第79話『Cの羽ばたき』
ここから冒険者レベル2です
サブタイですが、まだ式はあげてないけど、まぁそんな気分って事で(笑)
崩れ逝くブラックホーン号の赤黒く燃える巨体。
爆ぜる金属片が煌々と、砕け散った森の木々を夜陰に浮かび上がらせていた。
その遙か上空をゆっくりと旋回する巨大な影。
錬金帝国のアルファベットエージェントCのもう一つの肉体。変幻自在の水銀ゴーレム。その変貌した姿だった。
蝶の如き巨大な羽を広げた緩やかな飛翔は、大きく大気を捉え、滑る様に滑らかなもの。そして、その複眼を模した瞳は、眼下の光景を余す事無く見つめていた。
<Cより報告・・・Cより報告・・・>
<どうしたC?>
すかさずAの声がこれに応えた。
<Bの敗北を確認・・・Bの敗北を確認・・・映像を送ります・・・>
<何、だと・・・?>
Aの唸りが、より深いものとなる。
<最も恐れていた事態が起きてしまったか・・・>
<M様はなんと?>
<M様はお休みになられている。直ちに報告は出来ない。Cよ、お前の任務は何か?>
<Bのフォロー。そして目撃者の抹殺・・・>
<よろしい。お前の任務を実行せよ>
<了解・・・>
Cの声は途絶えた。
が、それより送られてくる映像は、A達のつぶさに見る事となる。
光り輝く巨人が二人、森の木々より高く、Bの残骸よりそれ程は離れずに立っている。
「あれは・・・まさか、星の井戸から抜け出したのか? しかし、捕えていたのは一体だけの筈・・・」
Aは高い角度から見下ろした映像の2体を何度も見比べた。
「星の世界から、助けに来たと言うのか? だが、この一体はどこかで見た様な・・・」
映像の一部が拡大される。
すっぽんぽんのアーリアが、画面に大写しに映される。
「むむむ・・・」
食い入る様にそれを見るAは、横山光輝調に唸り、顔色を濁らせた。
◇ ◇ ◇
大気を唸らせ襲来した巨大な影は、いきなり皆の上を旋回しつつ、その巨大な羽をはばたかせた。
すると、その羽からはキラキラとした銀の粉が舞い落ちるではないか。
満天の星々が輝く空の下、美しくも輝く銀の雪が、静かに降り出したのだ。
一瞬、虚を突かれた一行は、その幻想的な光景に目を奪われ、シルフー等は飛び跳ねて喜んだ。
「キレイキレイ! あ~ん!?」
そんなシルフを、ロイが木陰に引き戻す。
「こいつはキレイなんて物じゃない! 何かヤバイぞ!!」
「やだやだ、シルフー遊ぶ~!」
「おい! アーリア!!」
グルドが、アーリアへと何か言おうとした、その時。
「何? アツッ!?」
その粉に、さっと手をかざしたルリは、思わず手を引っ込めた。
「大丈夫!?」
驚いたアーリアは、ぶすぶすと煙を出すルリの手を見ようとするのだが、そのアーリアをルリは身にまとう羽衣で覆う様に懐に抱き込み、グルドやロイ、シルフーの上を覆う様に屈みこんだ。
「これは、毒です!! 触れてはいけません!!」
変色した表皮が、たちまちどす黒くただれていく。その様を、目を大きく見開いて見つめるアーリアは、咄嗟に身を翻そうとするのだが、それをルリは必死に引き止めた。
「あなた、そんな格好で飛び出したら、どうなります!!?」
「でも!!」
魔法の羽衣は、その表面から僅かに離れた空間で、その毒の雪と激しく反応を開始した。
そして、周囲の森が一斉に毒煙を上げ、まるで悲鳴を上げるみたいにギシギシギイギイと泣き叫び、ぐずぐずに溶けて行く。
「ふふふふ・・・M様に逆らう、愚か者共・・・そのまま、骨も残さず溶けるが良い・・・」
空には死のダンスを操るCの姿。
全身を歓喜に震わせ、更なる死の銀砂を撒き散らす。
<M230号の回収は諦めねばならないが、星の井戸を失った今となっては止むを得ぬと言う事だ。Cよ、そのまま奴等を滅ぼすのだ!>
その映像を見ながら、AはCへの攻撃継続を促した。
Aは確信した。
Bはあの性格故に破れたのだと。
<で、無ければ、我らの錬金帝国が破れる筈が無い! 否! 破れたという事実も、この勝利で上塗りされる! 殺れ! 抹殺するのだ、C!!>
「ほほほほ!! 全ては水銀の湖へ沈むが良いわ!!」
次第に赤くなり、そして黒ずんでいく魔法の羽衣。
その熱と、手の痛みに顔を歪めるルリを目の前にして、何も出来ない自分を悔やむアーリア。今なら、毒の風をもう一回だけ打てそうだが、あの高さでは届かない! 駄目だ!! 何も出来ない!!
そんなアーリアを、ルリは激しく叱責した。
「しっかりなさい!! 諦めては駄目です!! 皆さん!! これから何とか飛んでみます!! しっかり、捕まってて!!」
ルリは、残る左腕でグルドやロイ、シルフーらを抱え込み、アーリアも慌ててルリの身体にしがみついた。
詠唱と共に、ふわりと浮かぶルリの身体。そして、ゆっくりとだが前へ進み出した。
「くっ・・・やはり一つだけでは、力が・・・」
毒の雪から辛うじて逃れるルリ達は、何とか前へ前へと進むのだが、いかんせん速度が足りない。
「ほほほほ!! 逃げられるとでも思ってるのですか!!?」
楽々と追いかけるCは、その口を大きく開く。
否。
口では無い。
その全身を貫く空洞は、まるで大筒の様。
そう。
Cはその身体を、空飛ぶ大筒へと変化させたのだ。
短い発射音と共に、その口より放たれる水銀の砲弾。
それは真っ直ぐに、低空を飛翔するルリの背に吸い込まれていった。
もんどり打って、大地に叩き付けられるルリ達。
それでも、ルリは腕に抱えた人達を、体を丸めて護る。三人は、ルリのお腹に押し付けられる様にして、墜落の激しい衝撃に耐える。
アーリアは、大地に叩き付けられると同時に、手を離してごろごろと転がった。
木々はなぎ倒され、大地に深い傷跡を残すが、そんなものは、あの毒の雪に比べたら可愛いもの。
「くっ! まだまだ!!」
咄嗟に、ルリは例の光る十字を生じさせ、転んだままの姿勢で投げ放った。
すると!
ふわり、狙いの定まらない軌道は、奇跡的にCへと命中!!
「やった、ルリさん!!」
思わず跳ね起きるアーリアだったが、そのまま凍り付く。
それは、そのままCの身体を貫通して、その背後へと飛び出してしまったのだ。
「な・・・」
「うう・・・」
唖然呆然とするアーリアやルリ。そんな二人をあざ笑い、Cは得意満面に言って放つ。
「ほほほほ!! 私の身体は水銀!! その様な攻撃は・・・」
そして、再びあの毒を撒き散らしてやろうと、大きく羽ばたいた。
「全て突き抜けてしまうのです!!」
ぶわっと舞い散る毒の雪。
渦を巻いて、禍々しくも舞い降りて来る。
「M様に逆らう愚か者共!! 苦しんで死ぬが良いわ!!」
アーリアは、悲痛に歪む青い眼で、それを見つめた。
悔しい・・・
折角、みんなに助けて貰ったのに・・・
グルドに、好きって言えたのに・・・
グルドからだって・・・・・・んしようって・・・
胸にぐっとこみ上げて来る刹那さ。
その時、不意にあの声が甦って来た。
心に触れたと・・・
腐れ縁になるかもねって、妙に意味深な声が・・・
笑いながらシャワーの魔法を掛けて、霧を吹き付けてびしょびしょにさせておいて、突風の魔法で乾かして見せた、あの謎の女主教さんの声が・・・
風・・・
風・・・
もっと、強い風!
もっともっと強い風だっ!!
「なら、これはどうだっ!!?」
アーリアは、そう叫びながら思い出した呪文を唱えた。突風の魔法を。濡れた髪をも一瞬で乾かす凄まじい風!
もっともっともっと強い風をっ!!!!
一瞬、渦を巻いた毒の雪が、その動きを止め、次には逆回しみたいにCの方へと吹き戻されていく。
「な、何をっ!?」
Cの驚いた声が、僅かにアーリアにも届いた。
が、次の瞬間には、凄まじい風が、その翼をばらばらに引き裂き、Cの身体を遙か彼方へと放り投げた。
粉々に砕け散っていく水銀の身体は、更なる広範囲に四散し、毒煙を上げて森を手痛く傷付けてしまった。
そして、アーリア達は生き残った・・・
読んでくださり、ありがとうございます
攻撃魔法だけが全てではないのであります(^^)
使い方によっては色々と面白いのが昔のTRPG
最近のはどうなんでしょうね?
今からでも10フィート棒を持って冒険に出かけよ~(おい)
ま、あと1回、魔法を使わせたかったからレベルアップした様なものですが、この1レベル2レベルのレベルアップのテンポは早く、これから段々と遅くなるものです。小説でも、それに倣っていこうと思っています。
今日は、ありがとうございました
また、読みに来て下さいね~♪




