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冒険者ギルド

次話です。どうぞ~

「ほわ……」


 トンネルを抜けたらそこは……なんて言葉があるが、門を抜け、街中へ入ると、まさにそこは異世界だった。


「分かっちゃいたけど……地球じゃないんだよな。まさにファンタジーってか……」


 魔法を覚えておいて今更かもしれないが、しかし石畳の道といい、剣や斧を引っ下げた傭兵風の男達といい、一目で酒場だと分かる建物といい、まさに一心が思い描く通りの光景(ファンタジー)が目の前に広がっていた。しかし……


「臭い……」


 中世ヨーロッパ風の建物などはRPGなどでもおなじみなのだが、しかし実際にそこで生活が営まれていると、テレビ越しに見る光景(イメージ)とは大いに違う点もあった。

 その最たるものが匂いだ。下水道が完備されていないこの文明レベルでは、汚物がそのまま道の端の溝を流れる。匂いもさることながら、衛生面でも不安があった。


「よくこれで病気にならないな。ってか誰も気にしないのか?」


「何をです?」


 一心の呟きは、地球の現代人にとっては至極当然、当たり前の疑問だっただろう。しかしこの世界に住むルウェル達にとっては、今目の前の光景こそが基本(スタンダード)である。


「衛生って話しなかったけ?」


「えいせい……予防や菌といった話なら覚えていますが?」


「それのこと。汚物をほったらかしてるとそこに菌が繁殖して、風とかで舞い上がったり、虫とかが運んだりして散らばる。そしてそれを吸い込んだり、口にしたりして病気とかになったりする。俺の世界では昔、そうやって街1つが丸ごと……みたいな感じで大流行したりしたんだ」


「まさか、防げるんですか!?」


 一心の言葉に、興奮した様子でルウェルが詰め寄る。


 こちらの世界でも偶に街ごと病にかかったりすることがあるそうだ。そうなると街を封鎖して、そのまま焼き払うなどしか対応は出来ず、原因も分からない方が多いのだとか。


「まぁ、たぶん?」


 専門では無いのでと逃げ道を作りながら、ずずいっとにじり寄ってくるルウェルから距離を取る。


(しまった……うかつだった)


 覚えのある反応に汗をかく一心。


 予防の概念を話した時にもそうだったが、ルウェルは偶に暴走する。あの時も質問攻めにあい、一心は大いに苦労させられた。


(予防の概念が無いんだから、防疫の概念も無いよな……違いは良く知らんけど)


「何が原因なのです? 何をどうすれば――」


「あぁ――ルウェル。少し落ち着こう。今はちゃんと目的もあるからそっちを優先しよう。防疫に関しては、俺の知る範囲で今度教えるから。移動中とかたぶん時間あるでしょ?」


「分かりました。ちゃんと教えてくださいよ?」


 何とかその場はルウェルを抑え、目的を優先させることに成功する一心。いずれ詳しく話さなければならないだろうが、その時はその時だ。


(一心よ、あまり迂闊なことを言うなよ)


「うぉっ!?」


「――? どうしました一心?」


 取り敢えず一安心と、一心が胸を撫で下ろしたところで、突然頭にカグラの声が響く。驚いて声を上げてしまった一心を、ルウェルが不思議そうに見つめていた。


「いや、なんでもない」


 ルウェルには気にしないでーと苦笑いを返し、無表情で、しかしちゃんと聞いている(であろう)ハルには、何でもないよーと手を振る。そうしておいて一心はカグラへと目を向けた。


(今の何?)


(うん? 念話じゃが……言っておらんかったか?)


(聞いてない。知らない)


(ならば今言ったということで。そもそも契約しておるのじゃ。念話くらい出来て当然じゃ)


 どうやら意識して頭の中で考えると、それがカグラに伝わるらしい。初めてだったがすんなりと会話が出来ている。


(便利なんだけど……まさか思った事全部が筒抜けじゃないよね?)


(伝えたい相手を正確に思い浮かべなければ、念話はつながらん。意識しない限りは大丈夫じゃよ)


(受信範囲とかは?)


(受信? ああ、有効距離みたいなものか。物理法則に従う物では無いのでな。距離は無制限じゃよ)


(何その便利機能……)


 思った以上にかなり便利だった。


「一心?」


「おっと、いや大丈夫」


 カグラとの念話に集中しすぎてルウェルへの対応が疎かになっていた。慣れるまではそれなりの集中力が必要で、しばらくは周りに気を付けながら念話を使う必要がありそうだ。そう心の内にメモしながらルウェルへと向き直る。


「必要な物は取り敢えず食料かな?」


「そうですね、水と食料、後は薬などでしょうか」


「ひ、――ルウェル様。旅をするには身分を示す物が必要です。ギルドへ向かう事を提案いたします」


 今回の旅では身分を隠すことになっている。だからこそ夜明け前という人目に付かない時間に出てきたのだ。その為、旅行中はルウェルのことを姫様では無く、名前で呼ぶようハルには言い付けてあった。


「ギルドですか?」


「はい。商業ギルドでも、魔法ギルドでも、冒険者ギルドでも構いませんが、ギルドに登録すれば、ギルドカードが手に入ります。今後はそのギルドカードを旅券とするべきかと」


 街に入るには、通常身分を示す旅券が必要となる。一応ハルは国の発行した旅券を持っているのでこのままでも問題は無い。問題はないのだが、しかし国の発行した旅券は、貴族階級か、一部の大商人しか持つことができない。

 身分を隠す以上は、一般の旅人に習って、ギルドカードを手に入れる必要があるだろうというのがハルの提案だった。旅慣れない一心とルウェルに否は無い。


「何処が良いでしょうか?」


 となると、次に考えるのはどのギルドに行くかということだ。一心とルウェルはギルドには詳しくない。必然ハルの判断を仰ぐことになった。


「そうですね……冒険者ギルドがよろしいかと。一番大きな組織ですし、だいたいは何処の街にもあります。旅をするにも冒険者という肩書は何かと役に立つはずです」


 少しだけ考えたハルは、結論として冒険者ギルドを上げる。


「じゃぁ、それで。ルウェルもそれでいい?」


「構いません。ではハル、案内を」


「畏まりました。こちらです」


 そうと決まれば、さっそく3人は冒険者ギルドに向けて歩き始める。


(儂の意見は聞かないのな……)


 後に続きながらカグラがそう思ったとか、思わなかったとか。



 ◇  ◇  ◇



 冒険者ギルド。女王国全土に支部を持つ巨大組織であり、更に王国外へもその勢力は広がっている。人探しから採集、討伐にペットの躾まで、各種さまざまな依頼が舞い込み、所属する冒険者が日夜働く便利屋的存在。概ね一心の思い描く通りの存在だった。


(ほんとゲーム世界だな)


 ハルの案内で、冒険者ギルドまでやってきた4人。目の前には2階建ての木造の建物があった。


「あの看板が目印です。看板は何処の街でも同じで、今後も利用することがあると思いますので覚えておいてください」


 ハルの指さす方へと顔を向けると、盾を背景に剣と斧が交差した紋章(エンブレム)が刻まれた巨大な看板があった。見ると、入口の扉にも同じ紋章が彫ってある。


(紋章までお決まりなのか……)


 あまりに見慣れた紋章に、地球世界との関連を疑う一心。しかし疑ったところで何一つ確かなことは分からない。考えても仕方がないと気持ちを切り替え、扉に手をやる。そして――


「っつ――これは……魔法か?」


「すごいですね……」


 扉を開けたところで、内部の光景に息をのみ、思わず立ち尽くしてしまった。


 外観は精々大きめの洋館といった感じだったのに(それでも十分に立派な建物だったが)、内部は何処の宮殿だというような広く、豪華な作りだった。入口から右半分は酒場となっており、昼間だというのに、赤ら顔の酔っ払いが数人、酒を片手に騒いでいた。そんな酔っ払いたちに混ざって、係と思われる若い女性が数人、トレイ片手に歩き回っている。


 そして左半分がギルドとしての建物。数人の冒険者が依頼板を前に受ける依頼を吟味し、その奥にはカウンターが4つ。こちらもそれぞれ若い女性が受付として座っていた。


「ようこそ冒険者ギルド、ユズズリハラル支部へ。初めての方ですか?」


 入口で口を開けて立ち尽くす一向(ただしハルとカグラを除く)の前に、執事服姿の若い男性が現れる。男性は勝手に自己紹介を始め、レイナルドと名乗ると、4人を一つのカウンターへと誘った。


「初めての方は大体入口で立ち尽くすんですよ。しかし時間によっては入口は混雑するので、こうして見つけ次第声を掛けるようにしているんです」


 そう述べるレイナルドは、ギルドの職員ということで、案内係をしているのだとか。彼の案内でカウンターへと着くと、後の対応を受付の女性に任せ、レイナルドは一礼して去っていった。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。受付のニーナです。本日はご登録ですか?」


 にっこりと笑う受付の女性は、一心達よりも少し年上といった具合で、ルウェルやアイリーンほどではないが十分に美人と言える容姿。そして――


(この子もしかして……)


 髪の隙間から覗き見える耳は、先っぽが尖がっており、おそらくだがファンタジー物お決まりの、美人で長命なあの種族だった。


 エルフよりも美人なルウェルとアイリーンって……と、若干内心で戦慄しながら、何ともなしにエルフの女性たぶんを眺める一心。


(…………)


 胸はエルフ女性の圧勝だった。


(………………)


 たぶん腰の括れも。


「――以上が登録に際しての注意事項となります。よろしいでしょうか?」


 一心が邪な思考に囚われている間に、ギルドに関する注意事項とやらが行われていたらしい。気付くとちょうど終わった所だった。


(しまったな……)


 果たしてタイミングが良いのか、悪いのか。一心の横ではルウェルが頷きを返し、ハルも同様の反応を見せる。もう一度最初からとも言えず、とりあえず一心も頷いた。


「では誓約書にサインを。続いて登録料として銀貨1枚をお納め下さい」


 登録料取るんだーと、一人話を聞いていなかった一心は思うが、既に納得済みなのかルウェルは銀貨を一枚取り出すと、カウンターに置いた。


 後は、慌てて一心も銀貨を1枚取り出したり、渡された怪しい銀色のカードに血を垂らしたりと、良くある設定どおりのことを済ませ、さっと依頼板を確認してからギルドを出る。

 目的はギルドカードで依頼を受けることでは無い為、今回は依頼は受けなかった。


 ちなみに登録したのは一心とルウェルと、そしてなぜかカグラだった。ハルは既に登録済みとのことだ。


「これで今後は冒険者と言う事で旅ができます。以後他の街に入る時にはギルドカードを見せてください。後は、食料などを調達して……どうしますか? ここで一泊してから明朝出発しますか?」


 冒険者ギルドを出た所でハルが次の日程について尋ねる。次の街まではそれなりの距離があり、今出発しても今夜は野宿となるらしい。時間的にはまだ午後をちょっと過ぎたぐらいで日も高い。心情的には先へと進みたいのだが、ハルが言うには野宿はそれなりの危険が伴う上、先のことを考えると、休める時にはちゃんとした所で休んでいた方が良いらしい。


「じゃぁ、宿をとりましょう。荷物を宿に預けてから必要な物の買い出しを」


 結局ルウェルの判断で、今日はこの街に一泊することになり、この日の旅路は山を下るだけで終わったのだった。

魔法と剣の冒険譚。。。。。のはずが、戦闘シーンがない。これいかに……


次話、「北へ」 よろしくお願いしま~す。

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