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流星の声  作者: 遠藤 敦子
流星の声 Ⅰ
1/5

1

「あなたには2つ上のお姉ちゃんがいたんだけど、生まれる前にお母さんのお腹の中で亡くなってしまったの」

 西脇(にしわき)慧太(けいた)は小学校1年生の時、母親の真実子(まみこ)からこう告げられた。それから毎年秋になるたび、真実子が

「あの子にも梨を食べさせてあげたかった」

 と常に言っていたことを慧太は思い出す。「あの子」とは真実子が死産した慧太の2歳年上の姉のことだ。娘に梨を食べさせてあげることは、真実子のたっての夢だった。



 慧太は大学を卒業し、新卒時に入社した会社で5年間働いている。入社時の教育係で慧太と3年交際している恋人の沢田(さわだ)日菜乃(ひなの)は、慧太より2歳年上の29歳だ。偶然にも、日菜乃は真実子が死産した慧太の姉と同い年だった。

 慧太は日菜乃を婚約者として両親へ紹介するため、日菜乃と実家に向かう。実家では真実子と慧太の父親である洋一(よういち)、慧太の祖母であるキヌエ、西脇家の飼い猫である三毛猫のソラが待っていた。慧太が日菜乃を家族に紹介すると、家族全員が日菜乃を気に入ったのだ。特に真実子は娘ができたように喜んでいて、日菜乃に梨を振る舞った。真実子が娘に梨を食べさせたいと言っていたことを慧太は覚えていたので、母さんはずっとこうしたかったのだなと考える。

 慧太と洋一と真実子は車で日菜乃を駅まで送り届ける。日菜乃は車から降りる際に

「西脇さん、本日は私と慧太さんの結婚を認めてくださりありがとうございました。これからも末永くよろしくお願いします」

 と言って頭を下げる。慧太たちはそんな日菜乃を車内で見送った。


「日菜乃さんすっごく良い人だったわあ。慧太にはもったいないくらいの人ね。これで私がずっと抱えてた願いが叶ったって思うと嬉しかった」

 駅から実家に戻る車内で真実子は口に出す。洋一は

「母さんそれずっと前から言ってたもんな」

 と微笑む。慧太も真実子の願いが叶って自分のことのように嬉しく思った。

 それから半年後に慧太と日菜乃は入籍する。入籍してから夫婦で慧太の実家に遊びに行った際、相変わらず真実子は2人に梨を振る舞ってくれたのだ。

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