↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
キルロイド  作者: 武嶌剛
第五章 ゼロ・ポイント
PR
50/51

エピローグ (3/3)

 老人が、一枚の写真を眺めていた。

 それは、青年と若い娘が空港で一緒に映った写真である。

 男のほうは、娘にほおを力強く引っ張られていて、表情はすっかり台無しに崩れている。

 彼は珈琲を飲み終えると、煙草に火を灯して、ゆっくりと吸って吐いた。

 色味の抜けた白い総髪。老人は、白衣を小奇麗に着こなして、全体的にしゃんとしていた。

「……今回は、なにを作られたんです?」

 もう一人、年老いた女性が部屋の奥から、ゆっくり姿を現した。

 年齢は、その老人とあまり変わらないだろう。

 しかし、彼女のほうがいくぶんか若々しく、その髪は依然として黒々と艶を保っていた。

 椅子を回して向き直ると、老人は眼鏡を押し上げて、彼女の問いかけにこう答えた。

「ちょっとした尻拭いだよ。あるバカな研究者の失態を、わざわざ帳消しにしてやったんだ」

「またそうやって他の人を馬鹿にして……。いくつになっても口が減らないですね、あなたは」

「……なに。他人ってわけではないから、かまわないさ」

 だが、彼女はその会話自体にはさして興味もなかったのだろう。空いた食器を片付けると、

「はいはい。そうですか」

 それだけ言い残して、戻っていってしまった。

 老人は、眼鏡を外すと、眉間をぎゅっと抑えた。だいぶ疲労が溜まっている。乾いた目は貪欲に睡眠を求めていた。

 たばこをもみ消し、席を立つと、老人は、最後に研修室の一角へと移動した。

 そこには三台の大型カプセルが並べてあった。蓋はいずれも開いており、中身は空っぽである。

 彼はふっと笑うと、満足そうな表情でつぶやいた。

「これで、約束は果たしたからな」


 ―― 了 ――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。