悲しみを抱えて(3)
「失礼しました」
「ああ。……これで面談も終わりだ。私も職員室に戻るとしよう」
ガラリと教室のドアが開いて、中からメメちゃんと、それから少し遅れて安桜先生が出て来た。
「あ、来た来たメメちゃん。お疲れさま~」
「! 菜月さん」
軽い調子で歩み寄ってきた私に、驚いた様子のメメちゃん。
「杉原。待っていたのか?」
「もっちろん! メメちゃんはもう実質私の恋人みたいなものだから! だからいつだって傍にいようとするのは当然でしょ?」
言うと、困惑するメメちゃんの隣で先生は、
「君はなかなか束縛系だな。天ノ目、君はこれから苦労するだろう」
私の冗談に乗って、軽口を返してくれた。
「ひっどいよ先生! 私はそんなにエッチじゃないもん!」
「……君は束縛系を何のことだと思っているんだ。意味が違う上にその想像をしている時点で、君はエッチだ」
先生のその言葉を聞いた瞬間、私は思わずニンマリと頬が緩んでしまった。そして、待ってる間に考えた『美人でクールなお姉さんを困らせる作戦、略してプロジェクトH』を決行した。
「ふふ、ならこの意味が通じた先生もエッチだよね? 私はオープンにスケベだけど、先生はムッツリスケベかな?」
言った瞬間、先生は目を見開いて、
「っ……本当に、君は策士だな」
呆れたような頭を抱えるような、困ったような顔で言った。
ちょっと期待してたのとは違う反応だけど、これはこれで悪くないどころかすっごいイイ! 何がとは言わないけど、すっごいイイ! ……ほら、もう薫ちゃんいないから、好き勝手やっちゃうんだよね。
「あの、」
そんな私と先生のやりとりに一人取り残されていたメメちゃんが、キョトンとした顔で言った。
「先ほどから、一体何の話を――」
そんなメメちゃんに私と先生はパッ意識を切り替えて、
「さ、仕事に戻らねば。二人とも、……無理せずにな」
そう言っていつもよりちょっと早足で去って行く先生にニマニマしつつ、私はメメちゃんに向き直る。
冗談で濁した私の本音は、きっと二人にも届いている。
だから、
『寂しいから、一緒にいてよ。一人じゃもう、耐えられないよ』
そんな弱音を笑顔で隠して、代わりにそっと手を差し出すと、
「さあ一緒に、デート行こうよ!」
いつかその目が見えなくなっても、きっと私が隣で、その手を引くから――……
うんざりするくらい、一緒にいてよ。




