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アーリア  作者: 猿蟹月仙
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第78話『レベルアップ!!』

 木々を押し分け、吹き上がる炎に赤々と浮き上がるそれは、巨大な金属の塊。

 鋭く突き出た先端。

 完全に幾何学的な形状の円錐が、真横になったシルエット。その表面を、光る何かが幾つも駆け巡っていた。


 その中ほどの表面に、冗談みたいにぽっこり突き出たBの上半身。

 腕を組み、巨体を顕わにしたルリへと、ぐっとその右腕を突き出した。


「ブラックホーン号!! ゴー!!」


 すると、その体表を流れていた光が、本体下部へと集まり出し、それは触れてもいないのに、木々を押し分ける様に前へと進み出した。


 ハッと息を呑むルリ。

 一瞬、足元の四人を見、咄嗟に左へと走り出した。

 すると、ブラックホーン号は、ゆっくりと右旋回しながら、その動きを追う。


「馬鹿めっ!! このブラックホーン号から逃げられると思ったか!!」


「ルリさん!!」


 走り出すと同時に、ルリは四人に向けて、小さく手を振った様に思えた。

 アーリアは、ただそれらの動きを目で追う事しか出来ない。あまりに、スケールの大きな戦いだからだ。


 ルリは四人を巻き込まない様、未知の敵を前に走り出した。

 だが、相手の動きの方が、速い!!


 肉薄するブラックホーン号の切っ先が、たちまちルリの背を捉えようとした。

 咄嗟に身をよじって、その気配を避けるルリの光る身体。

 木々をなぎ倒し、大地を踏み砕きながら、転がり伏すと同時に、ルリは掌に光る物を生じさせた。


「はっ!!」


 瞬間、十字に輝くそれを放つルリ。

 だが、それは緩やかな軌道を描いて、高速で旋回するブラックホーン号に楽々と避けられてしまう。


「ほほ~う!! 飛び道具を使うか!!」


 余裕の表情で、自機の性能を楽しむBは、二つ、三つと投げ来るルリに、その機体を真っ直ぐに向け、回避運動をさせつつその力を集中させた。


「だがな!! こちらにもあるんだよ!!」


「く・・・」


 その口上に、攻撃の手を止め、咄嗟に身構えるルリ。


 その様をあざ笑う様に、Bは真っ直ぐにルリを指差し、叫んだ。


「ブラックサンダー!!」


 ガカカッ!!!


 黒い稲光が、ブラックホーン号の先端より生じ、その延長線上にある物、全てを破砕しながら真っ直ぐにルリへと飛んだ。


「シールド・・・」


 両腕を前へ突き出したルリは、それをくるりくるりと回転させ、光りの盾を生み出した。

 その光る盾は、黒い稲光の直撃を受け、粉々に砕け散る。


「ああっ!!?」

 その凄まじい大音響は、その場に居る者、全員の耳を襲う様。

 アーリア、グルド、ロイ、シルフーの四人は、頭を抱えて、木々の隙間からその戦いの行方を追うしか無い。

「ルリさ~ん、しっかり~!!」

 頭を抱えながら、アーリアは必死にルリを応援した。

 それしか出来る事が無い悔しさに、唇を噛んで拳を握る。そんなアーリアを、グルドやシルフーは何事かを叫びつつ、木の陰へと引き込もうとするのだが。


「あ~っはっはっはっは!! 良くぞ、ブラックサンダーの一撃に耐えた!! だがな!!」


 身体のあちこちから、煙をぶすぶすと立ち昇らせるルリは、次の一撃に耐える気満々の表情で、Bを睨み返す。


「ブラックサンダー!!」


 己の力瘤を誇示する様、ガッツポーズのB。


 ガカカ!!!


「シールド!」


 再び光りの盾は砕け散る。


「しぶとい奴め!!」


 更なる一撃にも耐えたルリを、憎々しげに睨みつけ、そしてBはにんまりとほくそ笑んだ。正に、邪悪な笑み。


「ならば・・・これはどうだっ!!?」


 不意に、ブラックホーン号の切っ先が、軸線がルリから横にずれた。

 ハッと息を呑むルリは、その先を見、思わず目を大きく見開いた。

「卑怯者!!」

「何とでも言え!! ブラックサンダー!!」


 ガカカ!!!


 その切っ先に集結した光りから生じた黒い稲光は、真っ直ぐに木々の間から応援するアーリア達へ向かって放たれた。

 バリバリと森の木々を破裂させて突き進む黒い稲光。

 その放たれるより早く、駆け出したルリは、両手両足を大きく広げ、その稲光の前に飛び出した。


 四人の見てる目の前で、ルリの白く光る身体を、黒い稲光が陵辱し、焼き、破裂させて四散した。

「ルリさん!!?」

 吹き荒ぶ熱風に、その細身を翻弄されつつ、グルドに肩から支えられたアーリアは、バキバキと木々を砕き、ごろり横たわったルリの姿に目を奪われた。


 胸元の、二つあるドロップ状の結晶が、その一つが見る間にひび割れてパリンと砕け散った。

 そして、苦しそうに天を仰ぐルリ。それから、目線を森へとさ迷わせ、アーリア達の無事な姿を目にすると、ほっとした表情で微笑んだ。


「ルリさん・・・」

 呆然と見上げるアーリア達に、ルリは首を小さく左右に振り、苦しそうにこう告げた。

「あなた方は、私が護ります・・・」


「逃げて!! 私たちも逃げるから!!」


「あ~っはっはっはっは!! ねずみ一匹、逃がすと思うか!!? ブラックサンダー!!」


 ガカカ!!!


「シ、シールド・・・」


 苦しそうに上体を起し、光る盾を生じさせたルリは、何とかその一撃を凌ぐ。

 

 背後には、四人が居るから動けない。四人も、下手に動くとまた同じように、身を呈して護られる様な目に合うから動けない。


 その場で、二撃、三撃と耐え凌ぐルリ。


 だが、明らかにその力は弱まっていく。


 Bは正に猫がネズミをいたぶる様に、五人の周囲をゆっくりと旋回し、ルリの動きが弱まってくるのを楽しんだ。


「そろそろ止めかな・・・飽きたからな!!」


 高らかに処刑を宣言するB。

 その時、またあの不思議な空間が、四人の周囲に広がった。

 それは、ルリの思念が呼びかける空間。

 流れる星のイメージは、ルリの方から広がっていた。おそらく、それがルリの見ていた星の世界。

 そして、悲しげなイメージが、皆の心へと伝わってきた。


 ごめんなさい・・・


 もう、私は駄目みたいです・・・


 でも、最後にこうして、地上に出られて本当に良かった・・・


 本当に、ありがとう・・・


「やだやだ!! 嫌だよぅっ!!」


「あ~っはっはっはっは!! 最後に別れの挨拶を済ませたか!! ならば!!」


 高らかに両腕を天へと突き出したBは、満面の笑みでその瞬間を楽しんだ。


「嫌だよう!!!」


 歯噛みするグルドの腕の中、頭を振って泣きじゃくるアーリアは、ぷっつんと自分の中で何かが弾けた様な、奇妙な感覚に捕われた。

 アーリアはアーリアであってアーリアではなかった。

 幾重にもアーリアをアーリアがアーリアがアーリアがアーリアが・・・見ている感覚。

 そして、答えはそこにあった。


 アーリアは、その音を口にした。


 それは、ルリが雪崩落ちる土砂の中で歌った歌だった。



 見る間に変化するアーリアの身体。

 グルドは、思わずその腕の中からアーリアを、アーリアだったものを放り出して後ろに転がってしまった。

「アーリア・・・お前は・・・一体・・・」


 見上げるグルド。


「あっは~ん!」

 パンパンに張った、グルドのシャツが一瞬で弾け、白く輝く肉体は見る間にルリとほぼ同じサイズに変化した。


 アーリアは巨人になってしまった。


 すっぽんぽんの。


「へ?」

 自らの身体を、その視線の高さの変化に驚くアーリア。


「へ?」

 目の前で、もう一体の巨人が現れた事に、それまで何年も研究に研究を重ねた決めポーズそのままで硬直するB。


「へ?」

 綺麗に遺言を決め、心の中で父母姉妹に別れを告げたルリ。


「へ?」

 この角度から、あり得ない人類の神秘を直視するロイ。


「わ~い・・・アーリア、でっか~い!!」

 とにかくびっくりどっきり大興奮中のシルフー。


「「「「「「えええええええええええっ!!!!!!?」」」」」」


 周囲にある物質を、急速に取り込み、巨大化したアーリアは、ハッと我に帰って走り出した。


「こなくそ~っ!! よくもルリさんを~っ!!」


 ズシン! ズシン! ズシン!!


 一気に踏み込み、ガッシュに教わった右のぐ~パンチを!!


「打つべし!!」


 びった~ん・・・


 ブラックホーン号を殴ったら、殴った手の方が痛かった。


 じんわじんわとこみ上げて来る痛みに、右手を抱えて飛び上がった。

「痛ぁ~いっ!!」


 そこで、ようやく余りの出来事から我に返るB。

「き、き、き、貴様ぁ~っ!! よくもよくもよくもよくも!! このB様の輝かしい勝利の瞬間に水を差したなぁ~っ!!」

 ピーっと左右の耳、頭頂部から湯気を噴出させ、ブラックホーン号の切っ先をぐるっと向けるが、そこでピタリと動きが止まった。

「おっお~う・・・何と可愛そうな・・・」

「へ?」

 アーリアに対し憐憫の表情を浮かべるB。

「お前、背は伸びたが、胸は小さくなったな・・・」

「な、なんですと~っ!!?」

 ハッと我に帰って、すっぽんぽんの現状に前を隠すアーリア。真っ赤になって怒鳴り散らした。

「そんな事ないもん!! お前みたいなつるつるテンに言われたく無いわ!! この若ハゲ!!」

「ハ・・・」

 その一言に、Bの中で何かがぼっきりと折れた。


「ほほ~う・・・つまりは、お前から血祭りにあげて欲しいって事だなっ!!?」

 ピーパープーっと湯気と熱い涙を放ちながら、Bはブラックホーン号を直進させた。

 最早、Bには細かい事などどうでも良かった。

 目の前の、このすっぽんぽん娘を手ずから八つ裂きに出来ればそれで良かった。


 心の中を、走馬灯の様に、これまで行ってきたチャレンジの歴史が流れていく。

 東に神秘の増毛剤があると聞けば、こっそり基地を抜け出しては怒られ。

 西に見事な腕のカツラ職人が居ると聞けば、行って怒って殺して火をかけた。


「これはな~!! ハゲじゃない!! 仕様なんだよ~!!」


「それじゃぁ~、仕様が無いわね!!」


 アーリアは迫るブラックホーン号に対し、その場でぺったり倒れ伏した。

 うっと来る重圧。

 その上を通り過ぎる時に、手を組んで思いっきり下から突き上げてやった。毒の風で。


 垂直に立ち昇るポイズンブロー。かつて、グルドの顔を焼いた腐食の風。

 その超巨大版である。

「うわっ!?」

 思わずその光景に、顔を覆うグルド。


 ブラックホーン号は、全体からぶすぶすと黒煙を立ち昇らせ、急にふらふらと泳ぐ様に飛んだ。先程までの軽快な飛行とは、明らかに違っている。

「くっ・・・これは、半重力装置が・・・」

 自らの肉体もボロボロに錆びさせ、必死に機体を制御するB。

 そのBの身体に、不快な音が響き渡った。

「何?」

 見れば、船体の横っ腹に、光る十字が刺さっている。その部分から、船体が真っ赤になって溶け出し、その十字自体も船体の奥深くへと入り込んで行く。

「こ、これは・・・」

 Bはハッとなって見た。二投、三投と光る十字を投げ放つルリの姿を。


 最早、今のブラックホーン号に、その緩やかな飛翔を回避する能力は残されて無かった。


 次々と叩き込まれる光る十字に、船体は内部から膨らみだし、ヒビが走り、その中よりドロドロに解けた鉄が、勢い良く吹き出し始めた。


「ば、馬鹿な! こんな馬鹿な!!? こんなふざけた連中に、このブラックホーン号がっ!!?」


 カッと光りが吹き出した。


「うおおおおっ!!? 錬金帝国総帥閣下ドクトルM様に」


 そして内部より爆ぜた。


「栄光あれぇっ!!」


 吹き荒れる熱に、Bの肉体も巻き込まれ、共に砕け散る。


 どどどどどどどどどどどどどど!!!!


 バラバラと燃える鉄片を撒き散らし、錬金帝国のゴーレム兵器、ブラックホーン号は撃沈した。


 アーリアは、呆然とそれを眺め、ハッとなってルリの元へ駆け寄った。

 駆け寄ろうとして、爪先立ってそろそろ歩いた。

「ル~リ~さ~ん!!」

 今度こそ、満面の笑みで、大きく両手を振って、すっぽんぽんのアーリアは、立つのもやっとのルリの元へと辿り着くと、足元の三人を間違って踏み潰さない様にと、そっと肩に手をかけた。

「大丈夫?」

「はい。何とか・・・ちょっと、かっこ悪いですね・・・」

 ふふふと苦笑するルリに、アーリアは手を貸して二人で立った。

「そんな事無い。そんな事ないよ・・・本当にありがとう・・・ルリさん・・・ありがとう・・・」

 ぽんと、ルリさんの胸元へ頭を預けるアーリア。

 そこでハッとなる。


 ルリさん・・・着やせするタイプだ・・・


 しょぼ~ん・・・いいな~・・・

読んで下さり、ありがとうございます


アーリア達は、無事に錬金帝国の魔の手を振りほどく事が出来た様です


ここでアーリアはレベルアップ!


次回からは冒険者レベル2として、お話の続きを書いていく予定です


レベルアップする事によって、魔法の使用回数とか、能力値とか、称号とかにも変化している感じですが、詳しいパラメーターは設定していません

使える魔法の種類くらいかな?


宜しかったら、また続きを読みに来て下さいね


今日は、ありがとうございました


よし! 会社に行くぞ(笑)!

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