第1話 プロローグ
平安時代。
数多くの人間、そして魑魅魍魎さえも恐れさせた存在がいた。
その存在と目を合わせた者は心を惑わされ、その手に触れた者はすべて魂を奪われた。
その結果、多くの存在はその者の影を目にするだけで尻尾を巻いて逃げ、戸を固く閉ざし、その者が消えるまで物陰に隠れるようになった。
まさしく恐怖の代名詞。
その存在の名は——九尾の狐。
しかし、九尾の狐がいくら凶暴で強くとも、それが永遠であるはずもなく。
数多くの悪業の果て、九尾の狐は今まさに死にかけていた。
「……ごほッ」
全身に突き刺さった数十本の鋭い刃。
それに貫かれた妖怪・九尾の狐は、そのひどい有様でもなお、まだ生きていた。
なぜなら、妖怪が生きるのに最も重要なものである核が、まだ破壊されてなかったからだ。
しかしここまで来れば、知りたくなくともわかる。
自分の命をつなぎとめていた核も、もはや限界だということを。
……この身はもうじき死ぬ。
これがこの身の限界だ。
そこまで考えたとき、遠くなっていく意識の中で、九尾の狐は思った。
悔しい。
死にたくない。
こんな惨めな形では——死んでも死にきれない。
だからこそ、九尾の狐は考えた。
賭けをしよう。
一か八かの賭けを。
代償はこの命。
成功すれば新たな生を得て、失敗すればこの魂が消滅する。
一世一代の賭けを。
これが成功すれば……。
私を騙し、こんな状況に追い落とした奴らに、この命をもって復讐してやる……!!
そうして、かつて日本を恐怖に陥れた最強最悪の妖怪・九尾の狐は、自らの全てを賭けた博打をした。そしてその賭けは見事に成功し、その結果、九尾の狐は人間『三日月 皓』として新たな生を得た。
こうして新たな命を得たそんな僕が今何をしているかというと——。
「みなさんこんにちは!皆さんのカワイイ弟、皓です!今日もダンジョン頑張って潜ってみようと思います!よろしくお願いします!コンコン☆」
ふわふわの尻尾を振りながら、かわいくダンジョン配信活動をしていた。
よーし!今日もカワイさを武器に、ダンジョン配信という戦場を勝ってみせるぞ!!




