序章
薄暗い...無月の闇夜を..
一人の少年が駆けている。
晩夏の乾いた風を切り、
尋常ではない身のこなしで建物の間を走り抜けていく。
その際に隠れていた月が見え少年の姿を照らし出す
少年は茶色いコートと帽子に白い手袋を着ていて、例えるならまるで探偵のような格好をしている。
(着信音)
その折に少年の携帯が鳴った。
「もしもしっ、 遅せぇぞ、光、犯人に逃げられちまう」
「心配すんな、すぐそこだ。」
「...先行ってっからな」
(携帯を切る音)
しばらくして少年は一つの建物の前に着く、その建物は一目でそれとわかるほど 朽ち果てていて、薄気味悪い。年季が入っているというより、ただ古臭く汚濁している。
扉には錆びついた鉄格子がはまっていたが、少年は躊躇なくそれを蹴り抜いた。
金属がひしゃげる音とともに、少年は暗がりのなかへと踏み込む。
(パキリッと何かを踏む音)
床一面には瓦礫やガラスの破片が散乱し、室内には明かり一つなく、
むせ返るような埃の匂いが充満していた。
「(咳)....なかなか素敵な場所だな」
そう呟きながら少年は更に奥へと進んで行く
すると前から足音が聞こえ、徐々に明かりも見えてきた。
物陰に隠れその方を見ると男が明かりを持って巡回しているのだとわかった
(見張りって、とこか)
少年は静かに目を閉じ、再び開く。すると少年の瞳の中が、熱が浮かび上がった
ように赤みを帯びた。そして少年はもう一度男の方を覗く
(周りにあいつ以外の人間はいない...右肩に熱が集まってる、奴は右肩を痛めてる、最初の一撃は右肩だ)
一方、男は狙われているなどとつゆ知らず、手元の腕時計を覗き込んでいる。
「いい時計だな。」
「...っ、おぁっ!!?」
男が声を上げきるよりも早く、少年の連撃が爆ぜた。宣言通り、まず右肩へ痛烈な一撃。次いで喉を潰し、みぞおちへ鋭い蹴りを叩き込む。最後に前のめりに崩れる顎を下から砕き上げると、男は声も出せず、ショックで床に沈んだ。
少年は倒れた男から、明かりと時計を無造作に取る。
「――俺の番だ」
秒針の刻む音を耳にしながら、少年は冷ややかにそう呟いた。
奥へ進むと建物の地下に続くと思われる階段があった、
足音を殺して急ぎ駆け下りると奥から明かりが見えてくる
地下に降り立つと、そこは中央が大きな吹き抜けになった構造をしていた。左の方にはさらに下へと続く、一回り大きな階段がある。どうやら、もう一つ下の階層が存在するようだ。
吹き抜けから階下を覗き込んで見ると。そこには十数人の男たちが銃を手に徘徊していた。
その中で一人、異質な存在が目を引く。体全体を隠すように黒い外套を羽織った 人物だ、顔が見えず。銃を所持しているのかもわからない、
もしくはその必要が無いのか。
すると何やら一人の男が外套を着た人物と話し始めた
(……流石にこの距離じゃ、何を言ってるのかまでは聞こえないな)
端の方には人質と思わしき女性が一人、目隠しをはめられ、手足を縛られて倒れている
(人質一人にしちゃぁ、人数多くねーか?。もっと見張りの人に構ってやれよ...)
そんな事を考えていると、背後から嫌な気配を感じた。少年は視線を動かさず、 先ほど身につけた腕時計を鏡代わりに覗くと鈍器を持った男が写った。
不意打ちを狙っているのか、ゆっくりとこちらに近づいてきている
(...まあ、よくよく考えりゃこの階にも見張りはいて当然か、急いでいたとは いえ少し迂闊だったな)
自嘲するようにそう考えるとやがて男がすぐ後ろにまで迫る、拳に力を入れ倒そうと振り返る。すると、男の背後から、もう一つの影が音もなく躍り出た。濃い青い瞳を冷たく光らせた青年が、淀みのない動きで男の首を絞め上げる。
「……しっー」
少年も即座に呼応し、男が声を上げる前にその口を力強く封じた。二人で同時にもがく男を抑え込む中、青年が耳元で囁く。
「よう....遅れた...いい時計だな」
(男のもがき声)
「ああ、新調した..今度、押し売り業者にでも売りつけてやるよ...」
男の抵抗が弱まっていく。
「おい...やりすぎだぞ、その歳で人殺しは寝覚めが悪い」
少年がそう言うと男も力尽き沈んだ
「はあ……待たせたな、テュール」
「ふう……あんまり遅いから来ないと思ったぜ、光、外の状況は?」
少年――テュールはどこか嬉しそうに光に尋ねた。
「警察は呼んどいた、外で突入する準備をしてるが...」
「来るのを待ってたら朝になるな」
「違いねぇな」
そう言うと二人は吹き抜けの方に向かい、下を覗く。
「人質は見た限り一人だけだ」
「犯人の中に異能持ちは居そうか?」
「なんとも言えねぇけど、銃であんなに武装してるってことは.........あ?」
「どうした?」
テュールは思わず眉をひそめた、下を見ると先程見た、黒い外套のようなものを着た犯人が影も形も消えている
「いや、さっきまで黒装束の奴がいたんだが...どうやら逃げられちまったみてぇだ、あいつが大本みたいだったんだがな...まあつっててもしゃあねえか、顔は 見てねえが背格好は目に焼き付けてる」
その時、階下の犯人の一人が、凶悪な輝きを放つ刃物を取り出した。それを見て 二人は思わず目を細める
「おっと……悠長に喋ってる場合じゃなさそうだな。」
「だな、人質になにかある前に、全員ぶちのめそう。」
二人は迷いなく吹き抜けから飛び降りると鋭い着地音が無機質な地下室に響いた。二人は向かい合うように背を預け合う位置に降りる、
光が人質がいる側に、テュールがその反対側へと着地する
「ふう、なかなかの着地だったな、80点ってとこか?」
「俺から言わせてみれば、50点ってとこだな」
「低くねえか?」
いきなり降ってきた二人に犯人たちは唖然とするが、一人の犯人が二人を見るなり叫んだ
「...殺せッ、!」
簡潔にして冷徹な、その一言を聞き犯人達はすぐに二人に向かって銃口を向ける
「おっと、手厳しいな」
が、突然、光の手が青く光った
すると次の瞬間、犯人たちが持っていた銃や刃物がすべて光の手に引き寄せられた
「没収だ、物騒なもん持ち歩きやがって」
光は貫禄のある声でそう吐き捨てる
「こいつらに倫理を説いても、無駄でしょうよ」
と言いながらテュールはどこから取り出したのか、光に向かって無造作に黒い袋を投げた。
「だな」
光は空中でそれを受け取ると、武器を詰め込み、手際よく封じた。
「さーてとっ」
そう呟くと光は指を鳴らし、テュールは右手の手袋を外した
「強面のお兄さん方....これからちょっと、熱くなるぜ」
その言葉とともに戦いの火蓋が切られた
先陣を切ったのはテュールだ。目にも止まらぬ踏み込みで間合いを詰め、一人の腹に重い拳をめり込ませる。光もそれに遅れじと、人質周辺を固める犯人たちへ掌を向けた。再度、鮮烈な青い光が奔る。数人の男たちが抗う術もなく一斉に引き寄せられ、宙を舞った。光がそのまま手を振り払うように薙ぐと、彼らは弾丸のような勢いで壁に叩きつけられた。
「相変わらず、便利な能力だな」
光に視線を向け、テュールはそう呟いた。それを隙と考えたのかテュールに向かって別の男が鉄パイプのようなものを持ち、背後から振り下ろしてくる
「危ねえなぁ」
テュールは振り返りもせず、いとも容易く右手でそれを掴み取った。
――刹那。掴んだ箇所から、ジリ……と不穏な煙が立ち昇る。
「熱っっつ!!?」
やがてその棒がまるでかまどで熱したかの如く、急激に熱くなった。男もあまりの熱さに耐えかね棒を放してしまう
「言っただろ?、熱くなるって」
その隙を見逃さずテュールはそのまま流れる動作で踏み込んだ、男の顎、腹、そしてこめかみ――一気呵成の三連撃が、男を仕留めた。
悶絶し沈む男を尻目に一連の攻防を目撃し、テュールが一筋縄ではいかないことを悟ったのか、残党が一斉に襲いかかってくる、それに対しテュールは焦るどころか不敵に笑ってみせた。
まず猛然と駆け寄ってくる一人に対し、足をバネのようにしならせ、片足を軸にした鋭い旋回。鮮やかな足払いで姿勢を崩し、豪快に転倒させる。そして間をおかず襲ってくる三人に対し、テュールは身体全体をねじるように、信じられない早さで鋭い回し蹴りを放つ。
空気が淀むような、速さと力強さを秘めた鋭い一閃が、三人の男たちをまとめて 薙ぎ払った。
傍らでは、光も先ほどと同じ要領で見事な手際を見せていた、気づけば犯人は外套の人物と話していた男だけになっていた
「悪いが、パーティーはもうお開きだ。
俺達も警察のやっかいにはなりたくないんでね。」
「遺言があれば短くまとめな」
二人は突入する準備を済ませているであろう警察を懸念し、犯人にそう催促する
「.......なんだよ、何なんだよっ!てめぇらはッ!!あともう少しって所で...邪魔ぁしやぁがってぇッ!!!!」
男は逆上し、隠し持っていた銃をテュールに向けて狂ったように発砲した。
凄まじい発射音。だが、テュールは微動だにせず。ただ無言で掌を向ける
誰の目にも、弾丸がテュールの手を貫くと思われた。しかし次の瞬間。
掌に触れた弾丸は衝撃を伝える間もなく、まるで飴細工のように溶け、こびりついた。着弾したところからは金属が気化するようなジュッ――と言う音が微かに響いた
「ふんっ、.........」
テュールはつまらなそうに鼻を鳴らした。開いた手を握りしめると、指の間からわずかに黄金色の炎が漏れ出す。再び手を開いたときには、握っていた銃弾が塵一つ残さず消滅していた、
「!?............」
目の前の尋常ならざる光景に、男は言葉を失い、本能が恐怖を覚えた。
指先が小刻みに震え、握っていた銃が手汗で滑りはじめる。男はその恐怖を誤魔化すように奥歯が砕けるほど歯を噛み締め、再度咆哮を上げた
「っっ!!...クソがぁぁぁっっ!!!」
男は怒りと恐怖のままに銃を人質の方へ向け撃とうとする、それを見てテュールは男に向ける視線を鋭く光らせ、右手の人差し指と中指を男に向ける。すると、 テュールの指先から日照りのような熱光が放たれ、男の拳を焼いた
「......っ!ぐっがあぁぁっっ!!!!!」
それを喰らい男は絶叫し、床に銃を落とした
「驚いたか?、シラフだとこんな芸当もできる。」
テュールは冗談混じりに言い放ち悠然と歩み寄る
「最後に何か言い残すことは――」
テュールがその言葉を言い終える前に鈍い衝撃音が響き、男の意識が断たれた。
「――ありません、だろ? 代わりに言っといてやったぞ」
悶絶する男の背後へ音もなく忍び寄っていた光が、手に持った鈍器でその頭部を 強打し、一撃で気絶させた
テュールは右手の手袋を丁寧にはめ直しながら、気絶し倒れ込んだ男を静かに 見下ろす――
最後まで読んでいただきありがとうございます、
はじめまして、Tyrという名前で小説を書いている者です、今回がはじめての執筆ですが、実は小説家になろうにログインしたのは1年ほど前で、1年間ず〜と構想を練っていて、まだ1話しか書けてませんが頭の中では最終話の展開くらいまでいっていて執筆のペースと頭の中のペースが全然釣り合ってなくて不思議な気分です。(テヘッ)文章力はまだまだ初心者ですが、想像力は誰にも負けない気合いです、
頑張って執筆していきたいと思います、応援のほど、よろしくお願いします。




