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地雷パーティになりました。  作者: 滝津原
遺跡のゴブリン退治
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21/62

その男の名は

 ギルドスタッフからの案内を終え、クエストボードの前で依頼書を眺めていたケイディア達だが、突如として、サリミラの後ろへと大きな影が近づき、声をかける。


「おい、嬢ちゃん。ここは餓鬼の来る場所じゃねえぞ?」

「んー?」

「……なんだあんた」


 その男は巨体だった。対峙するダングルスよりも背が高いだけでなく横にも広い。だが、太っているわけではなく、腹筋も腕の筋肉も、露出している部分はどこもたくましい。

 これで穏やかな表情でもしていれば頼りになる存在といった風貌だが、にやにやと笑う顔は完全に悪役のそれであった。


「おいおい、俺を知らねえってのかよ?へっ、あんたら本当に新参だな」

「おうおう!この方は、泣く子も黙るカマセーヌ様だぞ!」

「おうよ!カマセーヌ様はここらの冒険者の間じゃちょっと名の知れた有名人なんだぜ?」


 いつの間にか沸いて出ていた腰巾着のような男二人が大男の紹介をしてくれる。

 ケイディアは唐突に謎の巨漢に絡まれるという展開についていけずあたりを見渡す。何人かのプレイヤーの姿はあるが、助けてくれるそぶりはない。むしろ、好奇の視線で見ている者が多いように感じられた。


「こんな子供が冒険者になるなんて、命を捨てに行くようなもんだ!なあ、あんたらもそう思うだろ!?」


 そう声を張り上げて周りを見渡すカマセーヌ。だが周りの冒険者は、関わりたくないというように、露骨に目をそらす。

 カマセーヌの暴言に、ダングルスが一歩前に踏み出た。


「おいあんた、カマセーヌって言ったな……。ん?」

「おうそうだ。それが俺の名だ。今はこっちの嬢ちゃんと話をしてんだ。邪魔してくれるなよ?」

「……」

「……おい、ダン。なんで下がるんだよ」


 にやりと笑うカマセーヌにダングルスはあっさりと引き下がった。ダングルスは肩をすくめるだけで、ケイディアの質問には答えない。クローベルはいつの間にか遠くに退避している。案外初対面には人見知りするクローベルだった。

 そしてカマセーヌはその太い腕で、サリミラの華奢な腕をつかみ引き寄せる。


「うひっ!?」

「おいお前!」

「こんな細腕で冒険しようだなんて、命知らずにもほどがあるぜ!餓鬼はおとなしく家の手伝いでもしてな!」

「「ぎゃはははは!」」

 

 取り巻き2人が笑う中、ケイディアには、カマセーヌがサリミラになにかを耳打ちしたように見えた。そしてサリミラが驚いたように目を見開いた。次の瞬間、


「がははは……え?」


 不意にカマセーヌの巨体が浮き上がった。


「ぐへぇっ!?」

「「か、カマセーヌ様!?」」


 それは見事な一本背負いだった。


「いってて……こいつ!なにしやが」

「はいストーップ」

「ひぃっ!?」


 倒れるカマセーヌの目に銃口が向けられていた。銃口と言っても拳銃などではない。14mmの対物ライフルである。形勢逆転とばかりにサリミラはニヤリと笑う。そしていつもの間延びした口調とはうって変わって、やけに真剣な声で話し出した。


「筋肉ダルマ、命知らずはお前のほうさ。このあたしに喧嘩を売るとは、いい度胸をしているよ」

「な、なんだよその銃はぁ!?」

「答える義理があるのかい?」


 ガチャリ、とライフルから機械的な音がする。


「ひ、ひぃぃぃいい!?」

「ふっ、さっさと消えな。私の愛銃に頭を消し飛ばされたくなかったらね」

「はいぃぃぃ!」


 ドタドタと這うようにして逃げ出すカマセーヌ。その動きはどこか芝居じみているようにも見えた。


「カマセーヌ様ぁ!」

「畜生!覚えてろよ!」

「……」

「「ひぇぇぇぇ!」」


 サリミラが無言で銃口を向けると、取り巻き達も一目散に逃げて行く。そして彼らが出入口から出ていくと、周りの冒険者から喝采が上がった。


「お見事!」「ナイスな一本だった!」「久しぶりにいいロールだったな」「いやあ、カマセーヌ様もよくやるわwww」「その見た目で筋力極振りとか、ロマンが分かってるねー!」「いいもの見れたわw」

「いやー、どーもー、どうもねー」

「サリミラ、さっき何言われたんだ?」


 ケイディアはどこか満足げに周囲の声援に応えるサリミラに近づき、問いかける。


「……思いっきりぶっ倒してくれって」

「は?」


 自分から絡んでおきながらぶっ倒せとはどういう了見なのだろうか?ケイディアが首をかしげていると、ダングルスとクローベルも近づいてきた。


「ミッちゃん、大丈夫だった?」

「酷いよベルちゃーん。一人だけ逃げてさー」

「ごめんごめん。昨日話に聞いた悪役(ヒール)の人だろうと思ったから、傍観してたわ」

「……なるほど、ロールプレイの人だったのか」


 ケイディアは今さらながらに納得した。要はファンタジー物でよくある悪役を演じているプレイヤーだったらしい。退治されるまでがテンプレである。


「でも、演出に付き合ったんだから見返りがなんかあってもいいよねー。ギャラを寄越せギャラをー」

「……ん?なんか落ちてるぞ?」


 そう言ってダングルスが指差した先に落ちているのは小さな麻袋だった。サリミラは拾い上げ、中身を覗き見る。


「……カマセーヌ様、いい人だね」


 中には200N分の硬貨が入っていた。

 通称『負けロールのカマセーヌ』様でした。ごろつきキャラですが、キャラレベルはすでに6です。200Nくらいなら端金です。


 所持金は実体化させなければ落とすことはありません。逆に、実体化させておけば落とすことが可能です。サリミラのロールに対する心ばかりのお礼でした。

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