作戦会議の3人
酒場『森の宴』を出た3人は、そことは別の喫茶店で作戦会議をしていた。ランドクリエイトオンラインでの喫茶店というのは基本的に談話スペースではあるのだが、彼らは律儀に飲み物を購入して座っていた。
「見た目以外の情報がないのは辛いね」
「というかあの店で作戦会議したらよかったんじゃないのか……?」
「出る流れだったから仕方ない」
ロールプレイヤーは場の流れに逆らえないのだった。それぞれの前にある飲み物も、喫茶店に入る以上注文は必要と主張したカマセーヌの奢りである。
ちびりと目の前の飲み物を飲んだフローデは苦虫を噛み潰したような顔になっている。
「うえぇ、おいしくない。飲んでる気もしない」
「無理に飲まなくてもいいぞ」
「……ほんとだ。すごい違和感ある」
ランドクリエイトオンライン内でプレイヤーが食事することはほとんど無い。というのも、ゲーム内で飲食物を口にした場合、口に入った感覚はあるが、喉から下、つまり胃に入る感覚が再現されておらず、食事に満足感が得られないのだ。空腹時にそれをやると余計に腹が空きかねない。加えて、味もぼんやりしていて美味しくない。
これは、味覚の仮想化には難点が多いという点もあるが、ゲーム内で満足感、満腹感を得てしまうことでリアルの食事が疎かになることを危惧した結果である。
ケイディアが飲んだ飲み物も、紅茶のような香りはするのだが、口に入れてもそこで消える感覚は違和感が強すぎる。
脇道にそれた話題を戻そうと思ったところでケイディアはふと気付く。フローデは前にいた町でこのクエストを終わらせているはずだ。
「コデニナでやったときは、どうやってクリアしたんですか?」
「それが……こんなクエストじゃなかったんだよ」
「あぁ、どうりで店を出てから渋い顔してたわけだ」
どうやら間違った合言葉、というより 別の町での合言葉を出したことでクエストが変化したようだ。本来絡まなかったはずの店の奥で酔いつぶれていたオウカは、違う合言葉を出した際の救済措置のようなものだろうと3人は推測する。
「うーん、こういうクエストの定番は聞き込みだよね」
「現状、どこで聞き込みすればいいのかすらわからないですからね。ここらへんじゃそんなに猫見ないらしいですから」
飲み物を注文する際、店員の一人に聞いてみたのだが、結果は空振りだった。
「なんか使えそうな、探索できるスキルとか持ってないのか?」
「とは言っても、俺が持ってるのなんて風魔法と弓だけなんで。先輩は……あ、こういうの聞くのってあんまりよくないんでしたっけ」
「んー、まあ、パーティが何できるかは把握しといたほうがいいしね」
「俺も構わねえぞ」
そう言って3人はギルドカードを取り出し、それぞれのカードを見せ合った。
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キャラネーム:ケイディア
キャラレベル:10
ギルドランク:E
ステータス
筋力:30 技術力:50 体力:30 耐久力:30
敏捷性:38 魔力:30 精神力:42 運:20
習得ジョブ:弓兵Lv.14 風属性魔法士Lv.12
称号:新米冒険者(所得条件:クエストを通算10回クリアする)
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キャラネーム:フローデ
キャラレベル:11
ギルドランク:E
ステータス
筋力:31 技術力:31 体力:31 耐久力:31
敏捷性:31 魔力:58 精神力:47 運:20
習得ジョブ:火属性魔法士Lv.12 水属性魔法士Lv.10 風属性魔法士Lv.10 雷属性魔法士Lv.10 氷属性魔法士Lv.10 光属性魔法士Lv.2 黒魔法士Lv.5
称号:旅人(取得条件:他の街へ移動する)
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キャラネーム:カマセーヌ
キャラレベル:17
ギルドランク:E
ステータス
筋力:43 技術力:43 体力:43 耐久力:43
敏捷性:42 魔力:42 精神力:42 運:42
習得ジョブ:片手剣士Lv.16 両手剣士Lv.6 武闘家Lv.11 投擲手 Lv.10 黒魔法士Lv.12 白魔法士Lv.4 闇属性魔法士Lv.7
称号:負け犬(所得条件:『決闘』で通算10回敗北する)
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「2人とも習得ジョブ多っ!カマセーヌ様レベル高っ!」
「うわー平均上げとか珍しい。ネットじゃ多くても4つくらいまでって言われてるのに」
「いろいろできるってのがこのゲームの醍醐味だと思ってるからな。いろいろできる仕様だ。フローデは万能魔法タイプって感じだな……ジョブ数が俺とタメじゃねえか」
「目指すは全属性魔法士です。ケイ君、ジョブ少なくない?」
「だから何か取りたいって言ってたんですよ」
わいわいと感想を言い合う3人。確認して分かったのは、全員戦闘向きのジョブしか取っていないということだった。
情報共有の後、ギルドカードを眺めながら猫探しの方法を話し合う3人だが、会議はなかなかに難航していた。
「風魔法で猫の声を聴き分けるとか」「探してる黒猫か特定できないかな」「火属性魔法ならサーモグラフィー的な感じで熱探知とかできないのか?」「できなくないけど、それも特定が無理な奴だね」「闇属性って何ができるんですか?」「闇属性魔法はな……」「ちょっとリアルで水分補給してくるね」
時に脱線しながら、あーでもない、こーでもないと話し合いは続くが、なかなかアイデアは出てこない。
もう町中歩き回って聞き込みしかないかと思いはじめた矢先、きっかけはぽつりと呟いたケイディアの一言だった。
「もう猫を探す魔法みたいなのでもあればいいんですけど」
ないものねだりの呟きに、フローデが半ば無意識に反応する。
「うーん『占術』は取ってないなぁ……あ」
「『占術』?」
「あ、それだ!」
フローデの言葉にフローデ自身とカマセーヌが反応し、声を上げた。
「「『占い師』!」」
技術力、精神力振りから敏捷にも振り始めたケイディア、魔法特化にするつもりのフローデ、器用貧乏なカマセーヌ。カマセーヌはかなりやりこんでいますが、負けロールするために一般的な特化には負けるステ振りです。




