プレイヤーキラー
「ふふ、なかなか楽しい時間でした。皆さんも良ければテイミングしてみてくださいね」
「ええ。こっちも色々聞けて面白かったです。ありがとうございました」
「殺しに来た相手に礼を言うのもおかしな話だがな」
律儀に礼を言うケイディアに対してダングルスが苦笑を漏らす。だが、クラリネのテイミングの話はなかなかに興味深いものだった。楽器や餌付けによって心を開く方法などもあるらしい。
テイミングの話も一段落し、おもむろに口を開いたのはクローベルだった。
「一つ疑問なんだけど、クラリネさんは、なんでPKなんかしてるんですか?」
「それはもちろん『楽しいから』ですね」
クローベルの言葉にクラリネは即答する。
「ああ、キルするのが楽しい、というわけではなく、わたくしが楽しいと感じるのはその過程です」
「過程?」
「頭をひねって罠を張ったり、モンスターを配置したりと、どうすれば相手をキルできるだろう、どんな作戦で上手く行くだろう、そういったことを考えるのが楽しいのです。そして上手くことが運んだ時の胸の高まりは他にありません」
上手くいった時のことを思い出したのか、彼女の表情が自然と緩む。まるで恋する乙女のようだ。考えていることは他プレイヤーの死に様だが。
「あー、でもその気持ちは分かるなあ」
「えー?ケイくんは分かるのー?」
「つまり、ダンジョン製作側の気持ちってことなんじゃないか?どうやればプレイヤーを罠に嵌められるか、モンスターのAIをどう設定すればプレイヤーを苦しめられるか」
「なるほど。確かにそうかもしれませんね」
「なるほどねー」
クラリネはケイディアの例えに同意を示す。ダングルスも気持ちがわかるのか、うんうんと頷いている。
「ですからわたくしはPKすることをやめませんし、やめられません。これからもどんどん殺します」
「その発言はヤバイやつだなww」
「やっぱりここで倒しておいたほうがいいんじゃないの?」
クローベルの指摘に彼女はふふっ、と笑う。もっとも、ここで倒したところで町に送り返されるだけだが。
「では、わたくしはそろそろお暇させていただきます。また機会があればお会いしましょう」
「こちらとしては、PKと会う機会なんてそうそうあって欲しくないんだけどな」
「次会った時も容赦なく襲ってきそうだもんな……」
「うふふふ、当然です」
げんなりとしたケイディアの言葉は、ぐっ、とこぶしを握って肯定される。丁寧なたたずまいにアンマッチなその仕草は、ギャップでずいぶん可愛らしく見えた。
ごきげんよう、と言葉を残し、クラリネは入り口の方へと去っていく。その様子を見送り、ケイディアは他メンバーに話しかけた。
「えっと、じゃあ俺たちはどうしようか」
「俺らも撤収でいいんじゃないか?宝箱とかあったとしてもクラリネが回収してそうだし」
「ゴブリン退治のクエストはクリアしてるもんね」
「そだねー帰ろー」
確かに、これ以上探索しても、目ぼしいものは無いだろう。クラリネの後を追うようにケイディア達も町に戻ることにし、大広間を出る。すでにクラリネの姿はなく、階段の広間には誰もいない。
先にクラリネが出たはずだが、律儀にもエントランスへの扉は閉められていた。先ほど開けていたはずの扉が閉まっていたのも彼女の仕業だったのだろう。
「これでようやく初めてのダンジョンクリアか。長かったなぁ」
そんな台詞を吐きながら、ダングルスがエントランスへの扉を開ける。エントランスの奥、遺跡の入り口にクラリネがこちらを向いて立っているのが見えた。
そして、その手前、エントランスの中には2つの大柄な影が立ち、こちらを見ていた。
「……っておい!?」
「まじかww」
「手持ちが無いとか言ってなかったっけー!?」
「やっぱり倒しておくべきだったー!」
クラリネは、それぞれの思うところを叫ぶ彼らに対してニコリと頬笑んだ後、
「それでは皆様、ごきげんよう」
2匹のレッサーオーガがケイディア達に襲いかかるのを見届け、悠々と去っていった。
クエストは帰るまでがクエストです。
ケイディア達が1階を探索している間に設置していたオーガさん達ですので、手持ちが無いというのは嘘では無いです。
次話はクラリネさん視点のお話(予定)




