1 俺だけじゃないよね?
「終わったか」
テレビ画面には「THE END」の文字。先程長らく遊んでいたRPGをクリアしたところだ。
「面白いゲームだった」
俺の名前は最御江陸砂、20歳男、大学生。現在クリア後の余韻に浸っている。そして少々の虚無感も味わっている。遊んだ時間が長ければ長いほど虚無感は大きいかな。人によってはコレが嫌でクリアしないって人もいる。友達がそうだ。
クリア後10分経過、今の所何も起きない。だがおまけがある可能性を考慮し、テレビの前で待機している。この状況でテレビから離れるのは悪手である。急にムービーが始まってそれを見逃してしまう可能性がある。そうなるともう一回ラストダンジョンからやり直し、感動が台無しだ。そのためクリア後待機中の来客は居留守で対応、スマホが鳴っても無視、緊急以外は出ないと完全な対応をとることにしている。
40分経過。よし、何もないな。ゲーム機本体のリセットボタンを押し、ゲームを再起動。さらなる余韻に浸るためキャラのステータスやアイテムを眺める。
「ハハハ、コイツは強かったな」
「レアアイテム、いつものように使わずじまいだった」
キャラ全員が完全回復するアイテムはもちろん、ステータスを上げるアイテム等も手つかずで残っている。大体がお店で売っていないレアなアイテム達。もったいない、もしくはこのキャラより後で加入するキャラに使ったほうが良いのではないか、ここで使ったら最悪詰むのではないか。こうして様々な理由によって結局最後まで使わなかったレアアイテムが今回も残っていた。そして彼らはこのまま使われず、データの中に埋もれてしまう運命が待っている。クリア後の隠しダンジョンがあればもしかしたら使うかもしれないけど。そのときに使ったこと無いけど。
「今日は終わりにしよう」
クリア後のお楽しみは気になるが、きりが良いところで辞めておくのは非常に大切。もう少し、もう少しと続けて、朝チュンして徹夜で学校、なんてことは避けたい。何度かやりました。
お風呂に入り歯を磨く。寝る準備、オーケー。
「寝るかー。今日はぐっすり眠れそうだ」
ゲームクリア後の睡眠、これは非常に心地がよい気分を味わえる。なんというかやり遂げた! 的なモノを感じるのだろう。当然人それぞれ、他の人はわからないけど。
ベッドに潜り込み、目を閉じると夢心地に包まれながら徐々に意識がブラックアウト。
そして目を覚ますと。
「ん~。なんだか青臭い。……どこだここは」
ベッドで寝ていたはずだが下は土、毛布も枕も無くなっていた。異常な事態に目が覚める。体を起こし辺りを見渡す。背丈が低い草がびっしりと敷詰まっている。どうやら今俺は、草原に居るようだった。
「何が起きたんだ。おや?」
服装が変わっていることに気がつく。そしてその服装は先程クリアしたゲームで、主人公が最初に来ていた服だったことがわかる。もしやゲームの世界に?
その可能性が高いか。となると、こんなところで突っ立ているのは危険なのでは? 背筋に冷や汗が。途端に焦り始める俺。辺りを見渡す。幸いなことに街らしき場所を発見。俺は急いでその街に駆けこんだ。
「どうしたんだい、魔物に襲われた?」
街の衛兵さんだろう、俺がこれまで走ってきた方向を警戒しながら話しかけてきた。ふぅ、ここまで来れば一安心か。俺は息を切らせながら衛兵さんの問いに答えた。
「襲われてはいませんが怖くなって走ってここまで」
「そうか。ここいらは弱い魔物しかいないが、それでも一般人には驚異だからね」
衛兵さんに挨拶をして街の中に。それから情報収集を。結果、先程クリアしたゲームの中ということがわかる。ただ、完全に同じ世界ではないようだった。この街名は聞いたこともなかったし、聞いたことのない名前の人だらけ。ガワだけ同じ、システムを流用と言ったところかな。
「そういえば、ゲーム序盤はこんな感じだったか。似てるな」
街へ上京した村人が衛兵と話、街で情報収集。その後は冒険者となって世界を渡り歩き、最期は世界を救う。その行動に沿って動いてみようかな。この後は冒険者ギルドへ行ってみよう。
俺はその足でギルドへ向かった。
「いらっしゃいませ。現在順番待ちとなっております」
受付の前に多くの冒険者達が並んでいた。
「いつもはこんなに混まないんだけどな」
「仕方がないさ、受付の子が数人体調不良で倒れたらしいからな」
冒険者の話し声が聞こえてきた。なるほど、そういうワケか。とりあえず俺は最後尾に。
「お次の方ー」
結構な時間が経過してようやく後2人というところまで。それにしても待ちくたびれた。特に意味もなくギルド内を見渡す。ムムム。
受付の子が丈の短いスカートをはいていた。3DのRPGだったら画面を動かしたり切り替えたりして見にいくところだ。ただ、ここはゲームの世界のようだが現実のように人が自由に動いている世界。そんな事をやったら捕まるだろうな。せめてプッシュスタートの時止め機能があれば。
「お次の方ー、お次の方ー?」
気がついたら俺の番に。いけない、おかしな妄想をしてしまっていた。
「あ、すみません。冒険者になりたいのですが」
「はい、少々お待ち下さい」




