新たな家族
そう言った後、クロエは倒れ込んだ。
「おい!!」
ダイアンは叫んでクロエを抱き起こして脈をとった。気絶しているようで、脈は弱々しく打っていた。
「無理もないな。・・ありがとう、責めずにいてくれて。」
ダイアンは先にクロエをお姫さま抱っこすると、車の助手席に運んだ。続けてナックを担いで後部座席に乗せると、車を運転して公園を後にした。
クロエとナックの意識が戻ったのは、3時間後だった。目を開けたクロエの目にうっすら見えたのは、心配そうにこっちを見ているダイアンの姿だった。クロエはダイアンを見つめながらゆっくりと口を動かした。
「ダイアン、私・・・」
気づいたダイアンは満面の笑みで答えた。
「起きたのか、クロエ!!母さん、クロエが目を覚ましたぞ!」
聞きつけたアイリスもはちきれんばかりの笑顔を浮かべた。
「クロエ!!良かったわ、早めに回復して!」
クロエは曖昧になった記憶をたどってアイリスに質問した。
「パパとママは?ナックはどうなったんですか?」
アイリスはしばらく表情を固くして沈黙した後、重々しく口を開いた。
「・・・ご両親はあの後、埋葬したわ。お墓の下にいるわよ。ナックは数分前に目が覚めたばっかりね。」
「そうなんですか・・・・ありがとうございます。ナックにもお礼を言わないと。」
「彼は今リビングにいるわ。呼んでくるわね。」
クロエは手を横に振った。
「直接会いに行きますから大丈夫です。」
「そう・・リビングに掃討班を全員集合させましょう。先に行ってスープを作って待ってるわ。ダイアン、手を貸してあげて。」
「了解。クロエ、無理するなよ。」
クロエがダイアンに支えられながらリビングに行くと、既に全員集合しており、2人分の席が空いていた。2つのうちの1つの椅子のテーブルの上には、アイリスがスープの入った皿を置いた。クロエはスープのある席に座り、ダイアンは隣の席に座った。クロエの右隣にはナックが座っていた。クロエは狂喜して礼を言った。
「ナック!!さっきはありがとう。」
ナックは脇腹を押さえながら静かに微笑みかけた。
「これが仕事さ。スープが冷めないうちに飲んだ方がいい。アイリスさんが作ったやつは絶品だからね。」
一口すすってみると、ダシと塩加減の丁度いい味が、口に染み込んできた。
「美味しい・・・」
アイリスは胸を撫で下ろした。
「良かった。急いで作ったものだから、失敗したかと思ったの。」
「全然美味しいですよ!!本当に、何から何までありがとうございます。そして、これからもよろしくお願いします!」
「そう畏まらないで、家族みたいに接してちょうだい。みんなもあなたを迎えることに、賛成しているわよ。」
全員から歓迎の拍手が湧いた。アイリスはしばらく拍手と温かい笑顔を送っていたが、やがて目元を引き締めて今いるメンバーの誰よりも凛々しい顔つきになった。
「改めて、ようこそ、JRS本部へ。あなたの身の回りで起きた事件の概要を説明するわ。」