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追放賢者ジーンの、知識チート開拓記  作者: あけちともあき
第四部 開拓、陰謀、ドラゴン!
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92話 スペシャルチーム、地底へ!

 レイアスに住むダークドワーフのオブは、よく開拓地にやって来る。

 それは、およそ二日に一度という高頻度である。

 理由は、ビブリオス準男爵領の酒造担当、ドワーフのボルボに会うためだ。


 今日もそろそろ来ている頃合いであろう、と数が増えたスペシャルチームを引き連れていくと、豪快な笑い声が聞こえてきた。

 酒樽を前にして、柄杓からジョッキに酒を注ぎ、げらげら笑っている男が四人いる。

 オブ、ボルボ、そして騎士イールス、騎士フラウンダーである。

 フラウンダーなどはさっきまで、アスタキシアの農作業はいかがなものかと私に言ってきていたように思うが……。

 いつの間にか、イールス卿に連れられ、利き酒の会に参加していたのだな。

 我が開拓地にやって来る騎士は、不良騎士ばかりである。


「フラウンダー、何をしてますの!? 日が高いうちから酒盛りなんて!」


「へ!? う、うわーっ!! アスタキシア様! これには深い事情がありましてですね!」


「おう! 旨い酒があり、新しい客人がおる! それなら酒を飲まずにはいられんのう!!」


「そうじゃそうじゃ!」


 フラウンダーの言い訳を、ドワーフたちが粉砕した。

 イールスは、うなぎのような顔でうんうんと頷いている。


「フラウンダー卿、無理はいけませんぞ。我ら騎士とて、時には羽目を外したくなるもの。たまにはいいではありませんか。ま、私は一日一度は羽目を外していますがね!」


「はっはっは、イールスは人間にしては見どころがあるのう!」


「そうじゃそうじゃ!」


 ドワーフ二人と肩を組んで大笑い、ジョッキを高らかに掲げる騎士イールス。

 こんなでも、王国直属の騎士であり、我が開拓地に駐在する国王陛下からの大使なのである。


「われらのツナダイン三世陛下に乾杯!」


「待てイールスよ。なぜわしが人間の王に乾杯せねばならぬ。わしは地底世界で暮らしておるのじゃぞ? そのツナダインとやらに恩を受けた記憶はない」


「簡単ですぞオブ殿。陛下がビブリオス準男爵をこの地に派遣したからこそ、我らはこうして出会えて、そして酒樽を囲んで素晴らしい時間を過ごすことができるのです!」


「なんじゃと!? そうじゃったのか! それは乾杯せずにはいられんなあ!」


「乾杯じゃー!! ほれ、お前も飲め飲め!」


「あ、これはどうも」


 フラウンダーも巻き込まれている。

 結局、四人でツナダイン三世の名を叫んで乾杯し、ジョッキをぐいぐいと飲み干す。


「……ジーン、なんだこれは。いや、この開拓地でそんなことをいちいち聞いていては埒が明かないのは知っているが」


「ガーシュイン殿、気持ちは分からないでもないが、彼らはあれで、仕事はしっかりするタイプなのだ。私は放任主義でね。あー、オブ、いいかな」


 私の後ろで、アマーリアとシーアが、「放任主義すぎる」とか言っていたように思った。


「おう、なんじゃジーン。何か頼みたいことでもできたか?」


「うむ。地底世界に行く用事ができた。時に現在、リザードマンとの仲は良好かね?」


「おうおう。おかげさまでなあ。そうじゃ! クロクロの奴が、ついに求婚に行くらしいぞい! とさかの棘に油を塗って、身だしなみを整えておったわ」


「わー! クークーさんとクロクロさんが結婚するんですね!」


 すてき! と飛び跳ねるナオ。

 彼女は、我らの目的である翠緑色の鱗のリザードマン、クークー嬢と仲良しなのである。

 ついでにアマーリアとカレラも彼女とは仲がいいのだが、残念、カレラには仕事がある。


「そうか、お主ら、クロクロの求婚を見に行くんじゃな! いいぞいいぞ。案内してやろう。……なんじゃ、エルフも来るのか」


「俺はジーンの護衛だからな。とち狂ったドワーフが悪さをしないように見張るだけだ」


「何もせんぞ!! これだからエルフは!」


 トーガとオブが軽く口喧嘩をする。

 いつものことである。

 ということで、我らは地底世界レイアスへと赴くことになった。


 オブが岩の精霊に呼びかけて、地底世界までの通り道を開く。

 これは、見た目通りの長さの通路ではない。

 空間を捻じ曲げ、恐らくはスピーシ大森林の奥地の、さらに遥か地下にある巨大な空間へと繋がっているのだ。

 あくまで私の予測だが、地竜はレイアスよりも地上に近いあたりにいるような気がしている。


「ほえー! すごいですわ……!」


 赤く輝く通路を見回しながら、アスタキシアが感激する。


「でしょー。これはですね、岩の精霊さんと一緒に、火の精霊さんが組み合わさってるみたいなんです。触っても熱くないんですけど、これってこの通路を通る時、わたしたちも精霊みたいなのになってるから……っていうのが最近の研究成果です」


 ナオが丁寧に説明すると、後ろでシーアがうんうん、と頷いた。


「地底世界……! 大森林のみならず、ジーン殿は多くの世界を知っているのですね。これはずるい。ずるいと言わざるを得ない。こんなに楽しいところなら、僕は全ての業務を投げ捨てて移住してきたのに……!!」


 賢者ウニスが大変嬉しそうだ。

 ガーシュインは無言だが、目を見開いてきょろきょろしている。


「しかしまあ、凄い人数じゃのう! これだけ集めて何をするつもりじゃ?」


 先導するオブが問う。

 我が一行は、私、ナオ、トーガ、シーア、ガーシュインとアマーリア、ウニス、アスタキシアの八名である。

 スペシャルチームが随分、人数を膨らませたものだ。

 この中で、アスタキシア嬢だけはスペシャルチーム見習いみたいなものだが。


 全体的に緩い下り坂となっている通り道を抜けると、あっという間にレイアスに到着だ。

 壁や、空が、きらきらと輝いている。


 私は近場にあった柱状の壁面に近づき、光を放っている本体である苔を削り取った。

 懐から取り出した容器に収納する。


「こらこら」


 オブに腰を突かれた。


「なんだね」


「何をヒカリゴケをとっておるんじゃ」


「前回は色々忙しくて、採取ができなかったからね。こんなこともあろうかと、今回はばっちり用意をしてきたのだよ」


「お主なあ……。いやまあ、ジーンはそういう男じゃった」


「そういう男だな」


 なんだろうか。私に対する見解で、ドワーフとエルフの意見が一致している。


「前はこやつ、ここまで自由に動いたりしてなかった気がするんじゃが」


「今日はジーンの目付役が、人間の女の世話をしているからな。解き放たれた獣のようなものだ」


「なんと人聞きの悪い事を言うのだ」


「そうですよ。これは僕たち賢者の習性みたいなものです。つまり僕らは賢者という生き物なんですよ」


 私の横で、当たり前のような顔をしながらウニス殿がヒカリゴケを採集していた。

 結局、私とウニス殿は、ドワーフエルフ連合軍によって壁から引き剥がされてしまったのだった。



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