。
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凛香が校舎裏に辿り着くと、そわそわしている男子がせわしなくその場で旋回していた。顔を見てもピンと来ない。手紙の差出人と同じ名前の人物は凛香のクラスにはいない。やはり知らない人である。
「あ、白金さん!来てくれたんですね」
「私にお話したいことがあるとのことだったので。手紙ではお伝えできませんでしたか?」
「どっどうしても自分の口で伝えたくて…」
「では手短にお願いします。」
「ぼっ僕の彼女になってくれませんか!?」
「ごめんなさいお断りします。では失礼します」
凛香は一礼し素早く踵を返す」
「ま、待って!せめてもう少し考えてくれませんか!?」
「私たち初対面ですよね?それでどう考えろと?」
「あ…そうですよね!とりあえずなま
「とりあえず生!?ほんっとうに信じられない!さようなら!」
(初対面でいきなり体の関係を求めるなんて信じられない!)
怒りを露にするように凛香は足早にその場を後にした。
「え…えぇ…」
彼からすれば、とりあえず名前を伝えようとしただけで突然激昂する凛香に啞然とする他なかった。
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その後、健斗達と合流して昼食を食べ午後の授業も終え、後は帰宅するだけである。
「りんりん、けんけん。帰りにちょっとカフェ行かない?」
「カフェ?それって新しくできたOCカフェってやつ?」
「そうそう、あそこのシフォンケーキ美味しかったよ。他のも試したくてさぁ」
「絶対行く!他ってどんなのあった?」
「チーズケーキとかアップルパイとか結構種類多かったよ。ケーキ屋かってくらい」
「うわぁ…もう晩御飯ケーキにしちゃおうかなぁ…」
凛香はかなり甘党であり限定スイーツなどは見逃せない性質である。
「よく食べるわねぇ~太るわよ~」
「食べても太らない体質なので」
「本当に私ら以外の前で言うのやめなよ?脂肪切り取って渡されるよ?」
「何それ怖い」
「健斗は行く?」
「俺は田辺達とボウリング行ってくる」
「ボウリング?珍しいじゃん」
「何年もやってなかったけど誘われたから行ってみようと思ってさ」
「怪我しないようにね」
「平気だって、りんちゃん心配性すぎ」
そう言うと健斗は手を振り教室を後にした。
「んじゃ、我々は女子会としゃれこみましょうか」
「2人でも会で良いのそれ?」
ともあれ、2人でカフェに向かうことになった」
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凛香達は先ほど話していたカフェでスイーツに舌鼓を打っていた。
「めっっっっっちゃ美味しい!何これ!?このしっとりとしたガトーショコラが450円!?大丈夫?破産しない!?」
「りんりん大袈裟だなぁ」
「いやいや、これは600円でも安いよ!私なら800円つけるね」
「ま、まぁ、お眼鏡に叶ったみたいで良かったよ」
デザートを興奮気味に食レポする凛香を見て黒美は少しひきつった作り笑いをしていた。
「それより、今回も振ってきたんでしょ?」
「そりゃ勿論。今回のも酷かったのなんの…いきなり体の関係迫るとか、いくらなんでもおかしいと思わない?」
「そりゃまた災難でしたね…」
正直、黒美は凛香の早とちりも多少は含まれているのだろうと考えている。というか、そんな人間が自分の通う学校にほいほいいてほしくないという願望もある。
「んで、王子様は振り向いてくれそうですか?」
「無理」
「清々しすぎるでしょ」
「だってぇ…なんの手応えもないんだもぉん…」
涙目になりながら訴えかける凛香に黒美はため息を吐いた。
「毎日毎日、一緒に登下校しておきながら立て続けに告白されてるって…完璧にカップルじゃない認定されてる現状に何か一言」
「なんでこんだけ見せつけて有象無象が寄ってくるの!?」
フォークを握りしめてわなわなと震える凛香に黒美は淡々とした口調で話す。
「なんというか…カップルっていうより親子感がする」
「親子!?」
同い年であるにも関わらず親子という認識をされていることに凛香は愕然とした。
「ごめん、そこまではいかないかも。でも姉弟くらいに認識されてると思う」
「姉弟…」
傍から見れば家族としてみられているらしい事実に衝撃を受ける凛香だったがある考えが頭をよぎる。
「私と健斗が家族に見られるならもうそれは結婚しているも同然…」
「なわけあるかい」
「ですよねぇ…」
テーブルに突っ伏す凛香に憐れみの視線を送る黒美はまたもため息を吐く。
「もうさっさと告白すれば良いでしょ。それでもう告白してくる連中もいなくなるしさ」
「それも考えたけど、なんか…カップルと友達の差を分かってなさそうというか…OK貰っても何も変わらない気がして…」
「あぁ、確かにカップルになったからって何か変わる未来見えないわ」
「でしょ?で、どうすれば良いと思う?」
「知らん」
「雑すぎない!?」
「こちとら彼氏いない歴イコール年齢どころか片思いすらしたことない恋愛弱者ぞ。何を期待しているのか知らないけど頼る相手違うでしょ」
「確かに」
「…別に良いけど素直に肯定されると腹立つわ」
「ごめんごめん」
結局その後、特に有効な案が思い浮かぶこともなく他愛ない話に花を咲かせ女子会は終了した。
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「はぁ…」
結局何の打開策も得られず帰宅してしまった凛香はベッドの上を枕を抱きしめながらでごろごろと転がっていた。
「健斗に女の魅力に気付いてもらうにはどうしたら良いんだろう…」
まさか自分が女としての魅力がない人間なのかと考える凛香であったが、あれだけ大勢に告白されているのだから多少なりとてあるに違いないと自らを奮い立たせる。
だとすると好みやフェチの問題だろうか。とはいえ、健斗の性癖など勿論知らない。というかあるのだろうか。以前男子達の会話で『胸は大きい方が良いか小さい方が良いか』というしょうもない話をしていた中でも健斗は「分からない」と答えていた。つまり興味がないということだ。
「まぁ、焦っても仕方ないか」
健斗は女子に人気があるが、それは小動物を愛でるようなモノでありお菓子を恵んでその反応を楽しんでいるだけのように見える。現状、凛香には恋のライバルは存在しないのだ。
時間が解決してくれる問題もあるだろうと楽観的に考え、ベッドから起き上がり勉強机に向かった。
「もしかしたら、突発的なイベントが発生して一気に関係が進むかもしれないしね」
宿題をしながら陽気なことを考える凛香は上機嫌で微笑んだ。
なんやかんや今までと変わらぬ日常を送るのだろうと。漠然とそう考えていた。
しかし、案外早くその日常に変化が訪れることになる。イベントが起こったのだ。
凛香が望まない形で。
いかがだったでしょうか。次の投稿はいつかは分かりませんが、読んでくださった方々に忘れられぬよう善処したいと考えております。




