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悪役戦姫ノア、男装皇帝に嫁入りする  作者: ゆいレギナ


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43話 おっさんたちの杯①

 私は、思わず鼻で笑ってしまった。

 エーデルガルドから聞いた伝承を思い出したのだ。


 悪魔は心を食らうという。

 現実に目の当たりにしてみると、たしかにその通りだ。話しぶり、手振りや身振りはまるで別人。エーデルガルドの身体に別の存在――悪魔――が憑依したといっても過言ではなかった。


 悪魔化計画なんてものではない。

 正真正銘の悪魔に乗っ取られたかのように、彼女はまるで別人で。


 その悪魔は『エーデルガルド』の顔を使って哄笑する。


「さあ、我の嫁なら大人しくその身を捧げよ! 卑しき人間よ!」

「はは……これを私に止めろってか」


 実際、私ひとりの生け贄でよければ前向きに検討しますけどね。

 それで一生ご満足していただけるかと言えば、彼女の言い分からして答えは否。動いた分だけ、食事のごとく人間を食らうことが容易く想像できる。


 そもそも、ここは王宮の地下である。エーデルガルドの母親の部屋にあった暖炉の中に、この地下室への階段が隠されていた。まさにニーチェ皇子が『かくれんぼポイント』と言っていた場所である。


 アニス帝国の貴族はもちろん、近隣諸国の王族や外交官たち……そんな世界のお偉いさんたちが一斉に集まる城の地下で、こんな悪魔が暴れたら……悪魔の餌になる前に、城の倒壊に何百人が巻き込まれることになるだろうか。


 私の乾いた笑いがこぼれるのも必然だ。


「夫の暴走を止めるのも、妻の務めって?」


 なかなかきっついお務めである。

 仮にも、相手は世界一と名高い魔法士エーデルガルド=フォン=アニス。しかも悪魔の憑依により箍を外されているのだ。体内に収まりきらない魔力の余波だけでも、私の肌がヒリつき、髪が大きくなびいている。


 ……でも、こうとも考えられるよね。

 悪魔のおかげで、今、ようやく本当のエーデルガルド=フォン=アニスと向き合えている。


 だから、私は未来の旦那様に向かって、クイッと人差し指を曲げた。


「おいでよ、エーデルガルド。あんたの全部、私が愛してあげる!」


 ◆


 ある日、俺の友人が言った。


『私の息子が、私とおまえを殺そうとしている』

『そっかぁ~』


 俺はその話を、酒を飲みながら聞いていた。

 近衛団長だというのに、なぜか戦場行きをたびたび命じられる。

 あー、俺に消えてもらいたいやつがいるんだな、というのは明白だ。

 そして、友の息子、ヨハン=フォン=マイヤーが俺たちを恨んでいることも同様だった。


 俺らが彼の婚約者であったエーデルガルド姫を男として皇帝に押し上げてしまったため、彼との婚約がなかったことになってしまったからだ。


 昔から、ヨハンの向上心には目を見張るものがあった。

 それはその先に、国の頂点に立つという目標があったからにすぎない。今も城内内部で味方を着々と増やしているという。それもすべて、自分が王配として国を牛耳るための下準備であったことは明らかだった。もとよりヨハンは勉強熱心だが魔力が少なく、次男坊。通常なら爵位も継げない立場とすれば、藁にもすがる野心だったのだろう。さすがに、皇帝と兄を排除するために、城内に流行病を持ち込んだことはやりすぎだが。


 俺は酒を煽りながら、ぼんやりとつぶやく。


 酒でも飲まないとやってられねーよ。

 育児も、政治も、戦争も。


『エルちゃんを女帝として担ぎ上げたほうが良かったのかねぇ……』

『それは何度も話し合ったことだろう。戦時の真っ只中で新しい流れは――』

『そうだよな~。エルちゃんに女帝の貫禄を出せといっても、まだ難しい年齢だし』


 もしも、エーデルガルド姫が男だったなら。

 もしも、エーデルガルド姫が貫禄のある年配だったなら。


 そんな『もしも』は、何度考えたとしても『もしも』でしかないのだ。夢でしかない。 


 息子の夢を潰した父親が声を落とす。


『おまえは悪魔化計画についてどこまで知っている?』

『どこまでって……それを実現させないために、姫さんを皇帝にしたんだろ?』


 悪魔化計画は、負け戦が続いているアニス帝国の最後の切り札。

 悪魔とは本来、人間が死してなおこの世に留まり続けた魂が、別の人間に憑依することで生まれる魔物だ。しかし最近、人間の魂を変質させることで悪魔化させる実験が加速していた。


 そうして生まれた生物が人にコントロールできる存在なのかは議論中だが、使える魔法の威力は人の比にならないほど強大。そんな悪魔を戦争に投入できたら、戦況などあっという間にひっくり返るだろう。


 しかし、悪魔の人為的な生成など道徳的に問題しかないから、生きてなお魔法の天才であるエーデルガルドという姫を皇帝に担ぎ上げた次第だ。それも人道的にどうかという話だが。


 俺が再び手酌していると、友が俺の肩に手を載せる。


『私たちが、死んで終わりなど許されると思うか?』

『どういうこと?』


 俺があえて半眼を向けるも、友の表情はすでに覚悟を決めたものだった。


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