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隣のあの子  作者: yui
13/14

*夢



海辺で話した翌日から、七菜は塾に来なくなった。

塾の先生に聞いても、家庭の事情で引っ越したとしか教えてくれない。高校も退学したらしい。メールを送っても送り返されてしまう。当然電話も繋がらない。まるで、葛西七菜なんてもともと存在しなかったかのようだった。


でも、ひとつだけ七菜がいなくなったことを俺に実感させることがあった。英語の授業での、隣の空席。それはついこの間まで七菜がそこに座っていたという(あかし)だった。そしてその空席を見てまず思い出すのは、笑顔の七菜でも、顔を赤くした七菜でも、泣いている七菜でも、最後に来たときの七菜でもなく、なぜだか、最初に七菜が隣に座ったときの穏やかな横顔だった。セーラー服を着て、ノートに"English""葛西七菜"と書いていた、あの横顔だった。半年も経っていないのにすごく昔のことみたいだった。


達哉という男は亡くなったのだということを、七菜がいなくなった数日後に翔から聞いた。しかも一年以上も前のことらしい。七菜がその他になにを知り、どこへ何のためにいなくなったのかは翔も分からないようで、必死で調べているのか、疲れてみえた。


けれど不思議と俺は七菜がいなくなったという事実をすんなり受け入れていた。花火の時から、そして海辺で最後に会った時にも、七菜がどこかへ行ってしまうと心のどこかで感じていた。幻みたいだった。6ヶ月夢をみていたかのようだ。忘れることなんて決してできない夢を。


そして今俺は、いつかまたその夢を見れるような気がするんだ。また変わらない笑顔で、ふと現れるような、そんな気がするんだ。


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