表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/73

2人だけの昼休み

その日も、俺と真央は屋上で昼を過ごしていた。

少し肌寒い風が吹く中、真央はいつものように弁当箱を差し出す。


「はい、今日はオムライス。ケチャップは……ちょっと多め」


「やった、オムライスか。こう見えて、俺の好物なんだよな」


「知ってるし」


「……知ってるの?」


「あんた、前に購買で迷ってたじゃん。“カツサンドかオムライスパンかどっちがいいかなー”って。あれ、オムライスにしてた」


「見てたんかい」


「別に……見てたってわけじゃ……たまたま目に入っただけよ。勘違いしないでよね」


(照れ隠しの“勘違いしないで”が、真央の口癖になってきた気がする)


「でも、嬉しいよ。ありがとうな、真央」


そう言ってオムライスを頬張ると、思わず笑みがこぼれた。

ふわっとした卵に、ほんのり甘いケチャップライス。うまい。


「……うん、これ、好き」


「でしょ? 自信作なんだから」


真央も安心したように笑った。

最近は、こういう自然なやりとりが当たり前になってきた。


「なぁ、真央」


「なによ」


「俺さ、この時間がすごく好きだわ」


「え……」


「昼休み、屋上、手作りの弁当。強がりだけど優しいお前。

……全部、俺にとって特別だ」


真央は箸を止めたまま、動かなくなった。


「……そ、それって、さ」


「別に深い意味は――いや、あるかもしれんけど。

でも、無理に答えなくていいよ。俺が勝手に感じてるだけだし」


そう言ってごまかすように飲み物に手を伸ばす。

すると――


「……ばか」


「え?」


「そういうこと、さらっと言わないで。こっちは、何年も……

何年もずっと、あんたにそういうこと言われたかったのに」


小さな声で、真央はそうつぶやいた。

風の音にかき消されそうだったけど、確かに聞こえた。


「え、ちょ、何年もって、それ……」


「――なにもない!」


(ああ、逃げた。顔真っ赤にして、そっぽ向いた)


だけど俺の心臓は、さっきの“何年も”って言葉で、一気に跳ね上がっていた。


「……なぁ、真央」


「なによ」


「好きって、さ。何年たっても消えないもんなのかな」


「……知らない。でも、消えなかった人もいる。

少なくとも、私がそうだから」


その瞬間、ふたりの間にあった風が、やさしく通り抜けた。

まるで何かを祝福するように。


この昼休みが、“ふたりだけの時間”になった瞬間だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ