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もう一度初めまして

次の日の昼休み。

俺は教室を抜け出して、屋上の扉の前で立ち止まっていた。

真央に呼び出された。昨日の放課後、「昼に屋上、来なさいよね」って言われたから。


軽くノックをして扉を開けると、そこには制服のスカートを風に揺らす真央が立っていた。


「あ、来た。……遅い。三分遅刻」


「早すぎる方が珍しいだろ」


「言い訳禁止。ほら、そこ座りなさい」


ベンチに腰を下ろすと、真央が小さな紙袋を俺の前に差し出した。


「……はい。あんた、朝も昼もまともに食べてないって言ってたでしょ。

今日だけだからね。勘違いしないでよ」


紙袋を開けると、そこには手作りの弁当箱が入っていた。

ふたを開けると、色とりどりの野菜、卵焼き、そして……少し焦げたハンバーグ。


「……まさか、これ全部……」


「自分で作った。文句ある?」


「いや、うまそう……すげぇな」


「でしょ? あたし、やればできる女なのよ」


どこか誇らしげに胸を張る真央。

でも、少しだけ指先が震えているのが見えた。

きっと不安だったんだ。味とか、俺の反応とか。


だからこそ、俺は最初にハンバーグを箸でつまんで、一口食べた。


「……うまい」


「ほんとに!? 変じゃない? しょっぱくない?」


「いや、マジでうまい。てか、朝から作ってたんじゃないの?」


「う、うん……ちょっと早起きしただけ」


真央は照れくさそうに視線をそらした。

その仕草が、なんだかすごく可愛かった。


「なぁ、真央」


「……なによ」


「昨日のこと、覚えててくれて、ありがとうな。

正直、あの記憶って俺の中では特別だったんだ。

でも、ひとりで覚えてても意味ないって思ってた」


「……私だって、覚えてたかったよ。

でもね……あの頃の“好き”って、何だったかなんて、今まで考えたこともなかった」


「……じゃあ、今は?」


真央は小さく息を吐いて、俺の目をまっすぐ見つめる。


「……今の“好き”は、ちゃんと知ってる。

あんたが誰にでも優しくて、ズルくて、だけど……いつも誰かのために頑張ってて。

そんなところが……悔しいけど、放っておけない。だから――」


そこで言葉を切って、真央は弁当のふたを閉じた。


「“もう一度、はじめまして”って言っとく。

今の私として、ちゃんと向き合いたいから」


俺は思わず笑った。そして手を差し出す。


「――はじめまして。セイタです」


真央も、くすっと笑って。


「はじめまして。真央です」


その手を、そっと握り返してくれた。

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