防壁 5
目が覚めてから2日経って、僕は無事に退院する事が出来た。
退院時には葵とレイスが迎えに来てくれた。病院を出た後は、そのまま彼らが宿泊している宿の部屋に向かった。
宿は教会の近くにあった。
建物は三階建てで、部屋は三階の端にある。
「マイナの病院て、ここから近い?」
着いてすぐに僕が聞く。
マイナに会いたい気持ちが先行してしまった。
3人のうち、僕だけがマイナの様子を知らない。
ひと目だけでも会いたかった。
「近いですよ。ここから五分くらいで」
レイスが答える。
表情が少し驚いていた。
「もう大丈夫なんですか?」
「直ぐにでも旅に行けるよ」
「今日は休まなきゃだめだよ」
葵が割り込む。
そうだな、と僕は応じた。
彼女にもレイスにも心配をかけてしまった。
大事をとって休んで欲しいというのが、二人の心情だろう。
これからの長旅を考えれば、当然休むべきであろう。
「心配かけた。ごめん、ありがとう」
今まで見舞いに来てくれた事も含めて、一言礼を言っておきたかった。
僕が寝ていた時、病室でずっと添ってくれた。
その時間は不安で、辛かったはずだ。
僕は彼らに、その事を感謝したい。
かけがえない旅仲間だという事を、この件を持って強く実感した。
レイスはいえいえ、と言ったあと
「回復してくれて良かったです」
それから笑顔になった。
兄貴だなと、その姿を見て思った。
それから、レイスは夕飯の食材を買いに市場に向かった。
部屋には、僕と葵の二人になった。
「葵、ありがとな。」
面と向かって葵に礼を述べる。
彼女にしっかりと礼を言ったのは、本当に久しぶりだった。
彼女はううん、とだけ言った。
「ねえ、雄貴」
少し沈黙したあと、葵は言った。
「この旅、続けなきゃ駄目かな?」
部屋の空気が一瞬凍りついた。
「本気で言ってる?」
「本気だよ」
「もう続けられないよ...」
その表情は、自信を失った事がひと目でわかるほど暗かった。
というか、泣きそうな顔だった。
葵、と彼女に優しく呼びかける。
それから、僕の荷物の鞄から封筒を取り出す。
「マイナからの手紙。俺は読んでないけど、こういう時に渡して欲しいって」
「俺、席外すよ。確かに色々あり過ぎて辞めたくなるけどな...。でも、そこに書いてあるのは多分マイナの意思だと思う。それを考えた上で決めて欲しい」
この旅が命の危険が付き纏うものである以上、弱気なままで葵が旅をするのは危険すぎる。
ゆっくり考えて欲しいと思った。
彼女に時間を作るために、僕は久々に街を歩きに部屋を出た。




