第二話:ダチョウ肉のステーキ8
箸が動く。
小物達もふらふらと肉の焼けている石へと歩み寄った。
「で、では俺から」
「何を言うかここは年長の俺が!」
「ばかもの!お前たちの上役はだれだ?拙者だろうが!」
「先ほど渡辺様も仰りました『ここではみな平等だ』と」
「びょうどう?なんじゃその言葉は?」
「横並びという意味だそうで」
そんな会話をしながら男たちは先を争って肉をクチに放り込む。
「わ、ワタナベ殿、醤油を分けて下され!」
「ほいほい」
ニコニコ笑いながら素浪人は椀の中身をそれぞれの立っている場所に流しこむ。
醤油の焦げる独特の風味ある匂い。
男たちはその中にまみれた大根が焦げるよりも早く肉を転がし、口の中に放り込んで咀嚼した。
「おおう、これがダチョウ様の肉!」
「これがダチョウ様!」
「ああなんと美味い、鶴とは偉い違いだ」
「なに弥五郎、お主鶴を食ったことがあるのか!」
「あ、いえち、違います、噂に聞いた鶴はガリガリで美味ではないと聞いていたので、てっきりダチョウ様も、と……」
「ああ、美味い、うまい」
「よし、お前たち、竹の米もそろそろ食べ頃じゃ」
そういって素浪人は竹筒の米を指先で引き抜き、大きな笹の葉の上にこんと叩き出した。
「おお、米!米と肉!」
男たちは素浪人の差し出す笹の葉に群がり、それを取るとまた石の前に戻ってそれぞれの小刀で肉を削り、転がし、好みで焼けた部位を切り取って喰っていく。
瞬く間に肉は消えたが、別の部位を素浪人は切り取ってどん、と石の上に乗せた。
「今度はもも肉だ、たっぷりあるぞ!何しろ左右だからな!」
男たちは歓声をあげた。