第7話 いとこのお姉ちゃん 清水鈴
さて、多くの人にチヤホヤされてもらう。
そう決意したのはいいものの、それを実行するためには一つ乗り越えなければならない問題が僕の前を塞いでいた。
どうやって僕をチヤホヤしてくれる人を集めるか。
この計画自体、多くの人に僕という存在を認知してもらわなければ最初から不可能なことだからな。
まずは多くの人に僕という人間を知ってもらい、認知度を上げる必要があった。
そしてその手段として僕が選んだのは――。
「ダンジョン配信、しかないな」
ダンジョン配信。
それこそまさに今の現代日本を象徴するものとも言える流行り物。
現代日本において、ダンジョン配信者は芸能人と同じで、今や並の配信者よりも有名な配信者も多い。
だから僕としては認知度を上げるには、ダンジョン配信者になるのが一番だと思ったのだ。
「さて、目標は決まった。問題はどうやってダンジョン配信者としてデビューするかだけど――」
実はこれも考えておいた手段がある。
バン!!
うん。ちょうどその手段が到着したな。
予想はしていたけれど、やっぱりというか。
思った通りいとこのお姉ちゃんである清水鈴が僕の部屋の前に立っていた。
たまにこうやって何の予告もなく押しかけてくるんだよね。鈴ねー。
すぐ隣の家に住んでいるし、両親が合鍵も渡していて出入り自由なのは分かるけれど、それでもちょっとは遠慮してほしいと思うよ?
いくらいとこだからと言っても、年頃の男の子の部屋にこうやって押しかけてくるのはさ――。
そんなことを考えていると、鈴ねーが突然僕の肩を掴んできた。
「皓くん!! なんで私を誘ってくれなかったの!?」
「……へ?」
「ダンジョン配信デビューだよ! する時はお姉ちゃんと一番最初にするって約束したでしょう!?」
「えっ。そんな約束したことないじゃん」
そんな約束をした覚えはないけど。マジで。
というか。
「そもそも、あれは友達のカメラに偶然映っただけだし。別にダンジョン配信がしたくてやったんじゃないよ」
これからは僕から積極的にやるつもりだけどね。それはたった今決めたことだし。
頭の中でそんなことを考えていると、鈴ねーが僕の肩を揺さぶりながらこう叫んだ。
「そんなことはどうでもいいんだよ! 皓くんとは私が1番にやりたかったのに! ひどいよ! 皓くん!」
「は、はあ」
いや。それってそんなに大事なものだったの? 一体何にそんなにこだわっているんだよ。鈴ねーの言うことはたまに理解できないんだよね。
というか、
「鈴ねー。それより揺さぶるのやめてよおお――」
今日これ2回目だからああ。
それとさすがにハンターである鈴ねーに揺さぶられると、みーちゃんの時とは比較にならないほど目が回るからああ。
華奢な僕の肩を掴んでいる鈴ねーの手をポンポンと叩きながら言うと、ようやく自分が何をしているのかに気づいたのか、鈴ねーは僕の体を揺さぶるのをやめて、僕の肩から手を離した。
「ご、ごめん! 皓くん!」
「だ、大丈夫だよ。鈴ねー。そんなに真剣に謝らなくても。予想外のことだったとはいえ、鈴ねーとの約束を破った僕も悪かったし」
その約束を本当にしたのかは未だに怪しいけれど。
前から一緒にやろうというのを断ってきたのは事実だから、とりあえず謝っておこう。
今はそんなことはどうでもいいし。
いとこだからってこうやって親しく接してくる鈴ねーだけど、実はダンジョン配信者としてはわりとかなり有望な部類に入る人なのだ。
ダンジョン配信について詳しいたっくんの話によると、可愛い顔とその真逆の豪快な戦闘スタイルで、男女問わず人気があるらしい。
どこだったかは覚えてないけれど前に鈴ねーから聞いた話から考えると、かなり有名な企業に所属しているみたいだったし。
とにかく、そういうわけで鈴ねーの配信に出ることができれば認知度は間違いなく上がるはずだ。
だから今僕が一番最初に狙うべきものは、鈴ねーのダンジョン配信に一緒に出ること!
ちょうど鈴ねーが口実も作ってくれたし、好都合だ。
僕は仕方ないというように深くため息を吐きながら、鈴ねーに言った。
「穴埋めとして、鈴ねーの言う通り、次は鈴ねーのダンジョン配信に出てあげるよ」
「ええー、そんなこと言わないで一緒に……えっ! 本当!? 本当にお姉ちゃんと一緒に配信に出てくれるの!? 私は当然断られると思ってたのに! 意外! もしかしてあの配信の後に何か心変わりでもあったの!?」
チッ。これだから勘の鋭い子は。
そもそも鈴ねーの誘いを断っていたのは、普通の男子小学生が配信に出たところで誰も見ないだろうと思っていたからだ。
やって特に得を見ることもできないなら、他のことをした方が僕としてはお得だったし。
しかし今はあの時とは違う。
なんとケモミミというウケの良い個性が僕にあると気づいたからね!
ここまでお膳立てされたものを食べないなんて、そんなのバカだろ!
だけどそれを鈴ねーに言うわけにはいかない。
僕は転生してから今まで、家族の前では無邪気な子供の振りをしてきた。
なのにここでチヤホヤされたいからダンジョン配信者を目指すと言ってみろ。
今まで積み上げてきた純真無垢なイメージが台無しになってしまうに決まっている。
何より鈴ねーは嘘が下手くそなタイプだし。
だから僕は全力でシラを切ってもらう!
「あ、いや。その、どうせ顔もクラスメイトの配信に出てしまったし、ここまで来て鈴ねーの頼みを断るのも悪いなー、と思っただけだよ。コホン! 嫌なら取り消そうか?」
「あ、いや! 全然嫌じゃない! 嬉しい! すごく嬉しい!! やったー! 皓くんとダンジョン配信できる! 皓くん大好き!!」
嫌ならやめる? という僕の態度に危機感を感じたのか、鈴ねーが首をブンブンと振った後、僕に強く抱きついてきた。
ギュウウウウーー!!
あれ? これ、抱きついたと言うにはなんか強くない? めちゃくちゃホールドされてない? 掴んだ以上絶対に離さないという意志を感じるんですけど?
ちょっと痛いですよ。鈴ねー。




