第33話
久しぶりにこの家の風呂を炊くハルキ。家の側の水路から水を汲み、スライム達に手伝ってもらって薪も一緒に運ぶ。
この世界は基本的に五右衛門風呂だがハルキは大好きで、子供の頃の祖父母の家を思い出していつも入っていた。
「うーん、やっぱり気持ち良いなぁ〜。引っ越した家でまだお風呂入ってないけど、ミーユだけだと準備がやっぱり大変かな。バニラどう思う?」
「ワン」
湯船につかるバニラは自分で考えろと返事をした。何故か順番にライムに連れられてスライム達も入りに来ている。洗面器代わりの桶の中をクルクルと回った後湯船に飛び込みプカリと浮く。底に沈んでしばらくじっとしている者もいる。
(タピオカみたいだな)
ハルキがくだらない事を考えている内に順番にスライムは出て行った。湯船から出てバニラを拭いていると狼達が入口に申し訳なさそうに集まり出した。
「良いよ、お前らも順番においで」
ハルキが一頭ずつ洗い、湯船に入れていく。狼達は動物なのでそもそもテイムする事はできない。だがエンペラーウルフのバニラに関しては魔物かどうか調べてもいないし、テイムも試していない。
それでもあれだけ意思の疎通が出来ているので狼ともやっていけるとハルキは思っていた。
(なんか昔を思い出すな〜。ホームセンターでバイトしてた時、人が足らなくてペットコーナーで犬とか猫とか洗ってたな〜。まだ高校生の頃か)
みんなが出て最後にハルキが風呂から上がり身体を休めているとライムが入口の扉に近づき少し開けた。
その隙間から二羽の雲切隼が入ってきた。一羽はハルキのクラウド。もう一羽はドーラの雲切隼である。ドーラの雲切隼はかなり小さなマジックバッグをぶら下げている。
「あれ?結局ドーラさんも出したのか。お疲れ様、よく来たね」
クラウドのマジックバッグを外し中身を出すハルキ。
中にはドーラの雲切隼と同じマジックバッグが一つと手紙が入っていた。
ハルキは手紙を広げた。かなり長い。
『ハルキ、連絡ありがとう。先に謝らせて貰うが受け取った手紙と皮を見てギルドの人間としてその場所の把握をしたかったから私の雲切隼をつけた。事後報告になるが許して欲しい。
とりあえずその皮はほぼワイバーンの物で間違い無いと思う。それを襲った生き物についてはおそらくドラゴンだろうとは思うが、サノ領の辺峡にドラゴンがいるとの情報は今のところ無い。
だが、奴らは数年から数十年で住処を移す者もいるはずだから、いないとも言い切れない。
実際私がアオをテイムした時もおそらくドラゴンに襲われた後だったからだ。
だが基本的にはドラゴンは人を嫌う。人の気配があれば近くにいる事はないだろうから、そこまで心配する必要もないとは思う。
魔物や獣の気配がないのは恐らくそのワイバーンの死体のせいかと思われる。ドラゴンは通りかかっただけかもしれないが、ワイバーンの臭いがその周辺に広がっているのかもしれない。
私がアオを見つけた時も周辺から魔物や獣が姿を消した。だから骨や皮を全てマジックバッグに入れてサノまで持ち帰ってきてくれ。
そして出来ればギルドに卸して欲しい。ハルキにも大金になるし出所のわからないワイバーンの素材が出回るのは避けたいのでな。
後お願いが一つ。雲切隼とまでは言わないので何か鳥の魔物を一羽、父にテイムさせて欲しい。
大丈夫だとは思うが念の為ウワノ村から私へのの連絡手段を確保したいんだ。そのマジックバッグは礼だ。雲切隼につけて飛ばすにはハルキのマジックバッグは大きすぎる。これからはそれを使え』
ハルキが思っていた以上に色々と内容があった。この場所にドーラの雲切隼が来たという事はハルキがいなくてもドーラはこの場所に来れるという事だ。
「まぁ、色々バレてもドーラさんなら悪い様にはしないだろ」
「ワン」
バニラも同意見の様だ。
「それにしても、ワイバーンの匂いか。バニラは気がついていたのか?」
「ワン」
当たり前だと吠える。だがバニラからワイバーンの匂いがするから魔物とかいないよとは伝えられない。
ハルキから聞いたなら肯定や否定も出来るが。
「とにかくドーラさんに返事書こう。言う通りにしますって。後バニラ、明日鳥の魔物を一羽捕まえて欲しいけどいける?」
「ワン」
そのくらい余裕らしい。
『ビヨーン』
ライムが、自分がやるんだよと広がった。
「そうだね、ライムもよろしく頼む」
そして夜は更けていく。ハルキはドーラへの返事を書き、ドーラの雲切隼に預けて飛ばす。
そしてその後に一冊のノートに文字を書き出した。これもこの世界の文字だ。
『地球からこの世界へ転移、転生してきた人へ。西暦二千二十年夏頃、日本人のハルキより』
ハルキが書き出したのは自分がいない時にこの場所に、新たな星の民が現れる可能性を考えて残す、アニャや大野半兵衛に続く新しい手引き書だった。
無論ハルキはまだこの世界に来て一年と少し、まだ良くわからない事の方が多い。だが、次にここに元の世界の人間が現れるのは百年後かもしれないが、明日かもしれない。
これからはここに来る度に新しい情報を書き加えていけば良い。そう判断したハルキはこの時点でのわかる事を書いておく事にしたのだ。
一通り書き終えたハルキはバニラとライムと横になる。明日はスライム達があのワイバーンを見つけた場所を目指すつもりだ。
二日間の移動で思っていたより疲れていたのか、ハルキはすぐに眠りについた。
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