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神様の端末としてのんびりまったり縁を結びます  作者: 愚true
第2章 幼少期編
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(66)  試しあい

(66)   



「おい、ジジイっ! これだけしっかりと検分しておきながら『やっぱ断る』って、そりゃねぇんじゃねえのか!!」


ヴァルトが反応するより先に、断りを入れてきたアルベルトに向けてそう声を荒げたのはディカルトであった。

そのディカルトの言葉にゆっくりと頭を上げたアルベルトだったが、その目はすでに座った状態になってしまっており、「ああん?」とケンカになりそうな空気を纏いだしている。


「ここまで……」


「はい、ディカルト、そこまで」


頭に血が上ってしまっているのか、そんな状態のアルベルトに対してさらに声を荒げて言葉を重ねようとしたディカルトに対し、彼がカッとなってくれたことで逆に冷静さを失わなかったヴァルトは、彼の脇腹を手のひらでかるく

叩いて抑えつける。そしてすぐさまアルベルトに向き直り、


「連れが失礼いたしました」


と、頭を下げてみせる。それにより、売り言葉に買い言葉で何か言おうと仕掛けていたアルベルトが、口を開けはしたもののヴァルトが頭をサッと下げたことでタイミングを逃したらしく、開けた口をもごもごさせただけで落ち着いてくれた。

 そのまま2、3秒ほど間を置いてから、ヴァルトはなるべく落ち着いた声となるように意識しながら、アルベルトへと声をかける。


「ですが、ディカルトの……連れが思わず叫んでしまったのもわかります。

 できれば、なぜ断られてしまったのか、理由を教えていただいてもかまいませんか?」


そう尋ねて、もう一度ぺこりと頭を下げる。後ろでディカルトが眉をひそめた気配が感じられたが、それ以上にアルベルトが「むぅ……」とつぶやく程度には、少し落ち着いてくれた様子であることの方がヴァルトにとっては大事であった。


「……理由か。理由はじゃな…………」


ヴァルトが下げていた頭を上げると、視線が合ったアルベルトが少し言いづらそうにしてから、その理由を口にする。

アルベルトがヴァルトの依頼を断った、その理由とは、



「その……作っててもあんまり面白味がなさそうじゃなー、面倒くさそうじゃなー、と思ってしまったから、というだけなのでのぅ……」



という、そりゃ無いだろ、と言いたくなるような、あまりにもあんまりな理由からであった。




          *   *   *



「「「「…………」」」」



あんまりにも「それは無いだろ、おい」と言ってしまいたくなるような、そんなアルベルトがヴァルトの依頼を断った理由を聞かされたことで、思わずその場の全員が黙り込んでしまう。

アルベルト自身もさすがにその理由で断る、それも紹介されてやってきた相手に対してのことであることにそれなりの罪悪感というか居たたまれなさを感じているのか、自分のテリトリーであるはずなのに、居心地悪さを感じてしまっているようだった。

けれど、そんなアルベルトに対して、ディカルトだけでなくヴァルトも、それどころか先ほどまで暇そうにしながらも様子を見ていたティアナまでもが程度の差はあれジト目で見てしまうことになったのは仕方がないことだろう。


「や、ワシも悪いとは思うんじゃよ?

 けどのぅ、この歳にもなるとの、残された時間ってのがある程度見えてきちまうもんじゃ。そうなるとな、やる仕事にしてみても面白そうじゃと思うか、よほど難易度が高ぅて精魂かけて打ち込めるような仕事に、ワシの残りの時間を費やしてしまいたくなるものなのじゃ。

 ……おぬしらが持ってきたものは、こう、ワシにとっちゃあ簡単に作れそうなものばかりじゃ。他のことの片手間にやったとしても、そりゃあ対して負担にもなりそうにないわい。けどの、”簡単”じゃからこそ、面白味が感じられなくての……それゆえに、断る、という結論になってしまったのじゃよ」


 そう語られた上で「すまんの」と頭を下げられてしまうと、怒気を流されてしまったらしい。あれほど怒りを示していたディカルトが苦虫を噛み潰したような顔をして黙り込んでしまう。とはいえ、ここで押し下がってしまうわけにもいかない。他の工房に、という手がないわけではないが、せっかくの商業ギルド長からの紹介できたのだ。あの商業ギルド長との縁を活かせるようにするためにも、ここはこの人物との関係をきちんとつないでおくほうが良いはずである。それになにより、ヴァルト自身がここですごすごと引くのは面白くないと感じていた。


「……なにか、面白い物か難易度が高いものを掲示することができれば、先ほどの品々の製作を受けていただくことは可能ですか?」


 目を閉じて少し考え込んだ後、ヴァルトがジッとアルベルトの眼を見つめてそう問いかけると、アルベルトは数秒のあいだ思案してから小さく頷いた。


「……そうじゃな、なにかワシが興味を惹かれるものを掲示してもらうことができるのなら、ワシが受けてやってよいじゃろう。

 されどな、ワシは古今の大半の物は見聞きし、試作程度はしておる。難易度は高いと思うぞぃ?」


「それでも良いのじゃな?」と改めて問われたが、ヴァルトは大きく頷いた。


「よかろう、ならばワシからはひとつ条件をつけさせてもらうぞ。ワシは見ての通りの職人じゃ。

 鍛造、鋳造、木工、金細工、鍛金、革細工、仕上げ、それらたいていの加工は長年の作業の結果、十分に行えると言えるだけの自負を持っておる。されど学が無くての。魔法に関してはからっきしじゃ。

 よって、ワシに示す物は、機構を凝らしたモノであってもかまわんが、魔法などで動くなどという無粋な構造の物であるのならば、それは認めぬぞ。

 じゃが、それらを踏まえた上でワシが納得できるものを見せてくれたならば、ワシも男じゃ、しっかりと請け負ってみせてやろうではないか」


「わかりました。ですがひとつ、こちらもお願いを加えさせていただいてもよろしいでしょうか?」


「ふむ、まずは言ってみぃ」


「あなたがどれほどの技量なのかを念のために確認したいので、奥の工房を見せていただきたい。作品ではなく工房を、です」


ヴァルトのその言葉に、アルベルトがピクリと眉を動かした。


「……ワシの技量を測るのに、ワシの作品を、ではなく……工房を、なのじゃな?」


少し声のトーンが落ちたアルベルトが、強くにらむような視線でそう問いかけてくる。そんなアルベルトに、ヴァルトは頷いてみせた。


「ええ。職人の技術は『これが自分の作品です』と出して来られるものを見るよりも、普段作業している工房を見せていただくほうが確実に測れますから」


ヴァルトが眼を逸らさずにそう答えると、アルベルトは「くくくっ」と押し殺せなかった笑いを漏らした後、「がっはっはっはっはっ!」と爆笑する。


「坊主、おぬし職人というものの測り方をその歳でよくわかっとるのぅ!

 ほとんどの商人はできあがりの品しか見ようとせんが、ほんに職人の腕を見ようと思えば、そいつが普段からどういう仕事っぷりをしとるかを見たほうが一目瞭然っちゅうものじゃろうな。

 良いじゃろう、普段なら他人に作業場なぞ見せんがノーウェイルの紹介でもあることじゃし、気に入った!! じっくりと見てくがええ」


そういうとアルベルトがカウンターの一部を上げて奥へと通れるようにし「ついてこい」とばかりに背を向けて建物の奥へとさっさと入っていく。

ヴァルトはそんなアルベルトの背を追いかけるようにして彼の作業場へ向けて歩き出した。



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