共闘開始
元女性はダイアンを睨みつけてうなり声をあげた。
「掠リ傷ヲ付ケタゴトキデ、図二乗ルナ!」
元女性の狼狽を余所に、ダイアンは床を蹴って抜刀し、入れられるだけの攻撃を相手に与えた。元女性はそこで自分が刻まれているのに気づき、ダイアンに拳を振るうと、ダイアンはワイヤーを敵の両足に射出して移動し、これを避けた。刺したワイヤーを抜くと、元女性の足元には銀色の水たまりが2つできていた。
「これでゆっくりお前を刻める。嫌ならさっさとニッポンのかけらをよこせ。」
「両足二ワイヤーヲ刺シタノハ、機動力ヲ奪ウ為カ。殺意シカ感ジナイ割ニハ、中々考エテイルジャナイカ。」
おべんちゃらを聞くまでもなく、ダイアンはワイヤーを床に刺して移動し、元女性との間合いを詰めていった。元女性はダイアンを踏みつけようと足を上げた。
それを見たダイアンはもう片方の腕につけた武器からワイヤーを射出し、上がっている足に刺した。そしてワイヤーを巻き取るスピードを上げながら抜刀し、遠心力に任せて足首を切り落とすと間髪を入れずに腹部にワイヤーを撃ち込み、ワイヤーを巻き取るスピードを最大出力にしながら上昇した。
上がりきってしまうと、ダイアンはワイヤーを外し、独楽になったかのように回転した。安定した体の重心に張り巡らされた遠心力とバランスのおかげで、ダイアンは落ちることなく安全に敵の喉元に到達し、パワフルな剣撃を叩き込めたのであった。元女性は銀色の血を撒き散らし、呻き声を上げながら倒れていった。
ダイアンは倒れたのを見届けると、とどめを刺すため敵に近づいた。
首を刎ねるべく刀身を立てた次の瞬間、全身に衝撃が走り、ダイアンは宙に浮く感覚を得た。否、ダイアンは元女性の手に掴まれて浮いていたのだ。それが合図かのように元女性は斬られた箇所を全て再生させると、ダイアンを床に叩きつけ、呪いの言葉を浴びせた。
「オノレ・ダイアン・タスカー!!
人間ノ分際デ・・小僧ノ分際デ、ヨクモ私ノ体二傷ヲツケテクレタナ!!」
「もう治ってるだろ。嫌なら大人しくしてればよかったものを。」
強がっているのか、正論を述べているのかわからないダイアンの言葉に元女性は更に苛立ち、ダイアンを握り潰そうと手に力を込めた。
「今スグソンナ口ヲ聞ケナイ様二シテヤル!」
ダイアンは顔を歪めながらも抵抗の意思を示した。
「やってみろよ!」
そう言いながらも、ダイアンは死を覚悟して抵抗を弱めた。元女性のもう片方の手が体中にねっとりと絡みつき、5本指がゆっくりと命を奪おうとしている。成り行きに委ねようと目を閉じたダイアンの耳に、女性の叫び声が入ってきた。
「止めて、殺さないで!!」
声が聞こえたかと思うと、ダイアンを絞めていた指と、身体を押さえていた手が離れた。ダイアンが咳き込みながら目を開けると、クロエが元女性の手に必死にしがみついていた。
ダイアンはせきをなんとか抑えながらクロエをとがめた。
「馬鹿・・何やってる!」
元女性が吠えた。
「邪魔ヲスルナ、小娘!」
元女性は丸めたティッシュを放り投げるように、クロエを払った。落ちるクロエをダイアンが受け止め、元女性から距離をとった。戦闘を再開していたアイリスはその様子を見ると、クロエに向かって叫んだ。
「駄目よ、戻ってきなさい!」
アイリスの声を聞いたダイアンはクロエに戻ることを促した。
「すぐに母さんの元に戻れ! ここにいたら死ぬぞ!」
「イヤ、一緒に戦うわ!死にかけてるのはあなたの方じゃない!」
「それは・・・・・・」
図星をつかれて言い返せないダイアンの隙を突き、元女性は2人に殴りかかった。
「心配スルナ!スグ2人トモ葬ッテヤル!!」
「それだけはごめんだね!」
ダイアンとクロエは同時に叫びながら、元女性の拳をお互い別方向へ避けた。そしてすぐに集まり、共闘を誓った。
ダイアンがため息混じりに言った。
「こんな状態だ、お前を母さんの元に送れなくなった。だから─」
クロエは結論を察して素早く口にした。
「2人でコイツを倒して、戻るしかない。」
ダイアンは強く頷いた。
「そういうこった。だから指示通りに動いてくれよ?!」
「イェッサー!!」
ダイアンとクロエは元女性を見据えた。元女性も、2人の敵対意識を察知し、睨みつけた。
数秒の膠着状態が続いたが、その沈黙を破ったのは、ダイアンとクロエだった。ダイアンはクロエに違う角度から攻めるよう指示した。元女性はその動きを把握し、クロエに襲いかかった。すると、クロエはウォッチハンターで銃弾を敵の目に目掛けて放てるだけ放った。
元女性は困惑した。これではダイアンがどこから攻撃してくるのか解らないことに気づいた。
「・・・陽動ノ為カ、小娘ヲ動カシタノハ!!」
「その通り!!!」
勝利を確信して叫んだダイアンは、元女性の体にワイヤーを刺すと、剣を目の前で構えながら
フルスピードで突進した。その勢いで元女性の腹にマンホールくらいの穴が開いた。




