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地下への道を、切り開く!

2巻の22話です。


 エレナとネイピア、ふたりの《風》使いの回復を図りながら、2日が経った。


 帝都の北側に広がる、小ぶりの丘――聖山シュテイム跡。

 その上に、俺たちは立っていた。


 エレナ、セラム、ネイピア、プリメラ、そしてガルビデ。

 全員、万全の状態を整えてきていた。


 これから、まずはこの地下にある『封印の祠』を目指す。

 そこは、『666年前の魔王』こと俺が封印されていた場所だ。

 教導士団の残り3名は、万が一のため、地上で待機することになっていた。可能ならば住民の退避を、それが無理そうなら『ジードによる街ごとの避難』のための下準備を、それぞれする手筈になっている。


 空が、広かった。

 ここには、かつて、聖山シュテイムが壁のように聳え立っていた。

 それが一瞬にして崩れ去り、今は、麓だった部分のみが小高い丘のように残っている。

 土砂崩れに巻き込まれるかたちで、『封印の祠』に繋がる地下坑道の入口は、完全に埋まってしまっていた。

 だが、道が埋まってしまっていたとしても、そこに『封印の祠』が存在していることに変わりはない。物理的な道が在ろうが無かろうが、そこには、次元の《扉》が存在しているのだから。


 物理的な道がないのなら、作ってしまえばいいだけだ。


 と言っても、最終的な目的地はそこじゃない。

 さらにそこから隠し通路が延びていて、帝都の地下深くに繋がっていることも解っているんだ。

 ただ、その隠し通路も、土砂崩れと、それから帝都を『すくおう』としたことによる地下崩壊によって、ぐちゃぐちゃになっているようだった。

 だから、そこまでの道も作ってしまえばいいのだ。


「さて、それじゃあ行くか」

 俺は、敢えて軽い感じで声を掛けた。

 みんなが頷きを返すのを受けて、俺はまず、霊装エレナを構えていた。


『封印の祠』までの道を、切り開く!

 呼吸を整え、狙いを定める。

 狙うは一点のみ。霊装エレナの、突きの一閃だ。


 剣先からほとばしった《風》が、細く鋭い竜巻を巻き起こす。

 空気を切り裂く音を立てながら、それは鋭いドリルとなって、ミスリル鉱山の硬い地盤をも、まるでプリンをすくうようにいとも容易く抉っていった。

 手ごたえあり。

 ほんの一瞬で、たった一撃で、『封印の祠』まで貫く一本の道が作られた。


「よし、このまま一気に……っと」

 勢いを付けようと言った言葉の、後が続けられなかった。


 ゴーレムの群れが現れた⁉


 しかもただのゴーレムじゃない。

 土のゴーレムはもちろん、鉄、銀、金、さらにはミスリルゴーレムまで……。

 せっかく開けた地下道が、群れに埋め尽くされている。それどころか、ゴーレムが暴れ回って、せっかく開けた穴がまた埋まっていってしまっていた。


 ゴーレムのほとんどが、さっきの霊装エレナの一撃によって身体が抉られていた。ただそれでも、ゴーレムたちはすぐに周囲の地盤から目当ての素材を吸収し、元の身体に戻ってしまっていた。

 豊富な地下資源のある地域に現れるゴーレム。厄介なことこの上ない。

 事実上、不死身のゴーレムの群れが、立ちはだかってくるってことじゃないか。


「ここは、私が先行して道を切り開こう」

 そう言ったのは、ガルビデ。

 白色の制服が土で汚れることも厭わず、《風》魔法でゴーレムたちを切り裂いていった。

 ……さすがは教導士団長って感じだな。ゴーレムの群れにはミスリルゴーレムも混じってるのに、難なく倒せている。


 ……にしても、ゴーレム多すぎだろ。ここまで倒した数だけでも50は下らない。

 恐らく、以前この聖山シュテイムに研究室を持っていた《土》のエリート魔法士一族・キルス家の置き土産なんだろう。

 研究のための魔法薬だとか、もっと単純に魔力の残滓などが漂っているせいで、こんな野生のゴーレムたちが生まれているんだろう。


 野生のゴーレム――生成魔法によって身体ばかりが形作られておきながら、その行動を統制するための頭脳に該当する制御魔法が行われずに、暴走してしまうゴーレムたちだ。

 こんな奴らが、街から数㎞も離れていない場所に、こんなに多くの群れを形成しているなんて、あまりに危険すぎるじゃないか。


 ……でも。

 少し妙だな。


 ゴーレムは、己を組成している土や鉄など、あるいは己の組成物質よりも魔法強度が劣る物質を自在に操ることができる。

 自分の身体の補修や強化に使ったり、あるいは単純に、流動や崩落を起こしてきたりすることもある。

 だからこそ、先日のオリハルコンゴーレムの襲撃では、ミスリル鉱山だった聖山シュテイムの崩壊が起こされてしまったのだ。

 すべての金属の頂点にあるオリハルコンが、ミスリルを操り崩壊させた、と。


 そう考えると、これだけのゴーレムの群れが地下にあふれているのは、本当に危機的な状況だった。

 むしろ、これまで帝都で地震や陥没が起こっていないのが、おかしい。

 それほどまでに、今のここにはゴーレムが多すぎる。


 ……もしかしたら、このゴーレムの群れは、キルス家の影響じゃないかもしれない。

 むしろ、もっと最近になって誕生したばかりのモンスター、という可能性が高い。


 ……それこそ、魔王ゼグドゥの影響によって?

 その魔力の影響が人間界まで及び出していて、そのせいで、封印されている場所の近くでモンスターが誕生してしまっているんじゃないか。

 そう考えると、いろいろしっくりくる。

 ましてやゼグドゥは、『モンスターを司る』力を有していると伝わっているのだから。

 だとしたら、いよいよ急がないといけない。

次話の投稿は、本日(6/13)18:30を予定しています。

なお、本日の更新は、全4回の予定です。

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