蛇足 ???side 後編
次に気づいたときには、なんの因果か数百年後の同じ世界、同じ国、同じ場所に、王子として生まれ落ちていました。
当時から既に何かの運命だとうっすら感じていました。それが何かまだは分かりませんでしたが。
記憶のあった僕は一人で自由行動が出来るようになってすぐ、死んだ後の事を調べました。
そして絶望した。
二人が結ばれること無く終わったということに。
アルキオネを守るためにリレインユールは死に、それを嘆き悲しんだアルキオネも数十年後の大陸の訪問で自爆した。
こんな救いのない話ってあるでしょうか。
作戦を失敗しなければ物語は変わっていたかもしれません。誰も傷つかず、悲惨な結末とはかけ離れた物語になっていたかもしれません。統治者に向かないと思い知ったのはこの時。なのに自分が王族の、しかも第一王子であることを深く嘆きました。
きっとまた失敗するのですから。
怖くて怖くて逃げ出したかった。
そんな中、アルキオネと同じ黒髪に赤い目の第二王子から前世のうち明け話をされて救われたと思った。
彼以上に統治に向いているものはいないのです。なにせ自分一人だけ残った状態から国を守ったお方ですから。
同時に安堵しました。
僕は僕の犯した間違いを、償うチャンスが与えられたのだと。
自己中心的な考えで心底最低ですよね。
だから人生をかけて贖罪しようと誓いました。彼がリンの生まれ変わりを探すなら地の果てまでも手足となり動こう。
そのためには王子という地位が邪魔でしかありません。
必要がないなら壊して作ればいいのです。
そして真面目な第一王子のフィータネのイメージを壊した。代わりに作ったのは、ちゃらんぽらんな何処にでもいそうな人。
あちこち探してやっと見つけたのは何故か魔法を練習するリンの生まれ変わり。
彼女を見間違えるはずありませんからリンの生まれ変わりなのは確実です。
有名な剣士として名を残したのに、魔術の名門に生まれるなんて運命とは不思議なものですね。
密偵活動、兼リーンの観察をしていて驚いたのは、魔法使いを目指していたこと。そこで彼女に前世の記憶がないことを疑いました。
生まれ変わりでも記憶があるとは限りませんから。
ですが、彼女の家族との会話の中で、明確な意志をもって「剣ではダメだ、守れない」と。
記憶はあるのでしょう。
あるからこそ剣をあんなに楽しそうに振るっていた彼女がそんなことを言うなんて、とても悲しくなりました。
それから自分では守れなかったと後悔する姿にも。
全部僕のせいなのに。
彼女がアルファイドと一年違いで学校に入ることも調査して分かりました。
僕はさりげなくアルファイドが剣科の生徒として再入学するように誘導しました。
あっ、ペアになったのまでは流石に僕の仕業ではありませんよ。
そのうち、彼女がリンの生まれ変わりだと、確信はないもののアルファイドも気づき始めました。
僕は主人としてアルキオネ様を慕っています。そして、たった一人の弟子として同じくらいリンを慕っています。
両方ともが幸せになる道を選んでもらいたい。
だからこそ「彼女に前世の記憶がなくてもいいのか」質問したり、他にも色々と試すようなことをしました。
それで、やっぱり二人には結ばれて欲しいと思いました。
前世を互いに知ってもリンが心を開かない。
「自分のせいでアルキオネ様を一人にした」と責めていて、剣では守れなかったと責めていて。
どうしてもいたたまれなくて。
傍観すると決めていたのに気がついたら転移魔法で宝物庫まで行き、リンの遺物である白銀の双剣の片割れをリーンに投げていました。
これはきっと善き強心剤になってくれる、と。
剣を扱う姿は前世の彼女そのもの。
だけど、彼女の欠点として特定の条件が揃うと自分を犠牲にするほど必死になる性質があります。
それは戦うことと、アルキオネが関わること。
痛みを止める為に猛毒を使うなんて……。
解毒の魔法を覚えておいて良かったです。
使える最高レベルは6。魔法はそこまで高レベルを使えないので、しばらく寝込むことにはなりそうですが。
彼らのために役に立ちそうな術は魔法に限らず全て覚えました。
勿論、禁術も……。
「まったく、何も変わってないっすね。あなたは昔から自分を犠牲にしてしまう」
魔法を使う瞬間心のなかで呟きました。
もしかすると声に出てしまっていたかもしれませんがバレてなさそうなので問題ありません。
もう、大丈夫でしょう。
ここまで来たらきっと悲願は叶うはず。
彼らに前世を伝えるつもりはありません。
この世界に彼らが存在し、幸せになったならもう満足です。
その側にいられることが僕の幸せそのものですから。




