64式小銃改2
以前も紹介したように64式小銃には、後発の89式と弾薬を共通化した64式小銃改が存在する。これに対して口径はそのままの、貫徹力を向上した64式小銃改2が、別に開発されていたのである。
この銃は、比較的小さなただし多数の怪物が来襲して来た時、その表皮を貫通してダメージを与えうる小火器として、従来の64式小銃に貫徹力の高いタングステン弾芯の徹甲弾を使えるようにマイナーチェンジしたものである。
かって九州は阿蘇の炭鉱にて、古生代のトンボの幼虫が再度孵化して炭鉱の住宅を襲ったさいに7.62ミリ弾を多数撃ち込んでようやく抑え込んだ事例があり、その時の戦訓から、同様な事例が北海道の炭鉱地区でも起こるかもしれないため、当時最新の自動小銃だった64式の貫徹力増大が構想されたのである。
阿蘇で回収された巨大トンボのヤゴを覆う表皮は実弾射撃による試験で従来の7.62ミリ弾の普通弾はもちろん、角度によれば徹甲弾すら弾くケースがみられたのである。これに危機感を感じた陸幕は、従来のものより強力な徹甲弾を求めたのであった。
これについての解答は装弾筒つきの徹甲弾、APDSの小銃版であった。タングステンの弾芯は発射された後に装弾筒が離脱することで加速され、至近距離ではキャリバー50に匹敵する位の貫徹力を発揮したのである。
これをみた陸幕は北部方面隊指揮下の普通科連隊あて一定の数量を配置したのである。
幸い、地質学的条件が九州と北海道では異なったせいか、巨大トンボは現れず、装弾筒つき徹甲弾は弾薬庫で昼寝となった。
ところがどっこい、20年後、流星雨が北海道千歳付近で観測された時、燃え尽きずに地上に落下した隕石らしきものから、宇宙生物が現れたのである。
それは札幌の地下鉄を占拠して、乗客、乗員を襲いかつ、救援に当たる機動隊等にも攻撃し多大な損害を与えたことから、陸上自衛隊に災害派遣要請あり、派遣された普通科中隊が倉庫で眠ったままのこの弾薬を携行した。
これは単になんか怪しい怪物らしきもの?がいるとの情報から、なんとはなしに携行したのである。
これが後々「天才的前勤続行の見本」と言われたのである。
地下鉄に現れた怪物はシリコンを食物として吸収する生物で通常の64式小銃のM80普通弾では、かすり傷を負わすのが精一杯だったのである。一方で、なんとはなしに持ってきた徹甲弾は彼らの外皮をことごとく撃ち抜き、生存者等の救護に必要な時間を稼ぐのに成功したのである。
ただこの時は、まだ通常の64式小銃で射撃したため、その性能を十分生かしたとは言えなかった。(装弾筒が分離するときのばらつき、制退器との干渉など)
制退器周りの不具合の改修などを行った64式小銃については、89式小銃と弾薬を共通化した「64式改」と区別するため、「64式改2」と呼称され、現場では単に「改2」と呼ばれることが多かった。
この「改2」は10年後、予想もしなかった東京渋谷に、巨大トンボの群れが出現した時、また陽の目を見ることになったのである。
時と場所は変われど、30年近い年月を越えて役立ったのには、先人の洞察力のすごさを改めて感じた次第である
さあどうなるやら




