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American Dianthus  作者: nacchan725
気になる人は魅力の権化
19/70

作戦決行

「良かったら一緒に踊りませんか?」

「構わないわよ。」

ナックが女性に話しかけたと同時に、ダイアンはクロエと一緒に女性の死角を通って近づいた。女性の目の色に違和感は全くなく、ダイアンが見間違えているのではとクロエは思った。

「どうしてあの人がリップオフだと思うの?」

ダイアンは周りを見渡すと、歩くスピードを少し落とし、少し声のトーンとボリュームを落として話した。

「熟練にしか解らないけど、リップオフ特有の臭いがあいつからでてたからさ。」

「どんな臭いなの?」

「鉄が錆びたみたいな臭いがするんだ。そうだクロエ、あっちにヴィンディッシュがいるのがわかるか?」とダイアンは指をさした。

「わかるわ。どうかしたの?」

「あいつのとこに行って作戦を伝えてくれ。作戦は聞こえたか?」

「聞こえてたわ、任せて。」

すぐにクロエはヴィンディッシュの方へ向かった。ヴィンディシュを見つけたクロエは軽く肩を叩いて話しかけた。

「ダイアンからの指示よ。ナックと話している女性を見張って囲むらしいわ。」

ヴィンディッシュはしばらくクロエを見つめた後、消えそうな声で返事をした。

「・・・・・わかったわ。」

悲しみが見え隠れしたのを感じたクロエは、ヴィンディッシュを優しくなだめた。

「すぐにダイアンと踊れるわよ。さっさと終わらせましょう、被害者が出る前に。」

ヴィンディッシュは力強く首を縦に振った。

「そうね。でもクロエ、リップオフの脅威を忘れたの?ヤツらは群れて襲ってくることを。」

クロエはハッとして声をあげた。

「ていうことは・・・」

ヴィンディッシュはダイアンとナックに挟まれている女性の周りを一瞥した。

「あの女の近くに仲間がいる可能性が高いわ。囲むのは他のメンバーに任せて、私達であの女の仲間を見張りましょう。」

クロエは力強く頷いた。

「それがいいわ。被害を減らせられるかもしれない。」

2人は行動を開始した。

一方、ダイアンはナックと合流し、女性と会話していた。

「ドレスにサングラスなんて、独特な格好ですね。」

「あなたもそう思うの?」

機嫌を損ねたと思ったダイアンは丁寧に謝った。

「気を悪くしたなら謝ります。魅力的だったもので。」

女性は即座に首を横に振った。

「遠慮は無用よ、慣れてるから。あなたも人の目をひく良い男ね。さっき話しかけてくれたあなた─ナックも優しいし、良い男2人に言い寄られたら私、困っちゃうわ。」

しばらく冗談や他愛もない話をしていた3人だったが、いつになく女性が真剣な表情で語りかけた。

「ダイアン、私と一緒に来ない?」

「どこに?」

「私の住処へ。ムサい男ばっかだけど、あなたがいてくれれば私は耐えられる。」

「俺は構わないけど、仲間を置いてけない。」

ナックは代わりに行くことを提案した。

「俺じゃダメなのか?」

女性はナックにさらりと言い放った。

「ダイアン程魅力はないわ。」

それを聞いたダイアンは、

「オイオイ、露骨過ぎだろ。」

と呆れた顔になった。

行きたがらないダイアンの態度に、女性は痺れを切らして詰め寄った。

「お願いだから来てよ!そうじゃなきゃ無理なの!」

今度はダイアンが痺れを切らして言い返した。

「今まで何匹葬ったと思ってる?お前が人じゃねぇことぐらいお見通しなんだよ。カマトトぶってないで、さっさと正体を表せ!」

女性は泣きそうな顔をした。

「あなたとは、仲良くなれたと思ったのに・・・・」

「化け物に好かれる趣味はねぇ。」

さらりと無機質に言い放ったダイアンを見て、女性は雄叫びを上げた。声は野太くなり、体は膨張し、顔は凛々しい女性から禍々しい怪物のものへと変わった。それを見たアイリスは掃討班全員に指示を出した。

「全員、客の避難とリップオフの出現を警戒!!避難が粗方済んだら、戦闘に参加!犠牲者の最小限を最優先して!!」

メンバー全員が同じタイミングで答えた。

「了解!!」

アイリスを始め近くにいたアルバート、バージル、マリー、エリザベートがすぐに避難誘導を開始した。避難誘導に専念する中、アイリスはクロエとヴィンディシュの声と姿が確認できないことに気づいた。

「ヴィンディッシュとクロエはどこ?姿が見えないわ!」

取り乱す母親をダイアンがなだめた。

「2人は俺が探す!母さんはここにいてくれ!」

ダイアンは辺りを見回し、2人の名を叫びながら走った。

「ヴィンディッシュ!クロエ!どこにいるんだ?!」

リップオフになった女性は捜索を妨害するべく床を蹴ってダイアンの間合いを詰め、殴りかかった。すんでのところで気づいたダイアンは地面を転がって攻撃を避けた。リップオフは跳躍し、間合いを一気に詰めて体勢を整いきれてないダイアンに殴りかかろうとした。その時、無数の銃弾がリップオフの体に命中した。ナックがリップオフの後ろに回り込み、拳銃を放ったのだ。ナックは得意げに言った。

「今回は完璧だろ?」

「悪い、少しコイツをナメてた。─上だ、ナック!!」

指をさして叫ぶダイアンの言葉を聞き、上を見たナックは仲間のリップオフが群れて襲ってくるのを見た。迎撃しようと銃口を向けたその時、無数の銃弾がリップオフ達の体を貫いた。銃弾が飛んできた方向にはヴィンディッシュとクロエが立っていた。

ダイアンとナックは同時に叫んだ。

「クロエ、ヴィンディッシュ!」

ヴィンディッシュが爽やかに言った。

「待たせたわね。これで存分に動けるわよ。」

クロエはリップオフたちを警戒しながら言った。

「周りのヤツらは私達に任せて、2人は早くボスを倒して!」

ダイアンは2人を気遣った。

「わかった。無理するなよ。」

ナックが力強く言い放った。

「すぐ終わらせるよ。」

4人はそれぞれの敵を見据え、散開した。

元女性は向かってくるダイアンとナックを一瞥すると、クロエとヴィンディシュの近くにいるリップオフたちに命令した。

「小賢シイ!!野郎ドモ、アイツラヲ殺セ!!」

再びダイアンとナックは阿吽の呼吸で叫んだ。

「させるか!」

ナックの銃撃を受けて怯んだ元女性に、ダイアンが腹を狙って剣で深く斬りつけた。元女性はうめき声をあげて後ずさった。

元女性は2人を睨みつけて怒鳴った。

「オ前ラ、アノ2人ヲ殺セ!!」

指示を聞いたリップオフ達は、2人に襲いかかった。

襲撃に備えていた2人だったが、2人の前に現れたのは5匹程のリップオフと、クロエとヴィンディッシュだった。

元女性はうろたえた。

「バカナ!!アンナニイタノニ、コンナ小娘ドモに、()ラレタトイウノカ!?」

クロエが元女性に劣らない気迫で叫んだ。

「不死身とはいえ、私達をナメすぎよ!油断大敵って言葉を知らないの?」

今度はヴィンディッシュが叫んだ。

「あんたがダイアンを殺したい以上に、私はダイアンを守りたいの。

人間を甘く見た、あんたの負けよ!」

「人間風情ガ、生意気ヲ言ウナアアア!!」

リップオフ達は2人に飛び交った。迎撃しようとした2人の間から足が伸び、リップオフの頭を蹴り飛ばした。振り返った2人の目に映ったのは、アイリスの姿だった。

「遅くなったわね。すぐに雑魚は片付くわ。」

アイリスが手を挙げると、避難に専念していたアルバート、バージル、マリー、エリザベートが2人の周りに立ち、武器を構えていた。

「1匹残らず瞬殺して本部に帰るわよ!」

アイリスのかけ声と共に、全員が攻撃を始めた。

「逆ラウノモ大概二シロ!」

叫んだ元女性は突然、自らの皮膚に傷をつけ、流れた血を両手で受けとめると、それをこねた。

血は鎖状の銀の塊になった。元女性はそれを、ダイアン達の方に投げつけた。塊の中からは今いる数の倍以上のリップオフが現れ、ダイアンとナックに襲いかかった。アイリスは動揺を鎮めながら大声で指示を出した。

「すぐに2人の元に向かって援護して!」

ヴィンディッシュは指示を聞くや否、ダイアンの身の危険を感じて叫んだ。

「このままじゃ、ダイアンが危ない!!」

ヴィンディッシュはダイアンの元へと走っていった。クロエはヴィンディッシュを止めるべく、叫んで後を追いかけた。

「待って、ヴィンディッシュ!あなたまで危なくなるわ!」

アイリスも叫んで2人を止めるべく走った。

「あなたもよ、クロエ。2人共待ちなさい!」

ヴィンディッシュは走った。襲ってくるリップオフを避け、致命傷を与えて行く手を阻ませるのを阻止した。

優しくて愛おしい人の所に行くために。今まで自分を助けてくれたリーダーを、今は自分が命を懸け、助けるために。

リップオフの大群はダイアンとナックにも襲いかかっていた。元女性は2人を弄ぶように、どさくさに紛れて、攻撃を加えていた。

「そんな卑怯な手で、私の好きな人を傷つけないでよ!!」

叫びながらヴィンディッシュは敵に近づき、銃を全弾お見舞いした。銃弾を受けた元女性は軽くうめき声をあげて動きをする止めた。手応えを感じて安堵したヴィンディシュは銃をゆっくりと下ろしながら近づいた。次の瞬間、ヴィンディシュは元女性の蹴りを受けて倒れた。


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