↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
地雷パーティになりました。  作者: 滝津原
遺跡のゴブリン退治
PR
33/62

リベンジを誓う@クラリネ

「はぁ、やはり負けてしまいましたか」


 遺跡から出てくる4人のプレイヤーを確認し、クラリネは溜め息をついた。彼女がいるのは木々が生い茂る林の中。気付かれないように遺跡からは十分な距離を取り、双眼鏡を覗き込んでいる。


 彼らがちゃんと2階を探索して来てくれれば、ゴブリン2体くらいは追加できたと思うのですけれど。


 そんなことを思いながら、クラリネは辺りを警戒しながら去っていく彼らを眺めていた。だが、流石に外に罠は仕掛けていない。

 とはいえ、なんとか目論見通り事は運んだようだ。分が悪い賭けだと思ったが、予想以上に上手くいった。ケイディア達が見えなくなってから、クラリネは再び遺跡の中へ入っていく。当然ながら、クラリネが嗾(けしか)けたレッサーオーガ2体は跡形もなく消滅してしまっている。だが、それには気をかける様子もなく、2階への階段を上がっていった。


 道中、発生(ポップ)していたゴブリン2体をもう必要無いとばかりに鞭スキルで叩き倒し、2階の最奥の部屋に到着した。だが、ここには今は何もない。普段は定期的にホブゴブリンが発生する部屋である。


 クラリネは迷うことなくその部屋の窓に足をかけ、外へと飛び出した。そして上を向きながらスキルを発動させる。


「『バンジーウィップ』!……っと」


 屋根の突起部分に鞭を引っかけ、物理法則を軽く無視して飛び上がり、着地する。その動きはゲームならではだ。

 クラリネが辿り着いた屋根の上には2匹の魔物がいた。クラリネの姿を見ると、ドタドタと近付いてくる。


「『アカガネ』、『クロガネ』。ただいま戻りましたよ」

「グガギィ!ギッギ!」

「ギグガガ」


 『アカガネ』、『クロガネ』と呼ばれた2匹の魔物は、鳴き声を上げ、クラリネを迎え入れる。この2匹こそがクラリネのとっておき、現在テイミングしている全てである。レッサーオーガをテイミングしていたというのは嘘だった。


 『アカガネ』の種族はハイゴブリン。ホブゴブリンから進化した種族になる。推奨レベルは8で、攻撃力が高く知能もある。

 『クロガネ』の種族はシャドウゴブリン。こちらもホブゴブリンからの進化だが、亜種の方向への進化を果たしている。推奨レベルは同じく8だが、隠密行動に優れ、敏捷性が高い。


 彼女がわざわざケイディア達の前に姿を見せたのは、探索を打ち切らせ、この2匹を守るためである。屋上へは無理矢理登る以外に来る方法はなく、目的(クラリネ)がいなければ、わざわざ探索することは無いだろうと踏んでいた。

 この2匹があっさり負けるとは思わないが、万が一を恐れてのことだった。


「流石にあの銃が当たれば即死でしょうからね……」


 並々ならぬ体力が売りのレッサーオーガを一撃で吹き飛ばすあの火力は驚異だった。耐えれるかどうか、即死するかもしれない、という話ではない。こちらの方が地力は上だが、一発当たればその差は覆される。

 そして重要なのが、テイミングした魔物達を復活させる方法は、今のところ見つかっていないということだ。手塩にかけて育てた魔物を失うリスクを負いたくはなかった。


 複数を相手にするのは苦手なようだが、あのパーティには範囲攻撃を扱える魔術師がいた。恐らく、あの魔術師が敵を焼き払い、倒し損ねた魔物がいれば、大物は銃で、小物は弓で倒すというパーティスタイルなのだろう。

 それに加えて、回復役の存在がやっかいだった。一般的な後衛ならば、奇襲や挟み撃ちには弱いのが通説である。だが、相手は殴りヒーラーというソロプレイヤーでしか見ないようなジョブ構成で、魔法使いの服装も相まって完全に不意を突かれた。ならばと思い、上位のホブゴブリンを投入したが、一撃も与えることなくやられてしまった。おかげで今回は大損だ。


「他が全滅してしまいましたし、引き際ですかね」


 こういったものは、引き際を見極めなければならない。クラリネには、ダンジョンの難易度を考えずに初心者狩りを行い、お鉢が回ってきた上位冒険者に蹴散らされた過去がある。

 すでにここにやってきたパーティの内のいくらかは経験値になっているし、何より、自分の存在がバレてしまったため、彼らがギルドに報告すればそれまでである。それを踏まえてクエストが貼られるだろう。

 今ならここから持ち出すものは、アカガネとクロガネの2匹だけだ。引き際としてはベストである。


「それでは、あそこの罠を確認したら、気ままな旅にでも出ましょうか」

「ギッギィガ!」

「グギゴガ」


 そう言って、彼女は歩き出す。遺跡を出て目指すのは町の方向だ。

 クラリネが仕掛けた罠は、なんと非戦闘圏にある。クラリネはそれをプルプルの穴と呼んでいた。


 草原エリアの高い草が茂っている場所に縦穴を掘り、その中にこの辺りで取れる赤い実、ウルプの実を磨り潰して入れるだけの簡単トラップである。

 ウルプの実は草原エリアに出現するプルプルの好物で、磨り潰せば匂いが広がり、プルプルが寄ってくる。匂いに釣られてやってきたプルプル達は穴に落ち、脱出できずにそこに溜まっていく。そして運悪く、その穴に落ちてきた冒険者を穴の中のプルプルがフルボッコにするというプルプル地獄とでも言うべき作戦だった。


 この方法ではクラリネには経験値は入らない。経験値が入るのはラストアタックを決めた野良のプルプルである。彼女が行っているのは縦穴を掘り、そこにウルプの実を落としただけであり、魔物を操ったわけでもないため、ゲームの定義する戦闘行為には該当しない。


 そして、クラリネの目的は、その冒険者の血肉を啜ったプルプルをテイミングすることにある。プルプルは最弱モンスターと呼ばれるほどに弱く、普通にレベル上げを行おうと思えば、かなり大変だ。だが、野良の魔物の場合は、相手のLPを削りきったモンスターに全ての経験値が入るため、罠にかかった冒険者がいれば、穴の中のプルプルのうち一匹が強化されているはずだ。


「うふふふ、次に会ったときは、完膚なきまでに叩き潰して差し上げましょう」


 柔和な頬笑みを浮かべながら、彼らへのリベンジを誓う。2匹の魔物を従え、クラリネはホルテ遺跡から出ていくのだった。

 出し抜いたように見えますが、結果を見ればケイディア達の一方的な勝利でした。再戦を誓ったが、次にクラリネが出るのはいつの日か……。

 非戦闘圏では直接攻撃や、他プレイヤーに危害を加えることはできません。ですが、プレイヤーの思考を読んでいる訳ではないので、止めるのにも限界があります。


 何はともあれ、これで第一部完結です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。