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38話 襲撃とそれに対する用意

 現在開拓地にいる全員を集める。

 領主である私、そして側近のナオ。

 相談役のワイルドエルフ兄妹、トーガとシーア。

 ある意味、最初の住人である冒険者の五人。

 戦士マスタング、ドワーフの戦士ボルボ、ハーフエルフのレンジャーカレラ、神官サニー、魔術師ビートル。

 そして、悪魔マルコシアス。


「いよいよ、我が開拓地が迎える最初の試練がやってくる」


「試練ですか、先輩!」


 むふうっと鼻息を荒くするナオ。


「そう、試練なのだ。敵は諸君もお分かりの通り、当代のバウスフィールド伯爵、クレイグ。正確には、奴が派遣した刺客だろう。これから、君たちには敵の狙いの予測と、それが的中していた場合の対処方法を伝える。と言っても、既にやることは少ないのだが」


「だろうな。お前が以前から立てていた、不可解な策略のことだろう? 既に準備の大部分は終わっているのではないか?」


「いかにも。トーガは最後に、エルフの諸君に私の言葉を伝えてくれればいい。シーアも協力してくれると助かる」


「うん、分かったよ。でも、協力って何を?」


「避難勧告だ」



□□□



 昼を過ぎた頃合いである。


「来たぞ」


 遠くを見ていたトーガが伝えてきた。

 人間の目では、視認できるかどうか怪しいくらいの距離に、招かれざる客がやってきたということだ。


「ナオも確認してみてくれ」


「はい! 詠唱省略、魔力感知(ディテクトマジック)


 魔法の行使と同時に、ナオはメガネのアーティファクトを起動した。

 これによって、ナオが生来持つ魔力感知能力と、魔法による魔力感知、そしてアーティファクトが補助する効果が重複し、より細やかな魔力に対する分析力を発揮するのである。


「あー、トーガさんの言う通りです。いますね。なんか変なのを持ってます。えっと、ここからじゃ小さくてよくわからないんですけど、一つ、二つ、三つ……全部で八つくらい。背負ってますね。それを下ろしてるみたいです。凄い魔力が溢れてます」


「どうかな、トーガ。君から見て、特定の精霊力があちら目掛けて集まっているということは無いかな?」


「満遍なく、あらゆる精霊力が吸われていっている。神官の女が作った、像に近いな。だが、あれよりはもっと、精霊力の流れが急速だ。このままでは、遠からずあれは破裂するぞ」


 あれ、とは。


「ナオ、アーティファクトの効果を望遠に。魔力感知が少し落ちてもいいから、正確に、彼らが展開している物を見てくれ」


「はい! 望遠っと……! 見えました! あれって……なんですかね? 金属の柱みたいです。それを輪のように並べてます」


「輪には印や、模様のようなものがあるかい?」


「あ、はい! サニーさんが刻んでいた、神様の印に近いですけど、もう少し違います。ええと、こうしてこうして、こう書いて」


 ナオの指先の動きを見て、手乗り図書館の上で再現してみる。

 なるほど、こういう形の印か。

 見たことは無いが……。


「手乗り図書館、この印と符合する記録はあるか?」


 手乗り図書館は、ぼんやりと光を放ち、それを点滅させる。

 どうやら、記録には無い。

 ならば、どうする?

 私は、質問の仕方を変えてみた。


「手乗り図書館。この印が何を行なうものなのか。印を八つ並べて、輪を作る意味。神像に似た、魔力を吸い上げる力。破裂すら伴うような、急速な魔力の吸収。これはなんだ?」


 手乗り図書館は、一瞬、その光を止めた。

 一呼吸ほどの間だ。

 そして、次にそれは強く輝いた。

 図書館の上に、一つの記録が表示される。


『召喚の陣形、神紀時代に、人間が天から地に神を降ろそうと作り上げた術式、精度不完全、柱数不足』


 出た。

 私が知らない知識だ。

 手乗り図書館は、恐らくある種の条件が揃うことで、完全に未知の知識を吐き出すことがある。

 ナオに魂を与えた時。

 柔らかな鏃を作り出した時。

 そして、神を降ろす儀式を目の前にした時。


 目の前で行われているであろう儀式で、何が起こるかは正確に判断できない。

 未知の事象なのだから、それは当然だ。

 だが、知識を得るためのキーワードはある。


「マルコシアス、質問をする。奴らは、あの儀式で神をどこに呼び出そうとしている?」


『その質問に答えよう』


 私の横に、魔狼が歩み出た。

 その目が、白目の部分まで金色に染まる。

 強く魔を帯びた者の目は、黄金に輝くと言う。

 質問への回答を得るため、マルコシアスが魔力を使用しているのだ。

 魔力を使って、未知を既知へと変える行為。

 これはもしや、マルコシアスは手乗り図書館と同じ、どこかにアクセスしているのではないだろうか。


『人間たちは遺失魔法を使用し、戦神の側面を森の寺院に呼び出そうとしている』


「もう一つ質問ができるなら、聞きたい。彼らがその知識を得たのは、どこからだ?」


『その質問に答えよう。バウスフィールド伯爵は十年前に、遺失魔法の継承者であるガーシュインを迎え入れた。全てはガーシュインの魔法だ』


 そして、マルコシアスは押し黙り、そのまま地面に寝そべってしまった。

 今日の分の解答は全て終えたということだろう。

 だが、これで十分だ。


「兄さん、大変! 岩窟に精霊力が集まってるって、長が!」


 シーアが叫ぶ。

 彼女の後ろには、エルフの通り道が展開している。

 里からの連絡を受けたのだろう。


「ジーン、全て予測どおりか?」


「ああ。予測していたとも。私を里に連れていってくれたまえ。これから事態は大きく動くぞ」


 私は振り返り、エルフの通り道へと向かった。


「先輩!」


「任せておきたまえ。ナオ、君は儀式を観察。記録を取っておくように。カレラ、サニー、例の不完全な印を刻んだ神像を、ちょっとずつ配置しておいてくれ。マスタング、ボルボ、ビートル。向こうから物理的にも攻めてくるぞ。備えておくんだ」


「分かったぜ、ジーンさん!」


「帰ってきたばかりでこの騒ぎとは、少々堪えるのう」


「私はゴーレムを展開しておきましょう」


「まさかサニーの神像が役立つなんてねえ」


「ううっ、失敗した印をわざと刻むのは辛かったです」


 冒険者たちが、口々に返答する。

 この場は彼らに任せ、私はワイルドエルフへ、直接言葉を伝えに行くのだ。

 それと、岩窟……あの寺院で、何が起ころうとしているのかを見ておかねばな。

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