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あくまでも忠実なる下僕、ガルビデ

2巻の26話です。

「そこにいるガルビデは、ニセモノだっ!」


 俺は叫ぶと同時に、《風》に乗って飛んだ。

 これで、すぐにプリメラを掴まえることが――

 ゴオォッ! 「きゃあぁっ⁉」

 ――できなかった。


 ふいに突風が吹き荒れて、プリメラの身体が飛ばされてしまった。すんでのところで俺の手は空振りになっていた。


「うっ⁉」

 プリメラは勢いよく祭壇に背中を打って、倒れ込んだ。

「プリメラ!」

 反応がない。気を失っているのか。


 俺は今度こそプリメラを掴むため、すぐに祭壇に向かって飛ぼうとした。

 だがその瞬間、祭壇上で展開されていた魔法陣が、次々と破裂するように消えていった。

 その代わりとでも言うかのように、プリメラの足下から新たな魔法陣が展開された。


「くっ⁉」

 突然の鋭い光に目が眩む。

 この地下空間の地面全体が光り輝いて見えるほどの、巨大な魔法陣。


 これはプリメラが展開したのか?

 ……いや、そんなわけがない。


 彼女は明らかに気を失っている。

 そのはずなのに、プリメラの身体が、すぅと立ち上がった。まるで糸に吊らされた人形のように、首や四肢を力無く下げたまま。

 何が起きているんだ⁉


 少なくとも、これが『封印』の儀式でないことくらいは解る。

 封印の儀式は、失敗してしまったんだ。


「プリメラッ!」

 俺は霊装エレナの《風》をまとって、祭壇に立つプリメラに向かって飛んだ――

「ぐぅっ⁉」

 ――だが届かない。


 祭壇が、まるで見えない壁に覆われているかのように、近づくことができない。

「せぁっ!」

 霊装エレナの一閃――霊装の一撃は魔力回路を断ち切ることだってできる。だから、この『見えない壁』の魔法だって無効化できるはず!


 しかし何も起こらなかった⁉


 魔力回路は、確かにそこにある。

 霊装エレナは確かにそれを断ち切った。

 なのに、見えない壁は無効化されなかった。

 それはまるで、魔法ではない力に邪魔されているかのように。


「セラム!」

 呼び掛けると同時に、俺の左手に霊装セラムが握られる。

 霊装セラムの《氷》は、万物を凍らせる。それは魔力回路であったり、魔法そのものを凍らせることさえできる。

「これなら、どうだぁ!」

 霊装セラムが、純白の一閃を宙に描いた。

 これでこの魔力回路も凍結させたはず!


 ……しかし、なにも、おこらなかった。


 見えない壁が、ここにある。

 そのせいで、俺たちは祭壇に近づくことができない。

 霊装の一撃すら効かない力に、妨げられている。

 俺は、プリメラを目の前にして、この手を伸ばすことすらできないでいた。


「危ない!」

 ネイピアの叫び声が届いた。

 と同時に俺の身体に無数の『糸』が巻き付いて、勢いよく後ろに引き戻された。

 直後――


 ズズゥンッ!

 ――さっきまで俺の居た場所に、白金色をした、歪な槍のようなものが突き刺さっていた。


 ……オリハルコンの、槍?


「ちぃ! 外したか!」

 その声は、ガルビデだった。

 ガルビデは祭壇の脇に立って、憎々しげに俺を睨みつけていた。

 その手には、白金色の歪な槍――オリハルコンの槍。

 一体、どこからそんなものを……。

「なっ⁉」

 思わず、驚愕に息が詰まった。


 ガルビデの背後にある祭壇が、異様な形で抉れていた。

 まるで、白金色の粘土を手で千切ったかのような……。


 ……まさか。

「お前は、オリハルコンの祭壇を千切って、槍を作ったっていうのか?」


「くはははははっ! そうだ、私がこの祭壇を千切った! ぶち壊した! 憎き、忌まわしきこの封印の祭壇を! 私は今、壊したのだ!」

 ガルビデが笑い、叫ぶ。上半身を仰け反らせるほど豪快に笑い続ける。

 ……いや、本当にガルビデなのか?

 少なくとも、コイツは人間側じゃない。

 さっき、魔王ゼグドゥの『封印の儀式』を始めようとしたとき、コイツはなんて言ったか。

『封印の儀式を始めるしかない。すぐに祭壇へ来るのだ!』

 ……『来るのだ』と、言っていたんだ。

 あのとき、誰よりも祭壇から遠かったにもかかわらず。


「……お前が、魔王ゼグドゥか」

「くはは……」

 ガルビデは不自然な体勢のまま笑いを止めて、俺を見やってきた。

「惜しい、と言っておこうか。私ごときが、魔王ゼグドゥ様であるわけがない! 私はただの、仮の入れ物。真のゼグドゥ様が復活なされるまでの間のみ、この身体を貸すことしかできない未熟者にすぎぬ。だが光栄にも、ここにおらせられるゼグドゥ様が無事に復活されるための手助けを、させていただけたのである」


「……ここに、居る?」

 ガルビデの言葉が引っ掛かった。

 ……いや。本当は想像できている。

 今ここで何が起こっているのか、理解はできる。

 だけど、受け入れられない自分がいる。


「そうだ! 魔王ゼグドゥ様は、今まさに、ここにおらせられるのである! この世界でもっとも相性の良い、あの女の身体を依代にすることによって」


 ガルビデは興奮して叫びながら……

 案の定……


 プリメラのことを指し示した。

次話の投稿は、本日(6/14)18:30を予定しています。

本日は、全3回の更新の予定です。

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