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忘れてた 好き

それから数日間、真央と俺は昼休みに屋上で会うようになった。

誰に言うでもなく、約束するでもなく――自然と、そうなっていった。


「はい、今日のメインは唐揚げ。昨日の夜から漬け込んでたんだから、文句言わせないわよ」


「ありがとな。てか、うまそう……いただきます」


「うん。感想は一口食べてからにしなさい」


俺が口に入れた瞬間、ジュワッと肉汁が広がった。


「……なにこれ、天才じゃね? めっちゃうまいんだけど」


「ふふん、当然でしょ? 私が誰だと思ってるのよ」


得意げな真央の顔。

でも、その笑顔の奥に、どこか不安そうな影もあった。


「なぁ、真央」


「ん?」


「お前ってさ、あんま人に甘えないよな」


「……いきなりなによ」


「いつも人に強くあたってさ、でも本当は全部自分で抱え込んでるように見える」


「……あたしが、そういう性格なの、前から知ってたでしょ?」


「だからこそ言ってる。……無理すんなよ」


真央は箸を止めて、しばらく黙っていた。


「……昔の私って、知ってる?」


「幼稚園の頃の?」


「違う。中学の頃。……あんたとは同じクラスだったけど、あたし、ずっと意地張っててさ。

誰かと素直に話すのが怖かった。嫌われるのも、避けられるのも……全部怖かった」


「……今は?」


「今も、ちょっと怖い。でも……セイタには、言ってもいいかなって思った。

だって、あんたは――昔も、今も、変わらないから」


「……それって、褒められてんのか?」


「うん、たぶんね」


真央が、そっと笑う。

あの強がりで、意地っ張りで、でも誰よりも優しい笑顔。


「……あたしね、ほんとは気づいてたんだよ」


「何を?」


「小さい頃、あんたと一緒にブランコに乗ってたこと。

“お前の方が泣きそうな顔してたじゃん”って言われたのも、ちゃんと覚えてた」


俺は目を見開いた。


「じゃあ、なんで――」


「……思い出しちゃいけないって、思ってた。

だって、あの時の私は、今の私じゃないから。弱くて、泣き虫で、何も言えない自分を、見せたくなかった」


そう言った真央は、どこか吹っ切れたような表情をしていた。


「でも、セイタと話してると、あの頃の自分を否定しなくていい気がする。

泣いてた私も、笑ってた私も、全部私なんだって」


「……ああ。俺もそう思う」


「だから――ありがとね。あの時、“一緒に遊んであげてもいいよ”って言ったの、嘘じゃなかったんだよ」


真央は、まっすぐ俺の目を見て微笑んだ。

その笑顔に、俺は何も言えなかった。


ただ、もう一度好きになった――そんな気持ちで、胸が熱くなる。

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