80 旅の終わり
全軍安全と思われるところまで逃げる。
魔神の周りの氷が全て砕け、ヤツが動き出した。この世のものとは思えない雄叫びをあげる魔神。そして俺の存在を認識、こちらを睨みつける。
魔神は何も言わずにその腕を伸ばし、一山はあろう拳で殴りつけてきた。腕と言っても人間の動きのそれではない。そして速すぎて見えず、直撃を食らってしまった。
魔神の攻撃を食らった俺は近くの島まで吹き飛ばされる。うぐっ、これはダメージ? この世界に来てダメージを受けたのは初めてか。
「嘘でしょ、近くの島が吹き飛んでる」
「あんな威力ではリクでも……」
「いや、生きている。しかもダメージが一気に回復!? リクほどのHPを一瞬で回復できるものなんてこの世には」
ふう、危なかった。良かった死ななくて。
俺は心の何処かでこのまま勝てる、貴重なアイテムを使うまでもない、そう考えていた。
だがそう言ってられないレベルだ。勝つために何でも使う。
「ファイナルエリクサー」、HP、SP全快。こうして俺は難なく復活。そして袋からナッツを取り出し、移動しながら食べる。
「戦闘中に何食ってんだ!?」
袋に残っていたナッツを、全種1つだけ残して食べた。
これなら勝てるだろう。
杖を握りしめ魔神に向かって跳躍。俺が持ちうる最大の一撃を決める。
魔神の姿が歪む。光が爆発。魔神を一瞬にして破壊、俺の肉体とレイクラッシャーだけ、その場に残った。
そして落下する前に、不思議な光りに包まれ体が浮く。
『リクよ、よくぞこの世界を救ってくれた』
「まさか、神様か?」
『そうだ。このまま元の世界に返そう』
ミア、イリス、ルモナが異変に気がついたようだ。こちらに駆け寄ってきている。
「ありがとう!!」
かなりの距離があるがたしかに彼女たちの声が聞こえた。彼女たち、いや誰にも俺が異世界人だとは教えていないはず。神との会話も聞こえていないだろう。何かを察したのだろうか、付き合いが長いからな。
涙を流しているのようだった。
俺が手を振ると、光は大きくなり――。
あれから3日、ニドウの港町で皆と食事を。
結局、元の世界に帰るお話はお断りしてこの世界で暮らすことにした。3人には俺が異世界人であることを伝えた。「なるほど」等、納得した様子だった。
「酒うめー!」
「マルーチ王からのお届け品だ。世界で一番高い酒と聞いた」
「僕もこんな美味しいお酒を飲んだのは初めてだ」
あまりにも美味しいため、次々と飲み干していく俺。まだまだたくさんある、マルーチ王ありがとう!
王に感謝をしていると、ミア、イリス、ルモナが不思議そうな顔で俺を見ている事に気がついた。
「どうした?」
「良かったの? 元の世界に帰らなくて。まあ嬉しいけど」
「皆は知らないと思うけど、俺は好きなんだ。むしろこれをやるためにゲームやってるまである。そのくらい好きなのに、こちらの世界に来る前におあづけを食らったんだ。今回ばかりは神様でも譲れないね」
「なにそれ?」
「クリア後のお楽しみってやつさ」




