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世界の色は一つでいい  作者: oqutopus
1章 世界の色は一つでいい
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甘い日常とビターな記憶(2)

 

「……寝ちゃったのか」


 勉強道具を片づけた後、ソファーに並んで座ってテレビを観ていると、ふと隣から寝息が聞こえてくることに気づいた。


「んん~……おにいちゃん。うさぎさん食べちゃダメ~……」


 俺の肩に身を預け、口元をモニュモニュさせながら変な寝言をつぶやく桃華。


「はは、どんな寝言だよ。……まったく、寝づらいだろ」


 そんな可愛い妹の姿を見ていると、自然と俺の頬も緩んでしまう。

 俺は桃華を一旦肩からはがし、膝の上に頭をのせさせる。


「……こんなに綺麗なのにな」


 神聖さすら覚える真っ白な髪に手を置き、丁寧に髪をすく。


 ――先天性白皮症。

 遺伝子の突然変異によって、体内の色素であるメラニンの遺伝情報が欠損することで、先天的にメラニンが不足し、髪や皮膚が白く、虹彩が淡い青色や灰色になる遺伝性疾患で、一般的にアルビノと呼ばれる。動物の場合、劣性遺伝であるため野生では不利に働くことが多く、ほとんどの場合群れを追われるなどして生き残ることは難しいのだが、ペットショップなどではその希少性や美しさなどから高値で取引される。

 日本人では数万人に一人の割合で発生するらしく、桃華もまたその一人だ。

 神秘的で美しく、無責任なことを言えば、何も持たない俺からすれば、羨ましいとすら思えてしまう。

 ……だが、アルビノはその特異な見た目から歴史的に多くの迫害を受けて来た。

 異形を恐れるのは人の常であり、決して他人事ではない。人間は酷く脆弱で、常に安心を求めている。自分が下になることが怖くて怖くて仕方ない。怖いからこそ故意に下を作り出し、安心を得ようとする。周りと違う存在をはじき出し、集団でもって貶める。薄汚い人間の本性だ。

 っ……まったく、本当に腹が立つ。

 知らず、自分の顔が強張っているのが分かった。姿見に映る自分の顔を見て、はっとして呼吸を整える。

 鬱陶しい思考をかき消すように、スヤスヤと気持ちよさそうに眠る桃華の髪を優しく指で梳いた。


 一旦、桃華を起こして歯磨きを済ませ、俺もまた寝る準備を整える。

 妹である桃華も今年で十四歳。過保護だという自覚はあるが、それでもやめられないのはお兄ちゃんだからだろう。

 自室のベッドの上。目を閉じて少しすると、意識が遠のいていく。

 先程までいらんことを考えていたからだろうか。

 最後に頭をよぎったのは――――


 大嫌いな記憶だった。


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