第16話 「デートの続きとルミナの意図」
モーチラスさんの質問に対して合格したことで、外装を作ってもらえるようになったあと、俺は蒸気装甲筐体についての簡単な概要を聞いていた。
「蒸気装甲筐体っていうのは鉱魔獣に対抗するために、この世界にいる全ての科学者が総力を挙げて作り上げた防具の総称のことを指すんだ」
「総称ですか......ということはそこから枝分かれしていくってことですか?」
「そうだ!外装は蒸気重装甲、蒸気軽装甲、多機能蒸気装甲に分けられる。どれを装備するかは討伐者の神導武器によって選ぶって感じになるな!」
多分だけどモーチラスさんたち外装職人は相手に色々な情報を聞いてその人にあった蒸気装甲筐体を作成するって感じなんだろうな。
流石、職人って感じがしてかっこいい。
「マヌスの神導武器は何だ?」
「ガントレットっていう拳に装着される武器です!リーチは短剣よりも短いですけど、その代わり格闘の技術がそのまま使えることと破壊力には自信があります」
「ガントレットか。結構珍しい武器を授かったな!俺も知ってはいるが中々に扱いが難しい武器だな。マヌスに合わせて作るとしたらじっくりと時間をかけて話し合いをした方がいいな」
確かに俺に合わせたものを作って貰えるならその方が良いな。まずは討伐者試験に受からなきゃだけど。
「そんなに考えてもらってありがとうございます!これからもお店にお邪魔してもいいですか?」
「おう!修行の息抜きにでも来てくれや!マヌスの修行の進捗度合をみて外装を考えるぜ!」
「ありがとうございます、また来ます!ルミナさんもモーチラスさんに紹介してくれてありがとうございます!」
「ん......い~よ~。でも、モーチラスとのお話に夢中で置いてきぼりにされたから残りの時間は沢山話してね~?」
ルミナさんは少し不服そうな顔をして俺の服を引っ張ってくる。
いじけたルミナさん可愛いな......ってそうじゃない!
「ご、ごめんなさい!そういった気持ちがあったわけじゃなくて......!」
ぐいぐいと急かしてくるルミナさんとそんな姿に慌てる俺を見てモーチラスさんが笑いながら俺たちに声をかける。
「はっはっは!ルミナ心配すんな、今日話すことはこれで終わりだ!後はゆっくり遊んできな!マヌスもまた来いよ!」
「モーチラスさんありがとうございました!」
「ありがとうモーチラス......またマヌスと来る」
その後、俺はルミナさんに背中を押されながらモーチラスさんの店を後にしたのだった。
◇◆◇◆
それから俺たちはルミナさんのおすすめのカフェや服屋、面白い小物が置いてある露店に魔蒸器具販売店など俺が今まで行ったことの無いお店を巡って楽しんだ。
未知の場所に行くことで新しい発見や良い刺激を得ることができたこの時間は宝物のような満足感を得ることができた。
楽しい時間は早く過ぎるというのは本当のようで、気づいたときには空がオレンジに染まり始めていた。
「ん~~!!楽しかったぁ!また行きたいと思えるような素敵な場所ばかりでした!」
「私にとっては慣れ親しんだ場所だったけどマヌス君と一緒に来たからかな~......いつもよりももっと楽しめたね~......」
モーチラスさんの『ヌル=コード』から始まったデートは疲れる暇がないくらい凄く楽しかった。
夕焼けに彩られた空に寂しさを覚えながら今日の出来事を振り返っていると、横に並んでいたルミナさんが少し前に出て足を止める。
「マヌス君まだ時間ある......?」
「特に用事も無いですし、いつもはもう少し遅い時間まで修行してるから全然大丈夫ですよ。どうしました?」
「最後にマヌス君を連れて行きたい場所があるんだ~......ついてきて」
そういうとルミナさんは俺の手を掴んで少しだけ早歩きで少しずつ暗くなってきた街道を進んでいった。
◇◆◇◆
「マヌス君を連れてきたかったのはここ......」
「ここ、ですか。凄い景色ですね......!」
ルミナさんに連れてこられたのは街の中心から少し外れた所にある時計台の頂上だった。
街を一望できる高さから見る街の景色は息を吞むほど綺麗で、魔蒸気から発生するもや越しに広がる街の灯りが星のように煌めき、そこに生きる人々の命の暖かさを伝えてくるようだった。
「ここはね、私が疲れたときとか嫌なことがあったときに良く来る場所なんだ~......この景色を見たら私の悩みなんてちっぽけなものなんだって思えるからね......私にとっての安息地みたいな場所なんだよ......」
「そうなんですね......そんな場所に俺を連れてきて良かったんですか?」
俺の問いに答えるように、ルミナさんはこちらへ身体を向けて俺の手を優しく包み込み目を合わせる。
「マヌス君をここに連れてきたかったのはね......君が追い詰められていると思ったから」
「俺が追い詰められている......?」
「そう、君は私の知る限りの誰よりも努力しているし夢に向かって全力で頑張っている......でもね、たまには息抜きをしてもいいんだよ?焦ることは無いんだってことを伝えたくてね......」
「焦ってるなんてそんなことは......無いとは言えないですね」
今までがむしゃらに頑張って無理をしてでも毎日修行するという気持ちが今回倒れたことで更に悪化したのかもしれない。
気絶したのは固有スキルが原因だとしても、最善の状態であれば倒れるまでいくことは無かったはずだ。それを意識しないように次の日から修行を始めなきゃと焦ったことであんな恥ずかしい姿をルミナさんに見せてしまった。
「君の周りはそんなに頼りないかい......?そんなことはないだろう。ご両親はとても良い人だし、氷龍の煌めきの皆や私だっている。頼るってことは修行を教えてもらうことだけじゃ無いんだ......壊れる前に頼ってくれなきゃ......寂しいよ」
その言葉の後にルミナさんは昨日の夜と同じように俺を抱きしめた。
「頼って、いいんですかね?迷惑じゃない......ですか?」
「当たり前じゃないか~......疲れたときは一緒に休もう。嬉しいことは一緒に喜ぼう。辛いときは一緒に泣こうじゃないか......結構長生きしてるからね。それくらいの度量はあるつもりだよ」
安心させるような暖かいルミナさんの抱擁は俺の固まっていた心を溶かすように染み込んでくる。
優しい言葉に耐えられなかった俺の視界は滲んでくる。
「......っ、ありがとう、ございます。俺のために......!!」
声も出せずに泣きじゃくる俺の頭をゆっくりと撫でるルミナさんの手はとても優しく、暖かかった。
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