第17話:屋根裏の「次元のシミ」
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第17話は、離宮のメンテナンス編。フェイトが挑むのは、まさかの「屋根裏掃除」です。
しかし、彼が「次元のシミ」と呼ぶそれは、世界を滅ぼしかねない最凶の魔物でした。
伝説の厄災すら「頑固な汚れ」として雑巾がけしてしまう、フェイトの容赦ない清掃テクニックをお楽しみください!
特使たちが這々の体で逃げ帰り、再び静寂を取り戻した離宮。
フェイトは脚立(深淵の魔木の枝から削り出したもの)を抱え、普段は誰も立ち入らない屋根裏部屋へと向かっていた。
「……フェイト様。屋根裏に何か気になることでもあるのですか?」
「ああ。さっき洗濯機を回した時、少しだけ振動が響いてな。どうも屋根裏の『次元』が緩んで、湿気が溜まってるみたいなんだ」
フェイトが扉を開けると、そこには星空のような虚無が広がっていた。
普通の人間が足を踏み入れれば、存在そのものがバラバラになり、時空の彼方へ消し飛ぶような危険地帯。だが、フェイトにはそれが「換気の悪い物置」にしか見えていない。
「うわ……やっぱり。見てくれよエルシア、あそこに『次元のシミ』ができてる」
フェイトが指さした先では、空間がどろりと黒く溶け、そこから異世界の魔物――『時空喰らい(タイム・イーター)』が這い出そうとしていた。
世界を丸ごと一つ飲み干すと言われる伝説の厄災だ。
「フェ、フェイト様! あれはシミなんてレベルじゃありません! 早く封印の儀式を……!」
「そんな面倒なことしなくても、拭けば取れるだろ」
フェイトは腰にぶら下げたバケツから、聖女の祈りを100年分凝縮したような特製洗剤を染み込ませた雑巾を取り出した。
そして、這い出してきた魔物の顔面を、迷いなくギュッギュッと力任せに拭き始める。
『ギ、ギギィ!?(なんだこの洗浄力は!? 俺の存在概念が……溶ける!?)』
世界を食らう怪物が、ただの「頑固な油汚れ」のように分解されていく。
フェイトが雑巾をひと拭きするたびに、黒い霧は消え去り、そこには新品のクリスタルのように透き通った「純粋な空間」が戻ってきた。
「よし、落ちたな。……おっと、この残ったカスは『時空の砂時計』の材料になりそうだな。エルシア、ビンを持ってきてくれ」
「……。はい、ただいま。もう、驚くエネルギーを『回収』に回すことにしました……」
エルシアは手慣れた手つきで、かつて世界の終わりを予兆したとされる魔物の残骸を、台所の調味料入れのような小瓶に詰めていく。
「ふぅ。これで風通しも良くなった。やっぱり定期的に掃除しないと、家が傷むからな」
フェイトは満足げに、次元の隙間から差し込む「概念的な日光」を浴びて背筋を伸ばした。
その頃、地上では、逃げ帰った特使たちが持ち帰った『消臭剤』のあまりの神々しさに、王都全体がパニックに陥っていた。
第17話をお読みいただきありがとうございました!
世界を喰らう『時空喰らい』が、特製洗剤でキュッキュと磨かれて消滅する……。
もはやエルシアも、驚くよりも先に「素材の回収」を優先するほど訓練されてしまいました。
フェイトにとってはただの家事ですが、その余波で世界は今日も救われています。
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