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鉄道英雄伝説 ―鉄オタの異世界鉄道発展記―  作者: 葉山宗次郎
第三部第四章 私鉄

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神殿参拝

 祭り。

 それはハレの日。

 非日常的な時間であり、多くの人が楽しみにする時間だろう。娯楽の少ない状況では特に。


「酷い状況だな」


 昭弥達は大祭が行われているリグニア郊外のユピテル大神殿を訪れた。

 リグニアの中心部にもあるが主神であるため参拝客が多かった。しかも帝国が拡大すると帝国各地から人々が訪れるため、やって来る大勢の参拝客を捌けなくなってしまった。

 そこで郊外に新たに建設し受け入れる事になった。

 以来数百年、他の神々の神殿も設けられ信仰の場となっている。

 その数十二神。

 神々ごとに一月交代で大祭が行われ、月に一度は神殿周辺に露天が並び縁日のような場となる。

 だが、今年の大祭は違った。

 普段以上に人が多く集まり足の踏み場も無いほど集まっていた。


「いつもはもっと少ないはずですが」


「鉄道のせいだな」


 鉄道開業によって近隣の町からも短時間でやってこられるようになり大勢の人が集まる様になってしまった。

 しかも短時間で移動出来るので気軽に訪れてしまう。

 むしろ新たに発明された電気の光をこの機会に見ようとする客さえいる。

 そのためユピテル大神殿は多くの人々が集まり、大混雑していた。


「鉄道会社が三社も集まっているとこうなるか」


 リグニア近郊の鉄道会社三社が近くに路線を持っており大混雑していた。

 キチンと動線管理をしていれば、問題無いのだろうが、各社は乗客を降ろすだけ。その後の誘導など行わないので駅から下りて来る乗客同士がぶつかり、混雑、混乱に拍車を掛けている。


「稼ぎ時だからと増発しているな」


 しかも参拝客を目当てに列車を増発。大勢の参拝客を下ろしている。

 更に鉄道会社の電気事業により街の各所に電灯が立ち並び街路を明るくしていた。

 これまでなら昏くなれば祭りは終了だったが、電灯の普及により街が明るくなったために日が暮れても人々は神殿周辺から離れる気配が無い。

 寧ろライトアップされた街や神殿を見るために留まるほどだ。

 そのため人は日が暮れても減らず混雑はより酷くなっている。

しかも神殿に近いのは旧帝都周辺で最大規模のパラティーノ鉄道と最安値のアヴェンティーノ鉄道。

 パラティーノ鉄道は路線網を生かして、広域から人々を集めている。

 アヴェンティーノ鉄道はその格安の値段でリグニアの貧困層、人数においては最大勢力を取り込み、利用客として吐き出している。

 交通費は高いが巡礼などで最多層の貧困層が鉄道に集まるのはインドなどでも事例が多い。安価な交通手段である鉄道のお陰で叶わぬ夢であった巡礼の旅が、高額な旅行程度に収めることが出来るようになった。それが大多数の巡礼者を生み出し神殿に集まる理由だった。

 人の数が減る様子が全くないのも当然だった。


「本数の規制とかしないと不味いですね」


「一応やらせてはいるが、無理だろうな」


 神殿周りの人々が帰ろうとしないのが最大の原因だ。

 いくら鉄道省でも理由無く一般人に帰れと命令する訳にはいかない。

 人が多すぎるからと言っても納得してくれないだろう。下手をすれば一般人の権利を奪ったなどと言われかねない。

 同時に昭弥は人の流れに違和感を感じていた。


「何より人の流れがおかしい。パラティーノ鉄道とアヴェンティーノ鉄道以外でも人が流れてきているようだ」


「まさか……我々の国鉄ですか?」


「いや、方向が違う。神殿の裏手だ」


 人がやって来る方向を観察していた昭弥は、人々がやって来るのが神殿の裏手であることを見抜き、頭の中で地図と照合する。


「たしかエスクイリーノ鉄道の路線があったはずだ」


 近隣の農村とリグニアを結び貨物輸送がメインの私鉄だ。

 神殿に最も近い線路を持っているが裏手にあり、主に神殿への貢ぎ物の輸送や周辺の飲食街へ食料を供給するための貨物駅のみ。それも少し離れているハズだ。

 こんなにも人を下ろせるとは思えない。


「一寸見てくる」


そう言って昭弥は人混みを掻き分けるように神殿の裏手に向かった。

 すると聞き慣れたガソリンエンジンの音が聞こえる。

 エスクイリーノ鉄道は貨物メインで旅客は殆どしていない。貨物列車の後ろに申し訳程度に客車を付けるだけだ。

 貨物列車優先で主力は大出力蒸気機関車と貨車、少数の客車。旅客用のガソリンカーなど保有していないはず。

 それにガソリンカーで止まるような場所は無かったはず。

 なのに停車するようなガソリンエンジンのアイドリング音と減速するように小さくなる車輪の音が昭弥の耳に入ってくる。


「まさか」


 昭弥は更に足を進めて見たのは停車するガソリンカーだった。

 貨物駅に入る前の丁度神殿群の裏手にある信号所に止まっている。

 ここは鉄道省に提出された図面にもキチンと載っている。

 だが、旅客駅の申請もないし工事など行っていなかった。

 ではどうやって客を降ろしているかというと簡易乗降器だった。

 学校の朝礼台のような金属の台、乗降扉の幅ぐらいの大きさしかない台が線路脇に置いてあってガソリンカーが扉に合わせて停車する。その台を使って乗客を降ろしているのだ。

 かつて北海道の地方線では沿線の利便性を高めるために似たような簡単な乗降場所を作って停車していた。

 だが利用するのはほんの数人だけ。今エスクイリーノ鉄道が行っている様な百人単位の人間を乗降させるための施設では無い。

 にも関わらず、エスクイリーノ鉄道は何台ものガソリンカーを停車させて乗客を吐き出している。

 貨物輸送だけでは現金収入が無いからと旅客にも手を出したのだろう。

 しかし元々貨物輸送で旅客用の車両も少ないし、駅舎やホームなどない。

 建設しようにも大祭に間に合わないと判断して大急ぎでガソリンカーをどっかから借りるか購入し、簡易乗降器を設置して臨時駅にしたのだろう。

 神殿の裏手とはいえ一番近いため利用客は多い。

 だが安全性に問題があり認められない。


「不味いなこのままだと事故を起こすな」


 昭弥は口元を歪めるとセバスチャンに言った。

 明石の歩道橋事故のような悲劇は避けなければならない。


「エスクリーノ鉄道に簡易駅の使用禁止命令と乗車禁止を命令してくれ。あと鉄道公安部に人を出して誘導するよう指示を。それと神殿にも連絡して参拝客の誘導を」


 そこまで言ったとき、突然電灯の光が消えて辺りは闇に沈んだ。

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