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第5話 「事件、巻き込まれました。」

街門抜けたら2分で事件。襲い来る不死の魔物にシンジ達はどう立ち向かうのでしょうか。

到着したシュバリクの街の中は騒然としていた。

シンジ達はすぐに冒険者の宿”赤ひげ亭”に宿をとり、宿の主人に状況を聞く。


「いらっしゃい。ああ、この騒ぎかい? 厄介な魔物が発生しちゃってね・・・」


なんでも、”不浄なる(ミイラ)”が急に街中に現れたのだという。

当然、1匹程度でこの騒ぎになるはずもなく、町の中心部にある教会が十数匹のミイラによって襲撃をうけたらしい。

よりにもよって教会が襲われ、しかも現れたのは不浄の魔物といわれるミイラ。

教会にはその場で撃退できる実力のものがおらず、門扉を閉ざし防御を固めた結果、夜通し門扉を攻撃し続けたミイラ達は夜明けとともにその姿を消した。


「ほとんど怪談話だな・・・こんなところでバイオハザードとか幽霊の話を聞くなんて」


「シンジ。ミイラはゾンビと並んで不死系の召喚魔物よ。趣味の悪い召喚術士か趣味の悪い魔術師が使役していることが殆ど。召喚されている時間は召喚者の魔力に応じて変わるらしいから、一晩でいなくなった、ということは相手の魔力量はたいしたことないかもしれないわ。あくまで、あたしとシンジに比べて、ということだけど」


「ゲームの中だから、ゾンビとかミイラって指定条件で時間湧きだと思ってたよ・・・まぁ、ホラー映画みたいに死体が起き上がるって奴じゃなくて良かったけど。冒涜的な死体とかにしてしまいそうで」


シンジとミカエラがこそこそ内緒話をしていると、ルミがこちらを向いた。


「シンジ様。そちらの方がお話を聞いてほしそうこちらを見ていますが」


シンジはエモーションコマンドを出し、頭上にエモーションが浮かぶ。

「→YES / NO」

ちなみに、これはスキルの一部と認識されているらしい。


「なにやってるのよ、シンジ・・・」


「冗談はさておき、何か御用ですか?」


先ほどからシンジ達が座るテーブルの横で話しかけようとしていたのは神官服を着た少し痩せぎすな男だった。


「えー、内輪でお話されているところ不躾で申し訳ありません。既にお聞きのようですが、ミイラが沢山発生しておりまして。冒険者の方々に討伐をお願いしようとお声を掛けさせて頂いているところです。」


「ギルドを通すわけじゃないんだ?」


「ギルドには皆さん冒険者に直接お声を掛けることを許可していただいております。張り紙を張る手続きの時間がもったいないくらいの緊急事態ですので、このように特別な計らいを頂いています」


「ほかにはもう声をかけた?」


「はい。不幸なことに現在この街に逗留いただいている冒険者の方は皆様含めて6名しかおいでにならないようです。ほかの2名には既にご協力いただけるお約束を頂いております」


「報酬はいくらくらいなんや? 倒した数が基本? それとも参加すれば報酬がでるんか?」


「ご参加いただければ報酬をお出しいたします。ただ、報酬の額自体は神殿が困窮していることもありあまり多く出せないのです。お一人銅貨20枚とさせて頂いております」


「2千シリングか。確かにやっすいな。ま、しかしこーいうんはほかのご利益をお願いするようなもんやし、どや? シンジはん。一口乗ったらええと思うで?」


祝福(ブレス)につきましては1回無料で実施させていただきます。どうかお助けいただけませんか?」


話の流れから、神官にもこのパーティのリーダーがシンジと分かったらしい。折り目正しくお願いをしてくる。非常に好感が持てた。神官とかなんだか偉そうにしているだけ、という先入観があったため、余計にいい人に見えてしまう。貧乏なのもちょっと気になっているが、騒動が治まってから聞いてみても良いだろう。


「わかりました。喜んで手伝わせていただきますよ。報酬は成功報酬で結構です。そのかわり、神殿に保管されている書物とかを読ませていただく許可を頂きたい。僕の祝福無料権は放棄してもかまいませんので。」


神殿にはそれなりの書物が保管されているはず、と勝手に判断して閲覧許可を求めるシンジ。いまはとにかく情報、伝承の情報がほしい。


「お安い御用です。では既にほかの皆様は神殿にお集まりですので、皆様もどうぞお越しください。討伐のためのご相談をしたいとおもいます。あ、申し遅れました、私シュバリク神殿の神官長のムスムと申します。宜しくお願いいたします」


宿にすぐ使わない荷物を降ろし、戦闘装備で神殿に向かう。


「では今回依頼に応じていただきました皆様です。」


神殿では2人の冒険者が同じように武器を携え待機していた。猫獣人で軽戦士のアーシェラ、元貴族で修行中という重戦士のブランド。シンジ達は自己紹介を済ませ、討伐配置について話し始める。


ちなみに【サーチ】で調べたステータスはこんな感じ。


・アーシェラ 猫獣人・軽戦士

 LV:145

 頭 :ターバン

 右手:シミター

 左手:バックラー

 胴 :チェインメイル

 足 :ブーツ

 アクセサリ①:冒険者カード(ネックレス)

 アクセサリ②:なし


・ブランド 重戦士

 LV:170

 頭 :スーツアーマー(頭部)

 右手:ブロードソード

 左手:ヒーターシールド

 胴 :スーツアーマー(胴体)

 足 :スーツアーマー(脚部)

 アクセサリ①:冒険者カード(ネックレス)

 アクセサリ②:なし


「ブランドさんとアーシェラには前衛役をお願いしようか。重戦士はブランドさんしかいないので、トップで壁役になってもらいましょう。軽戦士(ルチア)と獣人軽戦士2人(ルミ&アーシェラ)は遊撃。エルフ二人(シンジ&ミカエラ)は魔法が使えるのでブランドさんに守ってもらいながら補助魔法と攻撃魔法を織り交ぜてもらうということで」


さらっと指示を出すミカエラ。このあたりは手馴れているという雰囲気だ。


(それがし)はそれで構わない。」


「アーシェラ様は右翼で遊撃を。わたしとルチア様は左翼で遊撃をいたします。」


「わかったニャ。宜しくニャ!」


・・・

・・・・・・


作戦会議後に、現場で陣形を組んだシンジたちの前にぞろぞろと現れた召喚されたミイラが立ちはだかる。


ミイラは乾燥地域でよく発生しているゾンビの一種だ。強さとしてはそこそこであり、100レベルから120レベル程度のレベル帯である。もっと高レベルのミイラはマミーと呼ばれ、様々な特殊能力もあるが、ミイラには特別なスキルは無い。

ちなみに、もっとレベルが低い不死系の魔物はスケルトンだが、これは10レベル前後であり、一般人でも油断しなければなんとかなる強さである。


ミイラの数はそこそこ多かったが、こちら側のレベルが高いため順調にミイラは撃破されていく。


「戦いは順調だね。支援魔法だけ掛けて、こちらは親玉探しをしよう」


各隊に支援魔法としてプロテクション5、エンチャント5を掛ける。それぞれ、プロテクション5は掛けられた者の防御力を5割増しに、エンチャント5は攻撃力を5割増しにする魔法だ。ヘイストは使いどころの難しい加速魔法なので今回はやめにしておく。


「【サーチ】・・・シンジ、あの街角にローブの男が隠れているのが分かるかしら。あれが今回の元凶みたいよ。種族がリッチって、出てる。リッチといえばネクロマンサーと相場が決まっているものね」


「一気に殲滅するほうが楽か・・・よし、ブランドさん、斬り込み隊長をお願いします! 到着目標はあの尖がり屋根の家の方向です。ミイラの群れを突破できたらあとはこちらで対処します!」


「承知した。 では参る!【震脚】!【突撃】!」


足場を固めるスキル【震脚】と怒涛の突進力を生む【突撃】を重ねがけし、ブランドが斬り込んで行く。倒すことよりも道を作ることが目的なので、ミイラを吹き飛ばすことに重点を置いた攻撃だ。

程なく目的付近まで突破できた。


「食らえ! 【ファイアボルト1】!」


ファイアボルト1は単体ターゲット魔法だ。威力も最小限におさえた1にして、捕獲することを前提にしている。

魔法は目標に命中し、燃え上がる・・・ことはなかった。


「【ファイアボルト1】が避けられた!? いや、【ミサイルプロテクション】か!」


【ミサイルプロテクション】は飛び道具からの防御のためのスキルだ。重ねがけはできないが、1回の行使で5発までの飛び道具を逸らせる効果がある。おそらく弓矢除けとして展開されたものだろうが、ボルト系のスキルも逸らせる効果があったりする。


「魔術士かっ! 分が悪いな、いったん退散だ!!」


リッチはそう叫ぶと手に握りこんだ水晶を崩壊させた。途端、身体が光に包まれ消失する。転移石と呼ばれるアイテムだ。あらかじめ登録した場所に転移ができる。


「転移石で逃げられたか・・・」


首謀者と思われる者が転移すると、ミイラ達の動きも停止した。【ネクロマンシー】の効果範囲外に転移したためらしい。

きちんとすべて倒した上で、なにか手がかりがないか、付近を捜索してみる。


「【サーチ】・・・残された遺留品はミイラ達とこの財布らしき袋だけみたいだね」


落ちていたのは使い込んだ風情のある小袋だった。

刺繍で小さく十字架の印とバラム、と縫い付けてある。


「多分名前、だと思うけど・・・ムスムさんに聞いてみよう。十字架もあるし、神殿の関係者かもしれない」


シンジ達は【ミサイルプロテクション】対策を考えながら、遺留品を手に神殿へ向かった。



・・・

・・・・・・



「いかがでしたか、ブランドさん、それにシンジさん?」


「なかなか手ごわい相手だな。シンジ殿の魔法を弾いた上に転移で逃げ出している。相手は魔術師と見て間違いないだろう。」


「それと、捜索したらこのような遺留品がありました。ムスムさん、こちらに見覚えはありませんか?」


シンジからムスムへ小袋が手渡される。十字架の刺繍と「バラム」の刺繍を見て目を曇らせるムスム。


「これは・・・禁を犯したとして神殿から追放処分にされたバラムのものかもしれません。神殿に厳重に保管されている禁呪文を盗もうとしたために追放され、死刑にも等しい「ダンジョン送り」の処罰を受け、おそらく死んだと思われていたのですが」


「なんとか生き抜いて、ダンジョンから脱出した、というところか。禁呪文というのは【ネクロマンシー】のことか?」


「そうですね。何を盗もうとしたのかまでは分かりませんが、その類の呪文書が保管されているエリアから盗みを働こうとしたことは分かっています。しかし、盗み出すことはできなかったと報告されていたはずです。しかも事件は50年前のことです。あまり生きながらえているとは思いにくい年月です」


「まぁ、行き先が分からない以上、今はいったん解散して今後の対策を考えましょう。行商の商品も捌かないといけないし」


「・・・ブランドさん達、それからシンジさん達、できれば神殿で寝泊りしていただけませんか。まだ脅威が去ったわけではありませんし、宿代くらいは肩代わりさせて頂ければと思っていますので・・・」


深刻な雰囲気でムスムさんが言う。シンジとしてもこのまま別宿で寝泊りするのは危険と考えていたので、神殿を警戒できる場所での野宿をしなくて良くなる分、楽になったと思っている。


「いいですよ、ムスムさん。ブランドさん達はどうしますか?」


(それがし)はちょっと抜けさせてもらう。ミイラどもならともかく、得体の知れない魔術師相手だとこの報酬は割りに合わないからな。正式にギルドを通していないことだし、違約金も発生しないだろう」


「・・・そうですか。違約金は確かに発生しません。まずはミイラの撃退お疲れ様でした。銅貨20枚だけ先払いさせていただきます。さてシンジさんのほうは引き続きお願いいたします。報酬も今渡させていただきます。頼りになるのはもうあなた方だけなのですが、これ以上の追加報酬は財政的に厳しい状況なので・・・ここから先はなんとかその20枚の範囲でお願いいたします・・・」


泣きそうな顔で懇願してくるムスムさん。


「大丈夫よ。あたしたちはお金だけで動いてるわけじゃないし。 と、いうことでいいのよね? シンジ?」


ミカエラは良くわかっていてくれる。そう思うシンジだ。お金は既にうなっている。大事なのはこの世界で良い人生かどうか。そっちのほうに興味がある。困っている人が居たら助けるし、悪い奴は懲らしめる。正義の味方みたいで良いじゃないか。


「うん、大丈夫ですよムスムさん。こういうのはお金が大事じゃないんだ! 人なんだ! ということにしておきましょう。実際金銭では困っていませんので」


シンジの言葉を聴くとムスムは安心できたようで「部屋の準備をするため」、といったん執務室の中に引き上げていった。


「シンジはやさしいんだニャ?」


振り返るとブランドと一緒に帰っていったとばかり思っていたアーシェラが居た。


「あれ。ブランドさんと一緒に帰ったんじゃないの?」


「どうしようもない理由でもないのに一度始めた勝負から逃げるのはおいらの主義に反するニャ。おいらだけ残って協力することにしたニャ。」


「それじゃあ、ウチはちょこっと抜けて行商品の売り子をしてくるで。ウチのポジションはルミはんだけで充分やろ? 行商の在庫は腐ったりはせえへんけど、相場の調査とかは早めにやっておきたいし。そもそもウチはあまり戦闘向きじゃないんや」


「わたしでしたら問題ありません。ミイラごときに遅れをとることはありませんので」


「了解。じゃあルチアはそっちを頼む。ついでにダンジョン発見の通知もギルドに届けておいて貰うと助かる。何か、お金になるらしいし。」


「承知やで。ほないってくる」


大八車と馬車の片方を連れてギルドの方面と思しきほうへ出発していくルチア。行商はプロに任せれば良いだろう。


「皆さん、部屋の用意ができました。こちらへお越しください。動物は裏の動物小屋に・・・と数が少なくなりました?」


「ああ、一部を連れて行商の荷物を降ろしに行ったんです。そのうち戻ってきますから。」


「承知しました。戻られたらこちらへお繋ぎください。飼葉もありますので安心ですよ」


動物小屋に繋がれていた先客は仁王立ちトカゲだった。力が強力でお値段も若干高め設定の彼は力仕事にうってつけの存在。低い体高もあり、鉱山の鉱石運び出しの作業に従事していたりもする。ただ、時折衝動的に体長2mのその巨体で仁王立ちをしたがるので、鉱山のあちこちに空気穴兼仁王立ちポイントがあるとかないとか。ちなみにこの話は全部ミカエラの受け売りである。


「トカゲもお役立ち動物なんだね・・・ほんと、みんないろんな動物とか性癖とか良く考えるよ・・・」


考えたプレイヤーもどれだけトカゲが好きだったんだろうか。通常動物より強力ということは課金ボーナスポイントをつぎ込んだ、ということでもある。恐竜大好きな人でも居たんだろうか。



・・・

・・・・・・



しばらく神殿で作業しているとルチアも作業を終えて一旦引き上げてきた。行商の手続きとダンジョン発見の申請と報酬受け取りをしてきたらしい。


「行商場所は西の市場に確保してもろうたわ。衣類が集まっとる場所と聞いたからまぁ、毛皮・毛織物は売りさばきは楽やろうな。それからダンジョン発見申請やけど、食材系ダンジョンでBOSS以外はさほど強くないこともあってだいぶ報酬が出たわ。大銀貨1枚やて。しばらく豪遊できる金額やな」


大銀貨を受け取るシンジ。銀貨250枚。2千5百万シリング。かなり大金である。


「ルチア、悪いけどこれ、明日銀貨にくずしてきてもらえないかな。分けるに分けられないから・・・取り分は発見者のルミが100枚、他の3人は50枚ということにしたいんだけど、良いかな?」


反対意見はでない。ひとり、ルミだけが戸惑っていたが。


「え、えと、ルミは、奴隷なので、お金なんか貰っても、良いのでしょうか?」


「ご主人様があげたんだから、貰っておきなさいって。何処に出しても恥ずかしくない上級奴隷として着飾っても良いのよ?」


からかい半分にミカエラ。


「上級奴隷とか、別な意味に聞こえるよ・・・。ルミ、気にしないでとっておいてほしい。いざとなれば銀貨はギルドに預けられるだろう? いつかお金を貯め切ってルミ自身が奴隷から解放されるための手伝いと、正当な報酬として考えてくれれば良いんだから」


「ありがとうございます。シンジ様の奴隷を辞めるつもりは無いですが、シンジ様のお気持ちということであればありがたく頂戴いたします」


アーシェラがとなりで目を丸くしていた。


「ルミは奴隷だったのニャ? チェインメイルとか良い装備をしてるから普通のメンバーかと思ったのニャ」


「わたしのご主人様は優しい方なので、非常に良くして頂いています」


「よし、食事をして良く休んだら、明日こそは決着をつけよう!」


そして一行は昼まで寝ていたのだった。



・・・

・・・・・・



「・・・と、いうわけで我々は今、ウワサの現場に潜んでいます。今夜はミイラ達はやってくるのでしょうか」


「どこに向かって話しかけてるのよ、シンジ・・・」


昼に起き出したシンジ達はダンジョン発見褒章を山分けし、張り込みの準備をして昨日の現場に張り込んでいた。

転移石で何処に飛んで行ったかは分からないが、おそらく同じ方向からやってくるだろうと予測したためだった。

今回は直接攻撃はしない方針にしている。転移石を使われるのも厄介なので拘束スキル【バインド】を使うつもりである。

このスキルであれば【ミサイルプロテクション】の影響を受けず、かつ転移石の使用を阻止できると踏んだためだ。

スキル使用者はシンジ。実は取得条件がいろいろ難しいスキルであるため、ミカエラも習得していなかったのだ。


「いや、雰囲気を出そうと・・・まぁ、気にしないで」


「そろそろ無駄口は抑えないとね・・・と、こっちに来る人影が4、5体・・・ミイラみたいね。じゃあ、作戦開始。」


昨日と同じく、ぞろぞろと現れるミイラたち。その姿が確認できたところで、わざと目立つようにミカエラとアーシェラ、ルミが防御の構えでじりじりと後退。

神殿の境界柵まで防衛ラインを下げ、敵の突出を誘う。この作戦にミイラは元から状況判断が出来る頭脳が無いので確実に実行できた。

ミイラの制御をする【ネクロマンシー】の効果範囲はさほど広くなく、かつ視界が通っていることが前提になるので、シンジだけ単身隠密行動で背後を取り、親玉に【バインド】を掛けるという作戦だ。お互いに物量が少なく、フィールドもそれなりに広いのでできる作戦といえる。


「えーと。【コンシール】【インビジブル】【レビテート】。これでとりあえず万全かな? 状況、開始!」


隠密系のスキルを重ねがけし、足音防止に空中に浮いた形でシンジが行動を開始する。まずは索敵からだ。


「ダンボールがあれば万全なんだけどなぁ。そんでもってサーチ&デストロイー・・・ん? あそこで動いてるのがいるな・・・ああ、いたいた。親玉さんだね!」


脳内でぶつぶつやりながら索敵していたシンジの視界に昨日姿を見たローブ姿、フードで顔を隠した親玉らしき人物がミイラの動きを追うように歩いているところが見える。一応姿を隠しながら歩いているようだが、逆から来たシンジには丸見えだ。


「さて・・・接触しないと発動しないのが玉に瑕だが・・・【バインド】」


そっと背後から近づき背中にタッチ。たちまち魔力の縄に縛り上げられるターゲット。魔力が見える者には魔力でできた荒縄やむしろで簀巻き状態になっていることが分かるだろう。


「親玉、とったどー!!!」


シンジが声を張り上げる。それを合図に一気にミイラを蹴散らすメンバー達。蹴散らす中で目を引くのはアーシェラの撃墜率の高さである。パッシブスキル【ダブルアタック】持ちの格闘士をメインジョブにしているようで、すごい速さで殲滅していく。ミカエラは後衛だったので支援けに徹し、ルミはルミでけっこうな戦績を上げていた。6匹居たミイラをアーシェラが4匹、ルミが2匹滅ぼし、ほぼ瞬殺に近い形でカタがついていた。


「さて。主犯格の人の処遇が先か」


【バインド】のスキル効果はそんな長時間持続することはできない。そのため、シンジは親玉のアイテムを全部取り上げ、持ってきた荒縄を使ってぐるぐる縛りに縛っていった。これで【バインド】が切れても大丈夫だろう。アイテムを取り上げているときにフードがとれ、素顔が見えた。ほぼ骸骨、そんな風体だ。やっぱりモンスターだったのだろうか。ミイラが片付いてパーティメンバーが集まってくると、丁度そのタイミングで【バインド】の効果が切れた。【バインド】には言葉も奪う効果があるため、これで事情が聞けるようになる。


「我は神殿に復讐するために転生した。禁呪として封印された”それ”を使えば街はもっと発展するだろうに、神殿はそれを良しとせず、あまつさえ我を追放までしたのだ。街のためを思えばこそ。なぜそれが分からないのか。奴隷にだけ頼る労働力ではこのあたりの冬の厳しさ、モンスターの襲撃への対処としては圧倒的に足りないのだ!」


労働力の確保のために禁呪を使ってミイラを労働力化させる。たしかに効率を考えれば妥当な発展策ではある。だが、邪法で発展した街に誰が住むだろうか。取引をしてくれる人が居るだろうか。おそらくそれは邪な人たちが集まる邪な街が発展していくに違いない。神殿としては二重に認められるわけが無いのだろう。


「安易に力に頼った者の末路は哀れね。あなたももう人の道から外れてしまった存在。おとなしく神殿で裁かれなさい」


ミカエラがそう言い渡す。シンジ達が手を下すまでもない。神殿で処理をしてもらい、処刑なりが待っていることだろう。

最後に親玉を【サーチ】してみた。


名前:バラム リッチ・転生体

LV:190

特徴:【不死使役】【ミサイルプロテクション】【リジェネレート1】【不死】


リッチ発生イベント・・・ボスが弱すぎて微妙だけど、やっぱりゲームと同じイベントがあるみたいだ。と、いうことはスキル取得イベントなんかもあるんだろうか。シンジ自身はほぼ全部のスキルを覚えている。女性専用スキルはさすがに覚えていないが、女アカウントで取得方法は確認済みだったりする。


「ルミとかルチアあたりにスキルを習得させれば強化できるな・・・ためしてみるか・・・」


育成計画なんかも考えながら神殿へ向かう。一応の解決を見たからだ。


バラムは神殿から警備隊へ引き渡され、余罪確認の後、大神殿で浄化されることになった。

ムスムのいる神殿はまた立場が弱くなりそうだったが、これを機に禁呪警備のための人員補強が行われるらしい。

メンバーはそれぞれ報酬を受け取ると”赤ひげ亭”へ引き上げてきた。


翌朝。市場に行こうと宿の玄関を開けた。吐く息がかなり白い。冬が本格的に迫ってきた証拠であった。

高地の砂漠は冬になるとさらに過酷さが増す。雪融けまでオアシスの水が干上がったりするためだ。

幸い、冬向けの行商品も買い込んできている。しばらくはここ、シュバリクで逗留することになるだろう。



冬になったのでしばらく逗留することになります。

次は街中のお話の予定です。

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