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これはハッピーエンドにしかならない王道ラブストーリー3 〜花咲姫と奔流王〜  作者: segakiyui
31.異国の花嫁

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2

「あ、あのっ、陛下、やっぱり私っ」

「シャールン?」

 慌てて取り消そうとした口をそっと指先で押さえられた。

「私は嬉しい」

「?」

「あなたが、願いをもってくれて。それを私に望んでくれて」

「あ…」

 指先が離れて、代わりに柔らかく唇が当たる。

「俺があなたに必要なんだと感じられる」

「陛下…」

 目を細めたレダンが本当に嬉しそうで、シャルンは思わずほっとする。

「さて、続きだ」

 レダンは名残惜しげに、シャルンの唇から離した指に軽くキスし、それからもう一度地図に指を落とした。

「ザーシャル、ハイオルト、ダスカスが北に並び、それより南にラルハイド、カースウェル、ステルンが位置する。もっと南、レーファ湾を挟んで、ダフラムとアルシアが向かい合う。ザーシャルの北にはかつてパルディアという国があったそうだが、今はどこも国交がなく、国が残っているのかどうかも不明だ。ハイオルトの北は山々が聳え、ハイオルト側にミディルン鉱石を産する。テイベルン川に分たれて、ザーシャル、ラルハイドはダフラムの影響を受けやすいとも言える」

 国境で色を塗り分けられた国々は、見覚え聞き覚えのあるものばかりだ。今更ながら、こんなに多くの国に嫁し、出戻って来たのかと驚いた。

「…陛下は、龍について、ダフラムが何か知っているとお考えなのですね?」

「…ダフラムは強大な軍事国家で工業国だ。ミディルン鉱石の獲得にはどの国より熱心だし、手段を選ばないだろう。武器を作るのも、工業で国を支えるのも、ミディルン鉱石なしには無理だ」

 少し考え込んだレダンは、ふう、と小さく溜息をついた。

「もしザーシャルの書庫に手掛かりがなさそうなら、出向きたくないところだよ。今回の橋の破損も、誰かがザーシャルに入るのを妨げようとしている、とも取れる」

 右目の虹彩に宿った紅が、チカチカと苛立たしそうに瞬く。

「けれど…じっとしていても、ダフラムはやって来ます」

 シャルンは地図を見つめた。

 ハイオルトを取りまとめようと必死になっていた頃、幾度かダフラムの使者はやってきた。厳しい状況と、それに立ち向かうシャルンの負荷を労り、ダフラムによる安寧を約束しようと呼びかけてきた。

「…幾度か使者の方にお会いしました」

「…」

 ぴく、とレダンが指を震わせた。鋭い視線でシャルンを見遣り、一瞬で光を和らげる。

「珍しい衣装でした。肩から足元へまっすぐに流れる服の意匠で、女性の方は誰一人来られませんでした」

 黒や紺、深い緑など暗い色が多かった。公的な立場の者がすぐわかるように、そのような色を決めているのだと聞いた。お役目に女性はいらっしゃらないのですかと尋ねた時に、相手は薄く奇妙な笑みを広げた。

「…失礼ながら、女性は能力が及ばぬ者が多いので、と仰っておられましたが……瞳が冷たく、凍るような心持ちが致しました」

 シャルンは少し目を閉じた。

 自分の思いを偽らなくていい。自分の感覚を信じていい。レダンはシャルンを侮らない。

「私は……ダフラムの女性の方と、お話ししてみたく、思いました」

「……うん、わかった」

 レダンが低く同意する。

「あなたがそれを望むなら」

 私は必ず、それを叶えよう。


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