笑って誤魔化すのも必要です。
珍しくレオフォード様がどうしても外せない用事があり、レフィーナ様と一緒に二人で午後のお茶を頂いている時のこと。
「カミーユ・レイラ・マイセン?」
「そうよ。それがあなたのこの国での名前。」
思いっきり日本人顔なんですけど、欧米風の名前なんですね。
マイセンというのは先代の王様の弟さんが王位継承権を放棄し、臣下に下るときに与えられた家名ではなかったでしょうか?
日ごろ眠気を我慢して歴史を聞き流している成果でしょうか。マイセンという家名をうろ覚えではありますが、聞いた覚えがあります。現マイセン公爵は現国王の従兄弟にあたる筈です。
レイラという名も確かこの世界を神様がお造りになる時に、お手伝いをした光と豊穣を司る女神様の名前だった気がします。そこから頂いたのでしょうか。
レフィーナ様が説明して下さった話を要約すると、王女付きになるにはそれなりの身分が必要らしいのです。貴族はその一族以外同じ家名を持たないので、もし誰かに名前を聞かれた際に家名込みで自分の名前を名乗ると身分証明にもなるらしいです。免許証がいらないなんて便利ですね。
ちなみに王族は国名=家名だそうです。
「カミーユはもとの名前から。レイラはこの前に神殿で頂いた洗礼名ね。」
片岡美優のカタオとカミユで区切って取ったのですね。切るところが日本にはない斬新さです。
それはさて置き。はて?私はいつ洗礼名を頂いたのでしょうか。
先日王女の付き添いで神殿に御祈りをしている時、ついウトウトしてしまい、神官の方に目覚めの水をコップ一杯ほど頭から掛けられた覚えしかありませんが。結構ボトボトに濡れて、近くにいた神官見習いの方にタオルをお借りした記憶があります。
居眠りに対する無言の注意だと思って少しだけ反省していたんですけど、ひょっとしてアレが洗礼の儀式だったんでしょうか?
「それからあなたの身分を確かなものにするにはどこかの貴族の養女になるのが一番早いと思って、あなたを養女にしてもらえる貴族をあたっていたの。そしたらたまたま城内のバラ園であなたを見かけたマイセン公爵が、事情を聞いて名乗りをあげてくださったのよ。」
バラ園と言えば、よく仕事の合間に休憩している憩いの場ではありませんか。
サボっている訳ではありませんよ。休憩です。休憩。でも人に見られてるなんて気づきませんでした。何処で誰に見られているかわからないものですね。あそこはバラでなかなか見つからないと思っていたのですが、次からはもっと見つかりにくいサボり場…じゃなくて休憩場所を探しましょう。
取りあえずバラ園での休憩も神殿での居眠りもバレてないようです。余計なことを言うと自分で自分の首を締めそうです。
そういうときは
「ありがとうございます。」
ニッコリと笑って誤魔化すに限ります。